第26話 一億円が消えた

「なんか凄く疲れている様だけど?」

 朝に学校で隣の席の女の子が僕に言いました。

「うん、まあ」

「どうしたの?」

「いや、僕の全財産が無くなってしまって」

「ふーん、どうしたの?」

「いや、ちょっと」

「ふーん、大変ねえ」


 前夜、僕は白い女学生に連れられて賭博をしてきました。

 そこでかなりの大金を勝ち取りました。

 そして、その大金を使って大きな買い物をしました。

 その買った物の1つが巾着袋でした。

 僕はその巾着袋の中に賭博で勝った残りの金を入れました。

 一億円ほど。

 巾着袋は小さいのに常識を無視してドンドンと金が入りました。

 僕はその巾着袋に買った刀も入れました。

 刀は巾着袋の深さの5倍は長かったのですが、手品でも見ている様に巾着袋の中に入りました。

 僕はその巾着袋を持って、白い女学生に手を引かれて、またあの知らない道を通って家に帰てきました。

「一億円!」

 僕は家に帰り自分の部屋に入ると笑いがこみ上げてきました。

「一億円!」

 僕は巾着袋に手を入れました。

「あれ?」

 僕の手には何も触れませんでした。

 僕は肩まで巾着袋の中に入れました。

 肩から先の腕が無くなった様に見えました。

「ええええ!何だこりゃ?」

 僕は巾着袋を逆さにして振ってみたりしたのですが、何も出てきませんでした。

 巾着袋を覗いても、巾着袋の中には暗闇があるだけでした。

「どうなってるんだ・・・」


 僕の2万円は一晩で13億5千万円になり、そして一晩で全部無くなりました。

 空っぽの巾着袋を残して。


 放課後。

 僕が教室を出ると廊下で白い女学生が僕を待っていました。

「バイトにいきましょう」

 白い女学生が僕に言いました。

「あの、昨日の巾着袋なんだけどさ」

 僕は白い女学生に言いました。

「はい?」

「あれって、何なの?」

「ああ、あれは何でも入る便利な巾着袋です」

「いや、けど、入った物は出てこないとか?」

「いいえ、そんな事は無いでしょう」

「いや、昨日の金が取り出せないんだけど」

「そうなんですか?」

「うん」

「ちょっと見せてください」

 僕は巾着袋を白い女学生に手渡しました。

 白い女学生は巾着袋に手を入れました。

「あら?本当ですね」

「ねえ、どういうことなの?」

「わかりません」

 白い女学生は僕に巾着袋を返しました。

「良いじゃないですか、あんな大金は今要らないでしょう」

 白い女学生は長い髪からギロリと目を覗かせて僕を見ました。

「まあ、そうだけどさ」

「さあ、バイトにいきましょう」

 白い女学生は僕の腕を取って歩き始めました。

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