第86話 壊れてた?

 帰宅したご主人様たち。和気あいあいのA子たちとは対照的に、ご主人様は険しい顔のままだった。


「ご主人様、あのじーさんに何か言われたの?」


 B子だけがその様子に気づいていた。

 ふと、ご主人様はB子に質問しようとした。しかしそれは口にはせず、


「疲れた」

「さよか」


 B子は察した様であった。


「いやマジで疲れたぁ」

「寒かったからねぇ。たっちゃん、コタツになって見せて」

「わかりました」


 ドロン、と言う音とともに、たつこは居間で赤外線式電気こたつになった。


「コタツ布団は?」

「ボクだけです」


 たつこが済まなそうに言う。


「ご主人様、余っていた布団持ってきました」

「仕事早いなA子」


 早速ご主人様が布団を掛ける。


「コンセントも入れました」

「じゃあ、スイッチを……」


 ご主人様が電源コードに付いているスイッチを入れた。


「あれ?」


 コタツでスタンバっていたB子が傾げた。


「あんた何先にコタツに入ってるのよ」

「電気が入ってないです」

「え」


 驚いて布団をめくると確かに点灯していなかった。


「え?直したって金屋子神のじーさん言ってたよね」

「たつこ、どういう事?」

「ボクにもわからないです…」

「赤外線の電球が切れてるのかもなぁ」

「どうする?」


 訊かれてご主人様は唸った。


「どうすると言ってもメーカーに修理は出せないだろ流石に。あとで金屋子神に相談に行くか」

「ごめんなさい……」


 コタツはたつこの姿に戻り、済まなそうに頭を下げた。


「良いって良いって。貰うって言った以上うちの子だからねー」

「いつからアンタの子になったのよ」

「暖房はあるし、それに部屋も広いから一人くらい増えたってなんてことはないさ」

「ありがとうございますごしゅじんさま」


 たつこはやっと笑った。


「しかし寒いな」

「室内暖房が効くまで風呂にでも入ってて下さい」

「お、そうだな。たつこも来いよ」

「はい」

「ご主人様、たっちゃん可愛いからってお風呂でエッチな事しちゃダメデスヨ」

「誰がするか」


 B子にからかわれて、ご主人様は呆れかえった。

 ふと、不意に先ほどのブルマ姿が過ぎる。


「いやいやいや」


 慌てて頭を振った。

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