第42話 自分自身と鉢合わせる

「しまった、寝坊した!」

 僕は布団から飛び起きました。

 昨日、宇宙に放り出されたのを助け出されて、家に帰ってきたのは朝方でした。

 家に帰ってきて布団に入ってからの記憶が無いほどぐっすりと眠りました。

「あれ?まだ居たの?遅刻じゃないの?」

 僕が家の一階に行くと母が言いました。

「なんで、起こしてくれないんだよ」

「そんな二度寝してても分からないでしょ」

「二度寝なんてしてないよ。今起きたところだから、って、行ってきます」

 僕は走って家を出ました。

「たぶん、時間的にホームルームは遅刻だが、一限目には少し遅れて到着するはず。先生が来るのが少し遅れたらまだチャンスはある」

 僕はそう思って全力で走りました。

 しかし、僕は直ぐにバテました。

 考えたら、昨日の昼から何も食べていないのでした。

「駄目だ。走れない。というか動けない」

 僕はコンビに行ってパンを買って食べました。

「あーあ、遅刻だな」

 すでに学校が始まった最初の2週間を休んでいた僕にはこの授業を欠席するという選択はありませんでした。

「まあ、なんせ遅刻でも行かないと」


 ガラガラガラ。

 僕は教室の後ろのドアを開けました。

 クラスの全員と先生が僕を見ました。

「あの、すみません。遅刻しました」

 僕はガラガラガラとドアを閉めて自分の席に行きました。

「あれ?」

 僕の席には誰かが座って居ました。

 僕の隣の席の女の子が驚いた顔で僕を観て居ました。

「あ、あ、あ、あ、あの先生!」

 僕の隣の席の女の子は突然そう叫ぶと席を立ちました。

 そして僕に足早に歩みより僕を両手で押しました。

「なになに?」

 僕は後退しました。

「すみません先生、ちょっと具合が悪いので、保健室に行ってきます!」

 僕の隣の席の女の子はそう言って僕を教室から押し出しました。


「何?」

 僕は驚いて言いました。

「こっちに来なさい」

 僕は隣の席の女の子に腕を引かれて階段まで来ました。

「なによ、帰ってきたの?」

「ああ、知ってた?」

「知らないわよ。知ってたら・・・ちょっと待って」

 僕の隣の席の女の子は携帯電話で電話をかけました。

「ええ!聞いてないですよ。こっちは作戦通りにしちゃいましたよ。どうするんですか!任せる?はあ?なんで!・・・はあ・・・わ、わかりました」

 僕の隣の席の女の子はうつむいて電話を切りました。

「あのー?ピンクさん?作戦ってのは何?」

 僕の隣の席の女の子はうつむいたままでした。

「えーっと、あの、僕の席に誰か居たけど」

「あれはあなたの分身よ」

「分身?」

「昨日の遺跡探索であなたが見つけたあなたの分身よ」

「え?僕の分身がなんでここに?」

「あなたが遺跡で行方不明になったので、あなたの分身を代わりにあなたの家に送り届けたのよ」

「ええ!?」

「だって、GOレンジャーのバイトで人が行方不明になっただなんて、公表できる訳ないでしょ」

「そ、それじゃあ、もし僕が帰ってこれなかったら、僕の分身が僕になって僕の人生を」

「まあ、そういうことね。歩んでいたわ。って、冗談よ。良かったじゃないの、助かって」

 女の子は急に笑顔になって僕に言いました。

「ああ、まあ」

 僕はその戦略的笑顔に押されました。僕は続けて言いました。

「けどさ、さっき僕が教室に入って行った時に僕の分身が教室に居たんだろう?そこに僕が入って来た。って事は教室に居たみんなが、二人の僕を同時に観たって事じゃないか?どうするんだよこれ?」

 女の子は笑顔を硬ばらせて何か考えている様でした。

「えーっと、まず、休み時間まであなたは体育館の裏に隠れていて。私が休み時間にあなたの分身を連れてそこに行くわ。GOレンジャーの本部に連絡してそこで分身を引き取ってもらう様にするから」

「あ、ああ」

「じゃ、後でね」

 女の子は保健室の方に行ってしまいました。

 僕は体育館の裏に行く事にしました。

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