第8話 白い女学生を家に送る

「送ってくれてありがとう」

 生徒会長は彼女の家の前で言いました。

「じゃ、その子もちゃんと送ってあげてね」

「はい」

「じゃ、さよなら」

 生徒会長は家の中に入っていきました。

 僕と白い女学生は生徒会長の家の前に立っていました。


「えーと、君の家はどっちの方なのでしょうか?」

 白い女学生は指を差して教えてくれました。

「じゃ、いきましょうか」

 先に歩く僕のすぐ後ろを女学生は歩いていました。

 四つ角に来るたびに僕は白い女学生に道をききました。

 すると、僕も知っている近所の神社の前につきました。

「ここですか?」

 白い女学生はコクリとうなずくと、暗い神社の鳥居を通っていきました。

 それから白い女学生はすぐに振り返って、僕においでおいでと手招きしました。

 僕は白い女学生に付いて神社の中に入っていきました。

 神社の本社の横を抜けて少し行くと、もう本当に真っ暗でした。

 その真っ暗な中に白い女学生の白い影がボウっと浮かんで見えます。

 僕はその白い影だけを頼りに暗闇を歩いていました。

 もう何処を歩いているかもわかりません。


 突然、白い女学生が立ち止まりました。

「ここです」

 白い女学生が初めてしゃべりました。

 そこには小さな小屋の様な家がありました。

 家の中には囲炉裏でもあるのか、火の明かりが灯っていました。

 シャーッ、シャーッ、シャーッ、シャーッ。

 家の中から刃物でも研いているかという音がしました。

「ええと、ここですか。じゃ、僕はこれで」

「お待ちください。これを持って行ってください」

 白い女学生は僕に何か手渡しました。

 暗くて何を渡されたのか分かりませんでした。

「それでは、ありがとうございました」

 ニコッと笑った赤い唇がキュッと釣り上がって彼女の白い顔に浮かび上がりました。

「じゃ、さよなら」

 僕は恐ろしくなって走り出しました。

 真っ暗な中を今来た方向だろうと見当をつけて走りました。

 走っていると、僕のすぐ横をガサガサと音を立てて何かがついてきました。

「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ」

 僕はそう唱えながら走り続けました。

「うわあああああ」

 僕は叫びながら走り続けました。

「神社神社神社神社!」

 神社が見えました。

「もうちょい、もうちょい、もうちょい」

 僕は命からがら神社にたどりつきました。

「怖い怖い怖い怖い」

 僕はそのまま家まで走って帰りました。


「今日は遅かったのね?」

 母が言いました。

 僕はハアハアと息をついていました。

「あれ?それは何?」

 母にそう言われて、僕は自分の手に握っている物を見ました。

「ええええ?なんだよこれ!懐中電灯!?」

 僕は力が抜けてバタリと仰向けに崩れ落ちました。

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