第28話 生徒会長の陰謀

「いやー、僕、昨夜あれから誘拐されちゃってさ、朝まで拘束されてたんだ」

 誘拐されて助かったのが朝でしたが、昼にはすでに学校に登校している僕でした。

「誘拐?」

 昼飯の弁当のオハギを箸にしてた白い女学生の動きが止まりました。

「うん、なんか一億円要求されちゃったよ」

「一億円?」

「うん。なんか、昨日の今日ってかんじだよ」

「そうですね」

 モグモグとオハギを食べる白い女学生。

 僕も白い女学生に作って貰ったオハギ弁当を食べていました。

「一億円の事は誰かに話しましたか?」

「いや、誰にも」

「そうですか。では気をつけてください。あなたを取り巻く状況はかなり最悪ですよ」

「最悪?」

「だって、あるはずの一億円は巾着袋の中に入っていて取り出せないのですから。それを手に入れるまであなたは痛め続けられる可能性があります」

「はあ、まあ」

「巾着袋は持ってますか?」

「う、うん」

「まあ、何かあったときは、一億円がそこから出てくることを祈りましょう」



 放課後、生徒会室。

 僕は生徒会長に呼び出されて生徒会室に行きました。

「失礼します」

「こんにちわ。入ってください」

 生徒会室には生徒会長が一人窓際に立っていました。

「待っていたわ」

「あの、今日はどのような事で呼び出されたのでしょうか?」

 カツカツカツと生徒会長は僕に近づいてきました。

「聞いたのだけど、君、誘拐されたんだって?」

「ええ、まあ、ちょっと」

「なんか、一億円要求されたとか聞いたのだけど」

「ええ、まあ」

「ふーん、君の家ってお金持ちなの?」

「いや、そんな事はないです」

「それじゃ、なんで一億円も要求されたのかしら」

「いやー、何ででしょう?」


 生徒会長はくるりと僕に背中を見せて窓の方に歩き始めました。

「ねえ、私、ミステリー小説とか好きなのよね」

「はあ、そうなんですか」

「そう。事件とか、誘拐とか、殺人とかそんな謎を解いていく小説とかよく読むの」

「はあ、そうなんですか」

「そう。学園生徒会陰謀物とかも好きなの」

「へー、学園陰謀物ですか?」

 生徒会長は僕に振り返るとニコリと笑いました。

「ねえ、質問だけど。学園陰謀物に出てくる生徒会は一体何をたくらんでいるのかしら?」

「え?いやー、どうなんでしょう。会長が読んでる本ではどうなんですか?」

「それがね。読んだこと無いのよ」

「え?」

「学園陰謀物って」

「はあ?」

「ミステリー小説はよく読むのだけど」

 生徒会室には沈黙が流れました。


「だから、まず、手下が欲しいなって思ったの」

 生徒会長はまたの直ぐ近くまで歩いて来ました。

「ねえ、あなたの一億円、半分私にくれない?」

 生徒会長は僕の背後に回ってそう言うのです。

「そうしたら、この学校の半分はあなたの物になるわ」

 生徒会長の指が背後から僕の頬を撫でました。

「いや、か、会長。その金で一体何をするつもりですか?」

 いつの間にかあたりは暗くなっていました。

 ピシャーン。ゴロゴロゴロ。

 雷がなりました。

「フフフフフ」

 会長の薄ら笑い。

「悪魔を呼ぶのよ」

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