第23話 賭場で勝ちすぎる

「命が欲しければ、負けなければならない」

 僕はそう思っていました。

 しかし、目の前の札束はさらにゾゾゾと増えてしまった。

「はい、入りました」

 僕の向かいで合力の声が上がりました。

 僕は手持ちの6枚の札の内の一つ、4の数字の札を床に伏せて置きました。

 そして、その前にぞぞぞと札束の山を動かしました。

 僕の周りの人々の目はその札束の山を見ていました。

「はい、勝負!4」

 僕は札をめくりました。

 僕の前に前の6倍ほどの札束が詰まれました。

 たぶん、3千万円ほどの札束が。


「あまり勝ちすぎない様に」

 白い女学生がそう言ってこの場所を出て行ったのが、20分ほど前でした。

「ちょっと用があるのですが、すぐに戻ってきます」

 そう言って白い女学生はこの場所を出て行ったのでした。

 その時に、僕は白い女学生に預けていた2万円を返して貰いました。

「これで、少し、遊んでいてください」


 白い女学生が出て行ってから僕は目の前で行われている博打を見ていました。

 それは6つの数字から1つを当てるだけの簡単な物でした。

「ささ、はったはった」

 しばらくして、目の前の鬼のように大きな男と目が合いました。

「見ているだけじゃ怒られるかもしれない」

 僕はそう思って、とっさに1万円と3の数字の札を前に出しました。

 数字札とお金をはる度に僕は勝ちました。

 そして2万円が100万円ほどになったとき僕は興奮しました。

 しかし、それが500万円ほどになったときに、すでに場は殺気に包まれていたのです。


「はい、入りました」

 僕は4の札を置いて、目の前の3000万円ほどの札束を前に押し出しました。

「ここで、一気に負けてしまおう」

 今まで2回連続で同じ数字は出ていませんでした。

 僕は緊張しました。

 僕の押し出した札束を見て、方々で感嘆が起きました。

 すぐに場には気合で殺す様な空気が流れました。

「はい、勝負!4」

「ほおお」

 周りから声が上がりました。

 僕の前にはドーンと札束が増えました。

 1億5千万ほどに。

「ここで止めたら、殺される」

 僕はビビリ抜いていました。

「白い女学生は何処に行ってしまったのか。早く帰ってきて欲しい」

 僕はそう願いました。

 早く早く帰ってきてくれ。


「はい、入りました」

 場のみんなが僕を見ていました。

 僕はまた4の札を置いて、目の前の1億5千万円ほどの札束を前に押し出しました。

 もう誰も何も言わずにじっと僕の札と胴元を見ていました。

「はい、勝負!4」

 僕は伏せていた札をめくりました。

 誰も声を上げませんでした。

 場は静かなまま、僕の前にぞぞぞぞぞと札束が移動してきました。

 8億5千万円ほどの。

「ああ、絶対に殺される」

 僕はダラダラと汗を流して途方にくれていました。

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