第9話 女学生と昼飯を一緒に食べる

「なあ?」

「なによ?」

「2万円のことは聞いといてくれた?」

「うん、調べとくって」

 僕は教室の自分の椅子に座り、隣の女の子に話しかけていました。

「それでさ」

「なによ?」

「何かもっとバイトとかあるかな?」

「うーん、そうねえ。あ、それじゃあ、ほら、あそこのレストランしってる?」

「レストラン?」

「そうそう、あそこに行って見なさいよ。募集してたわよ」

「レストランね~。いや、もっとバーンと一気に稼げるのが良いんだけど」

「そんなの無いわよ。コツコツ働きなさい」

 キーンコーンカーンコーンと予鈴が鳴りました。


 昼休み。

 僕は食堂に昼飯を食べに行きました。 

 僕はカレーを食べていました。

 突然、学友達の話す声が消えました。

「あれ?どうしたの?」

 周りを見ると、みんな僕の後ろの方を見ていました。

 僕は後ろをふり向きました。

 そこには昨日僕が家まで送ってあげた白い女学生が立っていたんです。

「これを」

 白い女学生は紫の風呂敷に包まれた何かを僕に差し出しました。

「えっと?これは?」

「昨夜のお礼です。一緒に食べましょう」

 白い女学生は僕の隣の椅子に座りました。

「どうぞ」

 紫の風呂敷包みを渡された僕はそれを開けました。

 すると、そこにはオハギが包まれていたんです。

「どうぞ、食べてください」

「あ、じゃあ、いただきます」

 僕はそのオハギを食べました。

「どうですか?」

「あ、美味しいです」

 白い女学生はキュッと赤い唇を吊り上げてニコリと笑いました。

 それは昨夜彼女が見せたような怖い笑みではありませんでした。

 僕がカレーとオハギを食べている横で、白い女学生は小さなおにぎりを2つチマチマと食べていました。

 学友たちはそれを不思議そうに見ていました。


「美味しかったです。ごちそうさま」

 僕がそう言うと、白い女学生はまたキュッと赤い唇を吊りあげてニコリと笑いました。

「ありがとう。じゃ、僕はこれで」

 僕は食堂を出て教室に帰りました。

 学友に何か言われると僕は思っていたのですが、誰も白い女学生について僕にたずねませんでした。


 放課後になりました。

 僕が教室を出ると白い女学生が立っていたんです。

「また、一緒に帰りましょう」

 白い女学生は僕に言いました。

「えっと?えーっとですね。今日はちょっとバイトの面接に行こうと思っているんで・・・」

「それなら、私も一緒にそこにいきます」

「えええええ?いや、しかしですね」

「一緒に連れて行ってください」

 そう言って白い女学生は僕の顔を見上げました。

 その時に、初めて長い髪からギロリと白い女学生の目が見えました。

「そ、そうですか。それじゃ、えーっと、一緒にいきましょうか」

 僕はついついそう言ってしまったのです。

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