第51話 電車に乗る

「さて、行きましょう」

 白い女学生が言いました。

「え?行くの?」

 縁側でごろりと手枕で寝転んでいた僕は起き上がりました。

「元の時間に戻りたくわないのですか?」

「いや、それは戻りたいけど、ここも良い所だなーって、まあ、わかった。今準備するから」

 僕は立ち上がって部屋に戻ってここに来たときに着ていた学生服に着替えました。

「さあ、準備できたよ」

「じゃ、行きましょう」

 白い女学生が歩き出そうとすると、

「ご出発ですか?」

 と、この家の主の声がしました。

「はい、この度は色々と有難うございました」

 白い女学生は家の主に言いました。

「ああ、また来てください。金さんも、ぜひまた一緒に来てくださいね」

 家の主は僕に微笑みかけました。

「あ、どうも、この度は有難うございました。長いことお世話になりました」

「いえいえ、ずっと居てくれても良いのですよ。ほほほ」

「いや、どうも」

 僕は頭をかきました。


 僕と二人の白い女学生が家の門を出ると、辺りは赤く夕日に染まっていました。

 僕達はこの家に来たときと同じ方向に歩きました。

 そしてここに来たときと同じ街にでました。

「ここです」

 白い女学生はある路地の前で立ち止まりました。

 その路地はとても暗い路地でした。

 路地は狭く、建物が両側に建っていました。

「さあ、私の手を取ってください」

 差し出された白い女学生の白い手を僕は握りました。

 それから、もう一人の白い女学生の手を反対の手で握りました。

 僕と白い女学生たちは路地に入りました。

 路地はすぐに真っ暗になって、僕達はまた暗闇の中に居ました。

 僕と白い女学生は闇の中に立っていました。


「あ、来ました」

 白い女学生が言いました。

 コトンコトンと遠くから音がしました。

 そうして小さな光が見えました。

 その光はだんだんと大きくなって僕達に近づいて来ました。

 それは電車でした。

 電車は僕達の前に停まりました。

 白い女学生は電車のドアを手で開けて電車に乗りました。

 僕ともう一人の白い女学生も彼女の後について電車に乗りました。

 電車の中は薄暗く、とても気味の悪い感じでした。

 白い女学生の後に付いて電車の中を移動し、僕達はボックス型の座席に座りました。

 電車はすーっと動き出しました。

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