第50話 大きな家

 髪を後ろに留めた白い女学生の姿は僕をビックリさせました。

 いつも白い女学生を被っている負のオーラは消え、パーッと彼女の回りの空気が暖かく輝きだしたようでした。

「さあ、行きましょう」

 白い女学生が暗い路地から表の通りに出ると、今まで白黒テレビの中だった様な街がパーッとカラーテレビの様に華やかになりました。

 そして、それまで聞こえなかった街の音が聞こえてきました。

 それは、人々の話し声であり、笑い声であり、怒鳴る声であり、歌声などでした。

 僕ともう1人の白い女学生は先を行く白い女学生の後について通りに出ました。

 街の通りには活気がありまた。

 夕方の通りには子供が走り回っていました。

 店からは良い匂いがただよってきました。

 店の前で寝ている犬がいました。

 白い女学生が道を通ると人々が彼女に振り返りました。

 ある人はニコリと笑って彼女に頭を下げました。

 ある人は彼女に見とれて歩く足を止めました。

 白い女学生はドンドン通りを進んでいきました。

 その歩調は街に活気を生んでいる様でした。


 街の通りを進んでいくと、住宅地にでました。

 その住宅地を進んで行くと大きな家がありました。

 その大きな家の門の前で白い女学生は立ち止まりました。

「金さん、今日からここで少しお世話になります」

「え?ここで?」

「はい。ここは私の知り合いの家なんです」

「そ、そうなんだ。わ、わかった」

 僕は混乱していましたが、そう答えました。

 どうして僕達の住む時代とは違うこの時代に白い女学生は知り合いが居るのだろうと思いましたが、言いませんでした。


 門を通ると黒い影の様な男が立っていました。

「どおぞ」

 その黒い影の様な男が言いました。

「どおぞ、どおぞ」

 黒い影の様な男は僕ともう1人の白い女学生にも言いました。

「どうも」

 僕達は玄関まで歩きました。

 玄関の戸は大きく開いていました。

 玄関では赤い着物を着た女が座っていました。

「ようこそ、さあ、お上がりください」

 僕達は靴を脱いで家に上がりました。

 赤い着物を着た女に連れられて、僕達は長い廊下を歩きました。

 うねうねと5回ほど廊下を曲がった所にある部屋に僕達はつきました。

「お風呂の準備ができておりますので、どうぞ」

「あ、はあ、どうも」

「着替えはここにあります。汚れ物は洗いますのでこの箱に」

 部屋の隅に浅い箱がありその横に浴衣がありました。

「あ、はあ、わかりました。どうも」

 僕は頭を下げました。

「それでは後ほど」

 赤い着物の女と2人の白い女学生は僕をおいて行ってしまいました。

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