第85話 秋葉原探訪(その22)

 アダルトショップから出てきたご主人様一行。

 何故かご主人様の両手には、パンパンに膨れあがったアダルトショップの紙袋が。


「何もここで衣装買わなくても……」

「こういう店にはなかなか来る機会がないので、つい」

「前から言ってるが、限度ってモノをだなあ……」

「でも結構面白かったじゃない?」

「気楽に言うなB子……」


 ご主人様は溜息をついた。


「とりあえずコタツ手に入ったから、そろそろ帰るか」

「おう、もう帰るのか」

「とりあえず礼は言っておきます」


 ご主人様はたつこをちらっと見て、


「……で、こたつ使う時はなんかおまじないでも」

「たつこに言えばコタツになる。――時にお主、ちょっと耳を貸せ」


 金屋子神がどこか険しい顔で手招きした。


「何?」


 ご主人様は言われるままに耳を寄せた。


「お主んとこの嬢ちゃんだが……気づいているのか?」

「気づく、って?」

「人じゃない」

「B子の事?」

「違う」


 その言葉にご主人様の顔が強ばった。その瞳は、心配そうな顔をする金屋子神の顔を映していた。


「……ほぅ、気づいておったか」

「あんた、何が言いたい?」


 金屋子神はA子を気取られぬ様、ちらっと見る。


「正確には、“あのお嬢ちゃん”が、という訳ではないがな。ただお主にとってちょっと厄介な事態を招くかも知れん」

「……」

「もし面倒な事になったら遠慮無くワシの所に相談に来い。いづなの弟子と言う事はワシの弟子も同然だからな」


 金屋子神は笑った。

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