第21話 集金人が来た
「こんにちは」
放課後、僕と白い女学生が学校の門から出ると、男が話しかけてきました。
僕は僕に声をかけているのではないと思い、男を無視して通り過ぎました。
「ちょっと、金角さん、金角さん」
「え?僕ですか」
「ええ、そうですよ」
男が僕に近寄ってきました。
「私、こういう者なんですけどね」
男は僕に名刺を手渡しました。
「集金人?」
「ええ、そうです。トイチの10万円の期限が今日ですから集金にうかがいました」
「ああ、それは今日これから店に行こうと思っていたんです」
「いえいえ、わざわざ店まで行かれなくても私がちゃんと集金にきますのでね。あなたは大事なお客様ですから」
「はあ、そうなんですか」
「ええ、そうなんです」
僕は財布から3万円取り出しました。
「えーっと、今回は3万円だけなんですけど」
男は3万円を受け取ると、1万円だけを取り、2万円を僕に返しました。
「じゃ、今回は利子の1万円だけで良いですよ」
「え?」
「まあまあ。お金が要る事も多々あるでしょう」
「いや、けど、利子だけだと、10日後また1万円の利子になるんでしょう?」
「それはそうです。けど、今私に3万円払っても1万円払っても10日後の利子は1万円ですよ」
「えーっと?それはどういう・・・」
「あれ?知りませんか?10日後の利子は元金の1割です。残高が100円でも10日後には1万円の利子がつくんです」
「ええ!そうなんですか?」
「ええ、そうなんです。ですから、10日に一度1万円払ってもらえれば、この10万円は何時までも借り続けることができます」
「はあ」
「それではまた10日後にきます。ありがとうございました」
集金人の男はそう言うとスタスタと行ってしまいました。
「大変な金を借りてしまった」
僕はつぶやきました。
「ねえ、金さん」
白い女学生が僕に言いました。
「これからその2万円を増やしにいきましょう」
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