第54話 ドーナッツ屋に行く

 駅前の商店街のドーナッツ屋に僕ともう一人の僕は来ました。

 GOレンジャーピンクが電話で指定した待ち合わせ場所でした。

 僕達の席のまわりには若い女の子やカップルが居ました。

 僕達はドーナツを食べてコーヒーを飲んでGOレンジャーピンクを待ちました。


「お待たせ」

 GOレンジャーピンクがやってきて、もう一人の僕の隣に座りました。

「で、この前の事なんだけど」

「うん?」

「なんか、僕達、戦闘に巻き込まれて、何処かの地下?に置き去りにされてねえ」

「うんうん、なんか大変だったみたいねー」

「大変だったよ。あの世の入り口まで行って、銀河鉄道に乗って途中下車して、百鬼夜行と共にこの世に帰ってきたからね。いや、本当に大変だったよ」

「ふーん。また、あなたの彼女に助けてもらったと?そういうことね」

「うん、ああ、まあ、そうなんだけど」

「まあ、帰ってこれて良かったじゃない」

「でだね、このもう一人の僕が家に居てね、僕の家族と夕飯を食べていたんだけど、これはどういうことなの?そこに僕が入ってきて、家族一同が二人の僕を目の当たりにしたんだよ。それで、僕達二人で一緒に家族とご飯を食べて。それで、それで、僕は家族にどう説明すればいいのか、ううう」

 僕の目から涙が出てきました。

「こらこら、ちょっと、ここで泣かないでよ。ほらー、泣き止みなさいよ」

「いや、ごめん、ぐすん」

「あの日、あなたこの世から消えてしまったでしょう。こちらとしては、それを公にしたくなかったのよ。それで、残されたあなたの分身さんにあなたに成り代わってもらったわけ。学校も行ってもらったし、出席日数も大丈夫よ」

「ふーん、まあ、それはありがたいけど。で、これから僕の分身の彼はどうなるのかな?」

「GOレンジャー側で保護します。で、今から私が彼を連れて行くから」

「ああ、そうなの?」

 もう一人の僕はすっと立ち上がりました。

「ご飯毎日美味しかったです。学校も楽しかったです。とても貴重な体験をさせていただきました。有難うございました」

 もう一人の僕は僕に深々とお辞儀をしました。

「あ、ああ、僕の方こそ、僕の留守の間、ありがとうな」

「お別れですね」

「ああ」

「さあ、行きましょうか」

 僕の分身がGOレンジャーピンクに言いました。

「ちょ、ちょっと待った。まあ、もうちょっと待って、まあ、座って座って」

 僕は彼を椅子に座らせました。

「いや、もうちょっと聞きたいこともあるしね。で、あの戦闘は何だったの?死にそうになったよ」

 僕はGOレンジャーピンクに言いました。

「ああ、あれはね、もう大変なのよ。あなたが遺跡から宇宙に飛び出して行ったでしょ。あれで、各大国に色々とバレてしまったのよねー。遺跡の事とか。それでー、もうスパイ大作戦みたいになっているのよ今」

「はあ、大変そうだねえ」

「そうなのよ。実際大変なんだけど、私はあなた待ちで待機だったから、まあ、そんなに大変じゃなかったんだけど。あーあ、明日から忙しくなるわ」

 GOレンジャーピンクは天井を仰ぎ見ました。

「あ、そうだ。あなたの彼女の白蛇さんの分身はどうなったのかしら?私彼女の分身も保護しなくてはならないのだけど」

「ああ、あの二人なら僕と一緒に帰ってきて、それから家に帰ったよ」

「あら、そう。連絡つかないかしら?」

「いや、彼女、携帯電話とか持って無いからなー。まあ、明日学校でってことで」

 僕はGOレンジャーピンクに言いました。

 今から白蛇さんの家に行って無事に帰ってこれる自信が僕にはありませんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る