第40話 宇宙で閉じ込められる
「私はかもめ」
白い女学生が言いました。
「何それ?」
「ロシアの宇宙飛行士がそう言ったそうです」
「ふーん。ロシア好きなの?」
「ええ、私にはロシアの血が流れているんです」
「え?本当に?」
「クスクス。ウソです」
白い女学生は僕から顔をそむけて腹をかかえてクスクスと笑いました。
僕はそんな白い女学生を見て、「これは本当にやばい」と思いました。「冗談なんか言う人じゃないのに」と。
僕は再び窓を見ました。
僕の眼下にはやはり地球の丸い曲線がありました。
「ねえ、地球に戻れないかな?」
僕は白い女学生に言いました。
「どうやって、もどります?」
「そうだなー、何かスイッチでもないか?」
僕は窓を離れて狭い部屋の中をうろうろと探索しました。
「あれ?まてよ?僕は今歩いているってことは、重力があるって事じゃないか?と、すると、ここは宇宙空間ではないのじゃないか?」
「いいえ、ここは宇宙空間です」
「いやいや、窓から見える景色は実はテレビ映像か何かで、僕達は宇宙に来たと錯覚させられているんだ」
「いいえ、そんなことはありませんよ」
「なんで、そんなことが無いと言えるんだ!」
僕は白い女学生に怒鳴りました。
「だって・・・」
白い女学生は下を向いて黙ってしまいました。
「そうだ、椅子にもう一度座ってみよう」
僕達はここに瞬間移動してきた椅子に座ってみましたが何も起こりませんでした。
「地球に帰れ。地球に戻れ。地球に下りろ。地球に・・・」
僕は色々と椅子に向かって言ってみたけど、駄目でした。
「ああー、まずい。これは本当にまずい」
僕は頭をかかえて椅子に座り込みました。
白い女学生は部屋の壁にもたれて下をむいていました。
二時間ほど経ちました。
僕は部屋中の壁を触ったり、声をかけたりしましたが、何も変化はありませんでした。
僕は再び窓に行って外を見ました。
そこには前と同じように地球の丸い曲線が見えました。
「地球は青かった、か」
僕は一人つぶやきました。
「ねえ、まだ地球は近くにありますか?」
「うん、まだ前と同じ位の所にあるよ」
白い女学生は立って僕の所に来ました。
「ねえ、なんで、この宇宙船かもしれない何かはここで止まっているのでしょう?」
「うーん、何でだろう?たとえば、これは地球を回る人工衛星のような物なんじゃないか」
「人工衛星」
「そう。まあ、そうだとすれば、地球からは離れる事はないけど。ああ、どうやったら地球に帰れるんだ!」
さらに5時間ほど経ちました。
「ねえ、裏道を使って帰れないかな?」
僕は白い女学生に言いました。
白い女学生は首を横にふりました。
「ああ、お腹も空いたねえ」
白い女学生は首を縦に降りました。
「まあ、助けが来るのを待つしかないか。って、助けが来るかねえ?」
さらに3時間後。
僕は白い女学生の横に行って座りました。
「宇宙空間ってのは何も無くて、どこにも行けなくて、退屈な所だね」
僕は白い女学生に言いました。
白い女学生は首を縦にふりました。
「ねえ、誰か宇宙人に知り合いとかいないの?」
「あ、月に!」
「月?」
「昔、知り合いが月に・・・帰りました」
「え、どうやって?」
「月へと続く道からです」
「ふーん、けど、月は遠いなー」
僕はごろりとして、いつの間にやら眠っていました。
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