第20話 伝説を作るのなんて

 気がつくと、僕は暗い中を白い女学生に手を引かれて歩いていました。

 先ほどまでの惨劇はどこか遠くに遠ざかっていました。

 暗い中に白い女学生の白い影だけが見えました。

「あれ?ここは?」

「裏道です」

「裏道?」

「はい」

 僕は白い女学生に手を引かれて歩き続けました。

「裏道では、私以外の誰に話しかけられても話し返さないようにしてください」

 白い女学生が僕に顔を向けて言いました。

「わかった」

 白い女学生が僕の顔を見続けていたので僕はそう言いました。

 白い女学生はまた前を見て歩き続けました。

 僕たちはまたずーっと歩き続けました。

 すると、電灯がある四つ角に出ました。

 右に行く道も左に行く道も真っ暗でした。

 僕たちはそこを曲がらずにまっすぐに進みました」

「えーっと、お銀さん?」

「はい?」

「今、僕たちはどの辺を歩いているのかな?」

「半分ほどです」

「あ、半分ほどね」

 僕たちはまたずーっと真っ直ぐに歩き続けました。


「つきました」

 僕が気がつくと、また前と同じように近所の神社の前に来ていました。

「今夜は楽しかったです」

「えーっと、それはよかった」

「さよなら」

「えーっと、さよなら」

 白い女学生は神社の方に帰っていきました。

 僕が携帯電話の時計を見ると午前2時半でした。


 日曜日に僕はテレビで昨夜の惨劇のニュースを見ました。

 しかし、そこには宇宙船も巨大ロボも化け物も居ませんでした。

 街の破壊はガス爆発が原因だということでした。


 月曜の朝の学校。

 僕は自分の席に着くと隣の女の子に話しかけました。

「えーっと、大丈夫だった?」

 彼女はGOレンジャーピンクで、土曜の夜の戦闘ではGOレンジャーも被害は大きかったはずです。

「ねえ、あなた、私に話しかけないでくれない?」

「え?そんな、なんで?」

「土曜の夜はあなたのせいでひどい目にあったわ」

「いや、その、ごめん」

「まったく、あなたみたいな何も知らずに厄介ごとをまきちらす一般人が一番性質がわるいわ」

「おお!生きていたか金角!」

 クラスメイトが僕の所にきました。

「無事だったか。よかった」

「あの後、命からがら逃げ出してな。君を探したが居なかったので心配したぞ」

「僕は銀角さんに助けられたんだ」

「そうか、よかった、死んでなくて」

「まったく」

「それにしても、土曜は凄い夜だったな。君は一夜で伝説を作り上げたぜ」

「伝説を作るのなんて一夜あれば十分だよ。ははは」

 僕の隣の女の子が僕を睨んでいました。


 放課後。

 僕が教室を出ると白い女学生が立っていました。

「あの、これをあなたに」

 白い女学生は小さな紙袋を僕にくれました。

「えーっと」

「開けてみてください」

 僕は紙袋を開けました。

 中には黒いお守りが入っていました。

 黒いお守りには白い蛇の絵が描かれていました。

「これを大事に身に着けておいてください」

「これを?」

「はい、私だと思って」

 僕は黒いお守りの白い蛇の絵を見ました。

「さあ、一緒にバイトにいきましょう」

 白い女学生が僕に言いました。

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