第36話 ヘリコプターで移動する

 突然、軍事用のヘリコプターに乗り込むことになった僕と白い女学生。

 本当にこれは安全なバイトなのだろうか?

 ヘリコプターの右側の窓からオレンジ色の太陽が上っているのが見えました。

 僕達は北へと飛んでいました。

 目の前の席の若い男と目が合いました。

「うるさいですね」

 男は上を指差してそう言ったように見えました。

「そうですね」

 という意味を込めて僕はうなづきました。

「はじめまして」

 と若い男が手を差し出してきて言ったように見えました。

「あ、どうも」

 という意味を込めて、僕は差し出された手を握り返しました。

「僕ね、イカとか大好きなんですよ」

 と男の目が言っていました。

「イカですか?」

 僕も目で言い返しました。

「ええ、イカ、美味しいですよね」

「はあ」

「でね、僕の一番好きなイカの種類がですね」

 若い男は少し溜めて、ニヤリと笑いました。

「ペレストロイカなんですよ」

「はあ、なんか聞いたことがあります」

 白い女学生が僕を肘で突きました。

「ロシアのイカよ」

 白い女学生が僕の耳元で言いました。

 目の前の若い男は僕に話すのを止めてそっぽを向きました。


「あれ?目でどうやってイカを語ったのだろうこの男は?」


 僕達の乗った軍事用ヘリコプターは山々の谷を通り抜け山深くへと入って行きました。

 飛び立ってから40分ほど経ちました。

 ヘリコプターは高度を下げ始めました。

 僕達の降り立った場所は森の中でした。

 森にヘリコプターが着陸できるだけの場所がありました。

「こっちだ」

 と手を振っている男の方に全員で走りました。

 すぐにヘリコプターは飛び去りました。

 僕達は森の中の細い獣道を一列で通りました。

 少し行くと、少し開けてテントが張られている場所につきました。

 そこには僕達を入れて20人ほどの人達が居ました。

 僕達を見ながらノートを持った兵士が僕達の前をうろうろとしました。

「はい、全員そろいました」

 兵士が無線機に言いました。

「了解、でわ出発してください」

「はい、了解です」

 兵士は木箱の上に立ちました。

「はい、みなさん、おはようございます。それでは、今から、バイトしてもらう場所に行きます。今日は、GOレンジャーのバイトということで皆さん参加してもらいましたので、皆さんも今日は立派なGOレンジャーとして、規律を重んじて、働いてもらいたく思います。この軍服を着ている人達が正社員の人なので、軍服を着た人の指示にしたがって行動してください。それでは出発します」

 そう言って、兵士は、早速歩き出しました。

 スタスタと兵士は歩いて行くので、僕達は兵士に続いて歩きだしました。


 10分ほど森の中の獣道の様な道を歩くと、目の前に洞窟が現れました。

 階段注意とかかれた札が立てられていました。

 洞窟に入るとすぐに下り階段がありました。

「気をつけてください、階段から滑り落ちないように。手すりが左右にあるので、それを使って下りてください」

 と兵士の声が聞こえました。

 僕達は暗い洞窟の階段を下り続けました。

 階段は下りても下りてもまっすぐに続きました。

 地上からの光もすぐに無くなりました。

 みんなの携帯電話の光が壁を映し出しました。

 僕の前には白い女学生が歩いていました。

 やっぱり白い女学生は薄く白く光っていました。

 それから僕達は30分ほど階段を下りつづけました。

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