第48話 あの世に来た

「昨日が宇宙で今日は地下とは」

 僕はつぶやきました。

 僕は小さな地下鉄の駅らしき場所を見回しました。

 僕達が乗ってきた乗り物が線路に止まっていました。

 僕達が来た方のトンネルは高さが2メートルほどの縦に細長いものでした。

 トンネルの中は真っ暗闇でした。

 そしてもう一つトンネルがありました。

 それは僕達が来た方とは反対にあるトンネルです。

 やはりそのトンネルの中も真っ暗闇でした。

「さて、行くか、戻るか」

 ウロウロする僕を2人の女学生は見ていました。

「あれ?しかし、ここに駅があるのは何でだろう?おかしいじゃないか?何も無いところに駅を作るわけはない。ということは、何処かに出口があるはずじゃないか?たぶん、兵士達もその出口から出て行って何処かに行ってしまったのだろう」

 僕は壁に手を当ててぐるりと歩き回りました。

 しかし、出口はみつかりませんでした。

「ああ、わかんない。どうしたらいんだろうね」

「金さん。まあ、落ち着いてください。もう少しここで待ってみましょう」


 僕と2人の白い女学生は壁を背にして座りました。

 それからしばらく僕は目をとじました。


 僕はしばらく眠っていたようでした。

 目を覚ますと、白い女学生も僕にもたれて眠っていました。

 兵士が戻ってきた様子もありませんでした。

 僕は携帯電話を取り出して時間を見ました。

 午後5時ちょっと前でした。

「ねえ、マリヤさん起きて。もう5時だよ」

 僕は2人の白い女学生を揺り起こしました。

「ねえ、もう兵士は多分帰ってこないよ。で、僕はここは前に進むべきだと思うんだ。多分、僕達が来た穴は爆発で塞がれているはずだし、後には戻れないからね。ここに居ても助けが来る様でもないし」

「わかりました」

 僕と2人の白い女学生は立ち上がって、僕達が来た方とは反対のトンネルに入りました。


 僕は携帯電話の光をかざして歩きました。

 僕の後ろからは2人の白い女学生がボーッと光って歩いていました。

 僕達はどんどんとトンネルの奥に進みました。


 10分ほど歩いた所で、僕は前方に小さな光を発見しました。

 その小さな光はユラユラと揺れながら近づいてきました。

「誰か来る」

 僕は立ち止まりました。

 その小さな光はユラユラと揺れながら更に近づいてきました。

「ちょうちん?みたいだけど?」

 しばらくするとちょうちんは僕の前まで来て止まりました。

「どうしました?こんな所で?」

 背が低くい太った男がちょうちんを持って立っていました。

「いや、あの、ちょっと道に迷いまして」

「ああ、それは難儀なさって。ここは暗いですからねえ。どうれ、私が案内しましょう。ついてきなさい」

「あ、そうですか?助かります」

 僕は背の低いちょうちんを持った男について歩きだしました。

 直ぐに白い女学生が僕の手を握ってきました。

「金さん、駄目です」

「え?なんで?」

「その男について行っては地獄に連れてかれますよ」

「え?地獄?」

「ちょっとここは暗すぎました。さあ、一度引き返しましょう」

 白い女学生はグイッと僕の手を引きました。

 ちょうちんはユラユラと揺れながら僕たちから離れて行きました。

「何だったのあれ?」

「分かりません。けど、方角が良くありませんでした」

「方角?トンネルは一本道だから選択の・・・あれ?」

 僕の回りにはトンネルの壁がありませんでした。

「何処ここ?」

「ここは、あの世です」

『あの世?」

「はい」

 白い女学生は僕の手をそっと両手で握りました。

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