第45話 襲撃される

 僕と二人の白い女学生が乗り込んだトラックの荷台には左右にベンチがついていました。

 僕と二人の白い女学生はそのベンチに三人で並んで座りました。

 荷台には薄暗い蛍光灯が点いています。

 僕の目の前のベンチには軍服を着た五人の男が座っていました。

 男達は無言でした。

 トラックは走り続けました。

 男達は目を閉じていました。

 僕と二人の白い女学生も無言でした。

 トラックは走り続けました。

 荷台からは外の様子がまったく分かりませんでした。

 一時間、二時間、三時間。

 僕は携帯電話の時計を見る度に不安になりました。

 二人の白い女学生は僕に寄りかかって目を閉じていました。

 トラックは止まらずに走り続けていたので、高速道路を走っているのだろうと思われました。


「もうすぐです」

 軍服を着た男が突然言いました。

 目を閉じていた僕は頭を上げて声のする方を見ました。

「トラックの荷台を下りたら兵士が先導します。それに付いて行って下さい」

「あ、わかりました」

 僕は頭を下げました。

「それではこれを」

 男はヘルメットを僕に手渡しました。

「はあ」

「あと、これも着てください」

 男は防弾チョッキらしき物を僕に手渡しました。

「え?これは?」

「防弾チョッキです」

「はあ」

「さあ、早く着てください」

 男は二人の白い女学生にもヘルメットと防弾チョッキを渡しました。

 僕と二人の白い女学生はヘルメットと防弾チョッキを着ました。


 しばらくして、トラックは一度止まり、それからウネウネと曲がりだしました。

 トラックは高速道路から下りた様でした。

 トラックは今度は山道を登ってウネウネと走行している様でした。

 あまりにウネウネと揺れるので僕は気分が悪くなりました。


 トラックが止まりました。

「さあ、行きます」

 男達は慌しく荷台の扉の前に移動しました。

 それにつられて僕も荷台の扉の移動しました。

 荷台の扉が開きました。

 荷台から出ると同時に僕は何かに吹っ飛ばされました。

 僕の顔には土の塊がぶち当たりました。

 タタタタタタ。タタタタタ。

 銃を発砲している様な音が聞こえました。

「大丈夫ですか。立って」

 僕は腕を取られて立たされました。

 ひゅるるるるる。

 何かが飛んでくるような音が聞こえました。

「走れー!」

 男が叫びました。

 僕は腕を引かれるままに走りました。

 ドーン!

 土の塊が僕の上に降り注ぎました。

 僕が後ろを見るとトラックが横倒しになっているのが見えました。

 ひゅるるるるる。

 ドーン!

 次の瞬間トラックが爆発しました。

「走れ!はやく。はやくこっちに」

 僕は森の中にいました。

 そしてそこは戦場でした。

 ひゅるるるるるる。

 僕は頭を低くして兵士の後について走りました。

 ドーン。

「うわあああああ」

 僕の後ろで悲鳴が聞こえました。

 また土の塊が降ってきました。

 僕は無我夢中で走りました。

 ひゅるるるるる。

 ドーン。

 僕の右側から爆発音が聞こえて、木っ端微塵になった木片が飛んで来ました。

「痛い」

 白い女学生の声が聞こえました。

 僕が後ろを見ると白い女学生が座り込んでいました。

「大丈夫か!」

 僕は白い女学生に駆け寄りました。

「ええ、大丈夫です」

「さあ、立って」

 僕は白い女学生の手を取りました。

「こっちです!」

 兵士の声が聞こえました。

 僕は兵士の方に走りました。

 ひゅるるるるる。

 ドーン。

 僕達はその音から逃げようと必死に走りました。


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