第55話 僕は悪になっていた

 朝の学校。

 僕としては久しぶりの学校なのだが、僕の分身が出席してくれていたので出席日数は問題無い。

 僕の分身がノートを取っていてくれたので勉強の方も何とかなるだろう。

 それでも多少の不安はあるのだが、まあ、大丈夫だろうと思いながら、僕は教室のドアを開けました。

 僕は自分の席に行きました。

「おはよう」

 僕は隣の席の女の子に声をかけました。

「おはよう。今日頼むわね」

「ん?」

「あなたの彼女の分身の事よ」

「ああ、分かっている。君に彼女を会わせれば良いんだろ?」

「うん、けど、その時にあなたも一緒に居てよ」

「おお、まあ、分かった」

「あと、最近のあなただけど、お弁当を・・・」

「金悪さん、おはようございます!」

 突然僕の横から声がしました。

「ああ、おはよう?」

 クラスのツーリング友達でした。

「これ、今日の分です!」

「今日の分?」

「はい、どうぞ、ご確認のほどを、よろしくお願いします」

 ツーリング友達は札束の入った封筒を僕に差し出しました。

「ええっと?これは?」

「A地区からのシノギです」

「シノギ?」

「いやー、さすが金悪さんだ。我がグループもすぐに大きくなりますよ」

「グループ?」

 僕は隣の席の女の子を見ました。

 隣の席の女の子は窓の外を見ていました。

「ええっと、分かった確認しておくから」

「お願いします」

 ツーリング友達は自分の席に戻って行きました。


「おい、なんだこの金は?」

 僕は隣の席の女の子に声をかけました。

「ええっと、最近のあなたが起こしたグループがあって、もう、タチが悪いって評判よ。ヤクザと抗争しているみたいね」

「ちょ、ちょっとまて、知らないよそんなこと、って?どうなっているんだ?俺の分身が?」

「ええ、まあ」

 僕はクラスの中を見回しました。

 僕の方を見ていたクラスメイトの目はザザザと僕とは反対の方を見ました。

「なんてこった」


 昼休み。

「金悪さん。今日も彼女がお弁当を持って廊下で待っていますよ」

 ツーリング友達が僕に言いました。

「ああ、えっと、金悪さんってのはちょっと止めてくれないか。ほら、みんなの手前さ」

「し、失礼しました!」

 ツーリング友達は深々と頭を下げました。

「ああ、えっと、そんなに頭を下げるなよ。ああ、どうしよっかなー」

「金悪さん、どうしようって、そ、そんな、どうかお許しおおおお」

「いや、そうじゃなくて、分かった、分かったから」

 足元にへばりつくツーリング友達を僕は引き立たせました。

「グループはもう辞めだ。ほら、もう辞めた辞めた」

「え?」

「もう辞めたから、ほら、前と同じ様にまた僕をバイクに乗せてよ」

「え?辞めたと言われましても」

「大丈夫、大丈夫、後は僕が何とかするから。えーっと、ほら、弁当だよな、じゃ、ちょっと行ってくるから」

 僕は席を立ちました。


 廊下に出ると、可愛い女の子が大きな弁当包みを持って立っていました。

「あ、金さん、お弁当一緒に食べましょう」

 可愛い女の子は僕に言いました。

「え?僕?」

「金さん?」

 可愛い女の子は僕を不思議そうに見ていました。

 僕は教室の隅に座っている僕の隣の席の女の子を見ました。

 彼女はまた窓の外を向いていました。

「金さん?」

 僕の後ろから白い女学生の声がしました。

「あ、えーっとマリヤさん」

 そこには二人の白い女学生が立っていました。

「誰ですか、その女?」

「えーっと、誰だろう?」

「ひ、ひどい、騙したのね。この女とはもう別れたって言ってたのに!」

 可愛い女の子は涙を流し始めました。

 彼女は弁当包みを廊下に落とすと、走って行ってしまいました。

「金さん?」

 白い女学生が言いました。

「ちょ、ちょっと待って」

 僕は教室に入ると、まっすぐに僕の隣の席の女の子の所に行きました。

「おい、GOレンジャーピンク。もうちょっと僕に説明する事があるんじゃないのか?ちょっと来い」

 僕はGOレンジャーピンクの手を引いて教室のドアを出ました。

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