第30話 悪魔召喚
「出ませんね」
僕はガクリと疲れてうなだれている生徒会長に声をかけました。
「も、もう一度だけ」
生徒会長はまた悪魔を呼び出す準備を始めました。
もうすでに十回ほど魔方陣を書き換えたり供物を代えたりしながら生徒会長は悪魔を呼び出すお祈りをしていました。
しかし、まったく、悪魔などは出てこないのでした。
美しかった生徒会長の目は血走り、身なりもよたよたとしてきました。
「会長、今日は多分、日が悪いんですよ。そろそろ止めにしましょう」
僕は生徒会長のそばに行って言いました。
「はあ~」
ため息をつく生徒会長。
「ダメね、やっぱり、悪魔なんか呼び出せるわけ無いわ」
「はあ、まあ」
「ごめんなさい、くだらない事に付き合わせてしまって」
「まあ、良いですよ。会長の気がすんだのなら、今日はそれで吉としましょう」
「ありがとう」
僕と生徒会長は生徒会室の隣の部屋の物置を片付けました。
多分、もう二度と生徒会長は悪魔なんて呼び出そうとは思わないだろうと僕は思いました。
「さて、帰りましょうか」
ガラガラガラ。
生徒会長が生徒会室のドアを開けました。
「きゃあ!」
生徒会長の悲鳴。
「ど、どうしたんです?」
僕は生徒会長の背後から廊下を見ました。
「ど、どうなってんだ?」
目の前の廊下はドス黒い赤で濡れていて、禍々しい物が多々散乱していたのです。
その中で、白い女学生が肩で息をついて立っていました。
「はあ、はあ、はあ」
白い女学生の制服はボロボロで赤く染められていました。
膝に手をついた白い女学生は崩れ落ちそうでした。
「ど、どどど、どうしたの一体!」
僕は白い女学生に近寄りました。
「な、何かがこの部屋に向かって次々にやってきました」
「な、何が?」
「たぶん、悪い何かです」
「悪い何か?」
「それで『この部屋には入るな』と言ったら戦いになりました」
「ええ?それは」
「ええ、多分アレは悪魔です」
「ま、マジで?」
「気をつけて下さい。まだ、来ます」
「ギャー!」
校舎の外から絶命の悲鳴が聞こえました。
僕は廊下の窓に行って外を見ました。
そこでは数人のGOレンジャーが何か禍々しい物と戦っていました。
「ええええ?マジかよ」
僕は驚愕しました。
外は暗く、闇が渦巻き、禍々と何かがうごめいていました。
「ふふふ、なーんだ。足止めされてたってわけね」
生徒会長が嬉しそうに言いました。
「いや、生徒会長、ヤバいですよこれは。10回ほど呼びましたよ。それが全て来ているとすれば、まったく僕達の手には負えませんよ。雇うにも5億円は要りますよ」
それを聞いて白い女学生は僕をにらみました。
「この部屋で何をしていたのですか?」
ギロリと白い女学生の目が僕を見ました。
「いや、その、会長が悪魔の手を借りたいと言うので、ちょっとそれに」
「馬鹿な事をしましたね」
「ご、ごめん、なさい」
「コラー!またお前かああああ!」
GOレンジャーピンクが僕達の方に走って来ました。
「なんだこれは?」
「えーっと悪魔だと思う」
「悪魔なんて呼ぶな!ぼけ!」
僕は激昂したGOレンジャーピンクに殴られました。
更に僕を殴ろうとするピンクレンジャーの前に白い女学生が立ちました。
「どきなさい!」
ピンクレンジャーの怒りはタダ事ではありません。
「あなた、金さんの何なのですか?」
白い女学生がピンクレンジャーに言いました。
「なんだと!コイツか?コイツはたった今から私の敵だあああああ!」
ピンクレンジャーは腰の刀を抜くとそのまま白い女学生に斬りかかりました。
ビシッ!
白い女学生の真剣白刃取り。
「分かりました。金さんがあなたの敵なら、あなたは私の敵です」
真剣白刃取り越しにそう言ってから、白い女学生は前蹴りでピンクレンジャーを蹴り飛ばしました。
「ぐはっ!」
倒れたまま動かないピンクレンジャー。
カランカラン。
白い女学生がピンクレンジャーの刀を捨てて僕と向かい合いました。
「金さん」
「は、はい?」
「一緒に帰りましょう」
そう言った白い女学生の頬に涙が一筋流れてきました。
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