第52話 銀河鉄道

 電車の窓から外を見ると、この電車はまるで夜の空を飛んでいる様でした。

 闇の中に沢山の星が見えました。

 僕は星座といったら北斗七星しか知らないのですが、それは空を見ていてもみつかりませんでした。

「北斗七星はないねえ。北はどっちなのかな」

「そうですね、上が南の星だから、下の方です」

 僕の前の席に座った白い女学生が言いました。

 僕は地平線の方を見ました。

 しかし、星は地平線の下にも広がっていました。

 僕の視線はドンドンと下の方にいきました。

「あ、あった」

 僕は電車の窓から地面の方に北斗七星を見つけました。


 ガラガラガラ。

 電車の車両の連結ドアが開きました。

「ご乗車、ありがとうございます。切符を拝見させていただきます」

 それは青い服と帽子の車掌でした。

「ねえ、切符って、僕達持ってるの?」

 僕は白い女学生に言いました。

「ありますよ。あなたの服のポケットを調べてみなさい」

 僕は制服のポケットに手を入れました。

 そこには何か紙切れがありました。

 僕はそれをポケットから取り出しました。

 それは黄色い紙でした。

 それが四つ折になっていました。

「これかな?」

 白い女学生はニコリとしました。


「おお、これはすごい切符です。あなた、この切符ならどこまででも行くことができますよ」

 そんな声が僕達が座る座席の隣から聞こえてきました。

 なんだなんだ?僕は立ち上がって隣の席を覗いてみました。

 そこには二人の男の子が座っていました。

 他の乗客もその席を覗き込んでいました。


「ねえ、金さん、この電車の事は知っている?」

 白い女学生が言いました。

「宮沢賢治の銀河鉄道の夜」

「そうよ。ねえ、あれが南十字星よ」

「ねえ、この電車に乗りつづけたら僕達、あの世まで行っちゃうんじゃ?」

「大丈夫よ、途中で降りるから」

 僕の前の席の白い女学生は電車の窓に置いた僕の手に触れました。

 僕の隣の白い女学生は僕の腕に腕をからめました。

「ねえ、僕達は何処まで行くんだろう?」

「そうですねえ、何処までも何処までもこのまま一緒に行きたいです」

 白い女学生は言いました。

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