第102話 里帰り(その7)

 50メートルの断崖絶壁を、ご主人様はA子をつり上げながらわずか1時間ほどで踏破した。


「ちょっと帰りは想像したくない……」


 息も絶え絶えなA子が上り詰めた崖の上を見回すと、そこには広い平地に建てられた大きな神社の境内があった。


「ほい、到着」

「ここがあの斑鳩神社の総本山……」


 B子は思わず感嘆した。


「……あの」


 C子がある事に気づく。


「ひとがたくさんいるんですね」

「ああ、ここは毎年初詣に来る人が多いから」

「……参拝客に晴れ着姿の女性がたくさんいるんですけど」


 A子は神社にお参りしている人たちを睨みながら嫌な予感を覚えていた。


「ああ、あの人たちはこの山の裏側にあるケーブルカーで登ってくるからな。こっちの道は近道なんだ」

「オアーッ!」


 A子はついに爆発してしまった。


「ご主人様ぁっ! バスも無いって言ったじゃないデスカァッ!!」

「近道にはな。いや、このシーズンだろ、ケーブルカーも混んでてなかなか上に行けないからこっちのほうが早いんだよ」

「速さより安全選んでくださいよぉっっ!」

「でもスリルがあってなかなか」

「けしきもよかったです」

「だーまーれーっ!」

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