20 お腹バーニング

「絹矢先輩って、干支は子年なんですか?」

 櫻は、ふと思った。

「そうだよ。さっと計算したの?」

 何か、笑っていて、嬉しい。

「いや、えーと……。干支が近いもので」


「ふーん、そうなんだ。俺の家族な、俺以外丑年なんだぜ。面白いって思わない?」

 私が楽しいから、笑顔に見えるのかな?

「思います! うちは、両親が、申年で、弟がいるのですが、寅年なんですよ」


「へえー。弟さんがいるんだ。うちは、妹がいるんだ。菫って言うんだけど。……母さんが、花が好きなんだよ。良い名前だろう? さーちゃんの櫻も花だね」

 お花シリーズだ。

「そう言えば、母の名前は、葵と言って、花ですね。後、祖母は、ハナですよ。そのまんま」


「……。ちっと、いいっすかあ?」

「あ、はい」

 店の人らしい、煙草臭いお兄さんが肩を揺らして来たので、絹矢先輩が応じた。

「今、使わないんだったら、よいて欲しいっす」

「そうですね、分かりました」

「行こうか、さーちゃん」

 促されてスト2のある人気コーナーに行った。

 皆、反対側の見知らぬ人と対戦して燃えている。


 バーニングババババーニング……!


 技が決まりそうで使えない。

 バーニング何とかって技だ。

 可愛い女の子キャラを、失礼だが、ブルー先輩がフグみたいになって動かしている。

 相手は武骨な格闘家風。

 どちらかと言えば、女の子を応援したいな。

 可愛いし。

「青山先輩、がんばってください……」

 小声でエールを送った。


 ババババババ……。

 ホアチャホアチャホアチャ……。


「バーニング何ですか?」

「バーニングプロットじゃあー!」

 そう吠えた途端、バーニングプロットが炸裂した!


 ババーニングプロットー!

 ホアチャ……。


 格闘家は壁に削られて、コンボを重ねられた。

「青山先輩、凄いですね」

「……いやいや。偶々です」

 照れを隠せない所がいい人。

「お疲れさまでした」

「お疲れっす」

 二人とも挨拶して、偉いな。

 ちょっと、ゲーセンを誤解していたかも。


「なあ、俺、今日は金欠だから、帰るわ」

「うーっす」

 アニ研の皆はOKみたい。

「え? そうなんですか?」

 少しのお別れも辛いかも。

「さっき、四回分遊んだから」

「あ……。ごめんなさい……」

 そうでした。

「何で謝るの? 何も悪い事してないよ」

「私が、『X年』をねだったみたいで」

 ぺこりとした。

「大丈夫だよ。万年金欠病」

「そ、そんな。悪かったわ」

 私のせいじゃん。

「米は実家から来るんで、大丈夫。最低限食べられるから」

「うん……」


 ぐうううううう……。


 きゃあ!

 お腹が鳴っちゃったよ。

 恥ずかしい……。


「ここ出ようよ」

「はい」

 賑やかな「うさぎや」を出て、少しあるいた。


「ラーメンの美味しい所があるんだけど……」

 私を見ないで、前を向いて話していた。

「い……。いいですね……」

 私も前を向いて話した。

 誰も瞳に入れないで。

「どうする?」

「……はい」


 ちょっと、誰も見ていないでしょうね?

 あー、春なのに、ハワイみたい。

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