第1話 ブルジョワ
メイドのA子は、ご主人様がまた朝食を残して行くので、たまり兼ねてとうとう言った。
「ご主人様! 残さず食べないと身体に良く有りませんよ!」
するとご主人様は困惑した顔でA子を見た。
「……やっぱり猿の脳ミソ料理食わなきゃならんのか?」
「無論です!」
「コレばかりは好き嫌い言いたいが」
「何を言うんですか? ブルジョワと言ったら猿の脳みそ料理に決まってるじゃ無いですか! さあ猿を頭の毛を剃って」
A子はテーブルに置いていた安全カミソリを取ってご主人様に突き出した。
ご主人様は横でキィキィ鳴いてる猿に一瞥をくれ、
「……俺、別にブルジョワでは無いんだが」
「いいえ! 今時日本でメイド雇ったり、こんな芝浦の高級マンションのワンフロア借り切ってるような人が、ブルジョワじゃ無くて何だというのですか?」
「いや、このフロア、借りてんじゃ無くて買ったんだけど」
「……」
「骨董の目利きで藁しべ長者のように稼いで……何か信じてないようだな」
「いや、流石にそれは信じろと言われて」
A子は室内をぐるりと見回す。
「一部屋3LDK、それがフロアに四つ。そこに一人暮らしってどんだけブルジョワですか」
「初めは一部屋だったんだよ。でも他に住んでいた人が出て行く時に安値で良いからって俺に売ってきたんで仕方無く」
「出て行く……?」
A子は怪訝そうな面持ちで傾げた。
「……普通そう言うのって不動産屋に任せません?」
「まあ色々あるんだろ。兎に角、俺は普通の料理で良いから、ハムエッグに味噌汁、目刺しにあじの開き大好きだから」
「……善処します」
「で、どうすんだあのお猿」
「あとでスタッフが美味しく頂きまし」
「おいやめろ」
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