第4話 金の特攻服

 家の前に止まった30台の族車。

 特攻服を着た人達が沢山いました。

 僕のクラスメイトが玄関の前に立っていました。

「おっす、迎えに来たよ」

「おお・・・」

「今日は隣町まで新しく服を買いに行くから、みんなに付いて来て欲しくてさ」

「多いね」

「おう、多い方が楽しいからさ」

 僕はクラスメートの運転するバイクの後ろに乗って隣町まで行きました。


 商店街通りの真ん中に一列に止められたバイクは壮観でした。

 その商店街の片隅に目的の服屋はありました。

 クラスメートの彼が店に入ったので僕も彼に付いて入りました。

「いらっしゃーい」

 なんだかやさしそうなおじさんが店員でした。

 店の中を見回すと、特攻服や日の丸などが目につきました。

 クラスメートは族仲間と特攻服を色々と見ていました。

 何もすることが無く僕は店の中をグルグルと見回していると、店のおじさんと目が合ったんです。


 店のおじさんが話しかけてきました。

「ねえ、君」

「はい?」

「君は特攻服着てないけど、持ってないの?」

「はあ、持ってないです」

「ああ、そう?あー、そうだ。じゃ、ちょっと待ってて」

 と、おじさんは言って店の奥に下がりました。

 しばらくすると、何かを持って出てきました。

「これなんだけどさ。どう?買わない?」

 それはキラキラと光る金の特攻服だったんです。

「え、これですか?」

「うん、ちょっと着てみてよ」

「はあ・・・」

「うわー!店長!これは凄いっすね!金ですか!まぶしい!」

 クラスメートがよってきました。

「うん、俺の新作なんだけどね」

「うわー、お前これ買うの?うらやましいな~」

 クラスメイトが興奮して僕に話しかけてきました。

「え?いや、今日はちょっとお金が無いんで」

「いいよ、今日一割払ってくれたら、ヨイチで良いよ」

「え?ヨイチですか?」

「店長、俺達まだ学生ですよ」

「おお?そうか?じゃ、トイチで良いよ」

「トイチですか?」

 着せられた特攻服を鏡の前で眺める僕。

「あのー、この後ろに書かれた”金閣”ってのは?」

「おう、それが今回の売りでさ。この金の特攻服を着たら、今日から金閣を名乗れるっていうね。オプションが付いてるのよ。どう?」

「はあ、金閣ですか・・・」

「うわ!良いな~これ。買いだよこれ。ねえ、先輩これは買いでしょ!」

 他の族もよってきました。

「おう!これは買いだな」

「でしょ?」

「はあ」

「良し!これは君に売ったよ!じゃ、一割でまず1万円払ってもらうからね。トイチの利子で」

「一万円ですか」

「うん」

「じゃ、これで」

 こうして僕は金の特攻服を手に入れたんです。


 晩の食卓。

 僕はお父さんと話しました。

「ねえ、お父さん」

「ん?何だ」

「トイチってなに?」

「トイチってのは10と1のことだな」

「お金を借りる話なんだけど・・・」

「まあ、トイチでお金を借りたら10日で1割の利子が付くんだよ」

「というと、利子の一割が1万円だと、元は10万円なのかな?」

「そうそう。そんな金に手を出したら人生おしまいだぞ。絶対にそんな金は借りるなよ」

「うん」


 僕は早々にバイトを探さないといけなくなりました。

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