第35話 新しいバイト

 日曜日朝4時半。

 僕は家の玄関から出ました。

 玄関の前には白い女学生が立っていました。

 彼女は学校の制服を着て白くうっすらと光っていました。

 僕と彼女はバイトの集合場所の駅前のビルに歩いて行きました。


 XXビルの3階。

 光が漏れてくるドアはその階に一つありました。

 自衛官大募集!と書かれたポスターが張られてありました。

 僕はそのドアを静かに開けて、中をうかがいました。

 ビシッとスーツを着た男の人が椅子に座っていました。

「あのー、すみません。バイトで来たのですが」

「はい、どうぞ、お入りください」

 スーツの男は立ち上がってその部屋の奥の部屋のドアを開けました。

「こちらに来てください」

 僕と白い女学生はその奥の部屋に入りました。

 その部屋は小さな教室の様でした。

 スーツの男は僕と白い女学生にクリップボードを手渡しました。

「これを書いてください」

 そこには、名前、住所、電話番号などを書く様に記されていました。

 僕はクリップボードを受け取ってそれに書き込み始めました。

 名前。

 そういえば、僕は白い女学生の本名をまだ知らない。

 僕は隣でクリップボードに書き込んでいる白い女学生の手元を覗き見ました。

 白蛇マリヤ。

 白い女学生はすぐに僕が覗き見ているのに気がつきました。

 白い女学生は怒った目で僕を睨んでから、すすすと僕から少し離れました。

 白蛇マリヤか。

 生年月日、血液型、性別、住所、電話番号。

 その次に、色々と質問がありました。

 あなたは人間ですか。はい、いいえ。もし違うのなら種別を書いてください。(   )

 僕は白い女学生の方を見ました。

 白い女学生は何と書いたのだろうか?

 僕はそれが知りたかったのですが、白い女学生はクリップボードを僕が見えないよう胸に抱いていました。

 その次にも、魔法が使えますか?はい、いいえ。などと質問が続きました。

 僕はまったくの一般人なので、全ていいえに丸をつけました。

 好きな色は?に僕は( 金 )と書き入れました。

 最後に、遺体の受取人と、その人の住所と電話番号を書く欄がありました。

「あ、あのー」

 僕はスーツの男に声をかけました。

「はい」

「この遺体の受取人ってのがあるんですけど、このバイトってそんなに危ないバイトなんですか」

「いや、そんな事は無いです。あ、そこは書かないでもいいですよ。今回のバイトには関係ないんで」

「はあ、そうですか。分かりました」

 僕はクリップボードをスーツの男に渡しました。

 白い女学生もクリップボードをスーツの男に渡しました。


 突然、部屋のドアが開きました。

「ちょっと早いけど、迎えに来ました」

「え、早いね。まあ、ちょうど良かったよ」

 ドアを開けたのは軍服を着た男でした。

「じゃ、君たち、この人に付いて行ってください」

 スーツの男が僕と白い女学生に言いました。


 僕と白い女学生はビルの前に停められたワゴン車に乗り込みました。

 車にはすでに5人乗っていました。

 軍服の男と僕と白い女学生が乗り込み車は満員でした。

 ワゴン車はスピードをだして走り出しました。

 車の中では誰も口をききませんでした。

 車の中の人々は色々な年齢の人達でした。


 すぐに、ワゴン車は停まりました。

「はい、出てください。急いで」

 軍服の男に言われて僕達はワゴン車から出ました。

 そこは駅からほど近い河原でした。

 バタバタバタバタ。

 上から大きな軍事様にしか見えないヘリコプターがやって来ました。

 そのヘリコプターは河原のグラウンドに降り、そこに居た数人を乗せてすぐに飛び立ちました。

 それを僕は河原の土手から見ました。

「皆さん、あそこまで行ってください。すぐに次のヘリコプターが来ますから。走って!」

 と軍服の男は言いました。

 僕達は河原のグラウンドまで走りました。

 すぐにヘリコプターは僕達の前に降りて来ました。

「乗って、乗って」

 と、そこに居た別の軍服の男に僕達は言われるままにヘリコプターに乗り込みました。

 外の制服の男がヘリコプターのドアをしめ、敬礼しました。

 するとすぐにヘリコプターは飛び立ちました。

「シートベルトを締めろ」

 と軍服の男が言いました。

 僕達は急いでシートベルトを締めました。

 その軍服の男は大きな銃を肩にかけていました。

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