第11話「発出のE」


「お二人さん、ゲームで決着つけるってのはどう?」


 楽しそうな様子のミナーシャ。人差し指を立ててニコッと笑みを見せる。そんな彼女に寺義は眉を歪める。


「ゲーム?」


「そう。この訓練室には対ビジター用の戦闘シミュレーターがあるのよ。それを使ってより多く倒した方が勝ちってのはどう?」


「ミナ!何を勝手なことを言っているのですか?」


 そんな発言に、暁彦が声を荒げる。一面真っ白の空間に声が響く。


「いいじゃないリーダー。寺義くんは紫音と同じでビジターに狙われちゃう体質なんでしょ?だったら今ここでビジターとの戦闘を体験しておくのは得策だと思うよ?」


「しかし…」


 ミナーシャの言葉にも一理あり、思わず言葉に詰まる暁彦。


「いいですよ。やりますよその勝負」


 と、そこで賛同の声を上げたのは寺義。その口調は明らかに苛立っている。そんな彼に全員の視線が集まるが、本人は紫音しか眼中にない様子だ。


「寺義くん!」


 暁彦が制止の声をかけるも、寺義は表情を変えない。無言で紫音を睨みつける。


「いい度胸ね。私も構わないわよ。どうせ勝敗は見えてるけどね」


 対する紫音も引く気は一切ないようで、鋭い視線を返す。周りをそっちのけで、今にも殴り合いそうな勢いで睨み合う両者。


「はぁ。もう何を言っても無駄のようですね」


「そゆこと。じゃあ始めましょうか!」


 そんな様子に暁彦は諦めを含んだため息を吐く。反対に、ミナーシャは笑みを見せ、部屋の壁に設置されている端末に駆け寄る。


「あ、そうそう!折角だしチーム戦にしようよ!私は寺義くんと、煉は紫音とチームってのでどう?」


「別にどっちでもいいわよそんなの。要はコイツをボコボコにして、二度となめた口きけなくさせてやればイイだけだし」


「お前!」


 ミナーシャの提案そっちのけで再びいがみ合う二人。


「はいはい!それじゃチーム戦でオーケーってことで!」


しかしミナーシャは一人で話を進めていく。


「…くだらん」


 そんな様子を見てか、今まで無言を貫いていた煉が声を上げる。それでもミナーシャは気にした素振りを見せない。


「ほら煉もそんなこと言わないで!あ、アルとリーダーは審判ね!」


「やれやれ。もう好きにしてください」


 一人で盛り上がっているミナーシャに対し、暁彦はご勝手にとばかりに一歩引く。


「それじゃ行くよ!用意、スタート!」


 と、勢いよく宣言したミナーシャ。それと同時に、端末に手をかざす。その瞬間、部屋の中央に三つの異形が現れる。何もないただの白い空間だった部屋の中央に、音も無く出現した。


「えっ!!」


 茫然と固まる寺義。その視線の先に映るのは、辛うじて人の形を成している異形。彫刻のように全身が真っ白であり、無数の手と足を生やしている。その表面には幾何学模様。


 うねうねと生物のように有機的な動きをしながら、金属のような無機質な光沢を放っている。見間違えるはずもない。あの白い化け物、ビジターである。


「寺義くん!何ぼうっとしてるの?」


「でもあれ、本物のビジターじゃないですか!!」


 ミナーシャの声で我に返った寺義は、必死の形相で異形を指さす。そんな様子を見てミナーシャはクスッと笑う。


「あれはただのホログラムだよ。立体映像って言えばいいかな?攻撃を受けても怪我することはないよ。ただし─」


 そこで言葉を止めるミナーシャ。寺義が疑問に思った瞬間─


「ちょっと痺れるけどね」


「え?」


 寺義の目の前に異形が移動してきた。それは一瞬の間であり、移動ではなく転移と呼ぶにふさわしいものだった。


 眼前の異形は寺義よりも一回り大きく、表皮のうねりや血管のような脈動がはっきりと確認できた。その姿は近くで見るとより一層気味の悪いものだった。



な、なんだよコイツ!あの時と同じで本当に気持ち悪い!この迫力、本当に立体映像なのか?



 思わず固まる寺義を余所に、ビジターはその拳を振り上げ一気に振りおろす。4本に枝分かれした腕が寺義に叩き落とされる。ミナーシャの言った通り、不思議と痛みは無かった。が─


「うっ!!」


 全身に電流を流されたかのような痛みが走り、思わずその場に膝をつく。


「ほら!情けない声出してないで!実践なら死んでたよ?」


 と、ミナーシャが手を差し伸べる。寺義はその手を不機嫌そうに握って立ち上がる。


「先に言ってくださいよ!」


 怒りを露わにする寺義に、ミナーシャは「ごめんごめん」と短く謝る。


「というかあんな化け物、どうやって倒せばいいんですか?」


 ビジターから距離を取ったところで、寺義が疑問を投げかける。


「体の周りにある壁みたいなの見える?青い半透明のやつ」


 そう言ってビジターを指さすミナーシャに従い、寺義も視線を向ける。その視界には、確かに青白い膜のようなものが見えた。ビジターを取り囲むように存在しており、うっすらと視認できる。


「シンリさんから説明があったと思うけど、あれが情報障壁。まずはアレを破壊しないとこっちの攻撃は全く届かないんだ」


「どうやって壊すんですか?」


 ミナーシャの説明に再度疑問を投げかける寺義。


「それはね」


 尋ねられたミナーシャは待ってましたとばかりの笑みを見せ、ビジターに向かって駆け出す。その速さは常人のそれを軽く超えており、寺義は一瞬遅れて彼女が駆けだしたことを認識した。


「こうやるの!」


 一気に間合いをつめたミナーシャはナイフを取り出し、ビジターの展開する障壁の前で一閃する。すると、その部分がガラスのように砕け散る。


「ほら寺義くん!今のうちにコイツをナイフで!今回は刃は起動させないでオーケーだよ」


「え?ああ、はい!」


 その光景を茫然と見つめていた寺義はミナーシャの声で状況を理解し、彼女と同様にビジターに駆け出す。と同時に、真理から受け取った黒いナイフを取り出し、鞘を引き抜く。


 そしてセーフティを外さずに柄を握り、ミナーシャの開けた障壁の穴に刃を通す。


「そうそう!そんな感じ」


 その刃はビジターの胴体に線を刻む。そんな様子に満足そうなミナーシャ。しかし、ビジターに付いた傷はみるみる内に埋まっていく。


「全然効いてないじゃないですか!」


 そんなビジターの再生能力を目の当たりにして声を荒げる寺義。しかし、ミナーシャは冷静だった。


「そんなことないよ。十分な足止めになった」


 その言葉を発した瞬間、ミナーシャの目つきが一転する。先ほどまでの笑みは消え、打って変わって冷たく、貫くような青い瞳をビジターに向ける。


 そして素早く、洗練された動きで一閃。その一撃でビジターの足が全て切断される。床との接点を失ったビジターは体勢を崩し倒れる。


「…凄い」


 感嘆する寺義。しかしミナーシャの攻撃はまだ止まらない。倒れたビジターの首元でさらに一振り。間を空けず、ビジターの頭が胴体から離れる。


 その一連の動きはあまりにも洗練されていた。無駄のない動きに合わせ、真っ赤な髪を揺らし、冷徹な横顔を見せるミナーシャ。その姿は一種の芸術と言える程に美しく見えた。


「とまぁ、こんなもんかな」


 ホログラムの消滅を確認したミナーシャは、何事も無かったように最初の明るい笑顔を見せる。


「今みたいに、ビジターは情報障壁を展開しているし回復能力まで持っているの。ディヴァインが無いと障壁は破れないし、瞬間移動もしてくる。コイツらのヤバさが良くわかったでしょ?」


 その言葉に無言で頷く寺義。彼の胸中には、確かにビジターへの恐怖があった。しかしそれにも増して、目の前の少女への畏怖が大半を占めていた。


 一瞬見せた恐ろしいほど冷たい表情、そして人間離れした動き。寺義にしてみれば、ビジターを一瞬で倒してしまう彼女の方が恐ろしく思えた。


「あちゃ~先越されたね。向こうはもう2体目だよ」


 そんな思いを知らないミナーシャは、相手チームである紫音と煉へ視線を向ける。つられて寺義も視線を向けると、そこにはビジターのホログラムと戦う二人の姿があった。


 攻撃を紙一重で躱す紫音と煉。そして反撃する煉。その拳一振りでビジターの腕を吹き飛ばす。一方の紫音は突然姿を消し、ビジターの背後に現れる。


「なんだあの動き」


 紫音の異様な動きを見て唖然と呟く寺義に、ミナーシャが口を開く。


「あれは座標転移だよ。ディヴァイン製の内部アーマーを装着していれば、ビジターと同じように瞬間移動できるの。ただ扱いが滅茶苦茶難しくてね。戦闘中に使えるのは紫音とリーダーくらい。私も使ってみたけど、壁に埋まりそうになったり酔ったり…最悪だったよ」


 そう言ってミナーシャは落ち込んだように笑うが、すぐに表情を戻す。


「まぁそんなことより、私たちも行くよ!」


「そうですね。負けたくないですから」


 その言葉を発端に、二人は駆け出す。そして紫音と煉が交戦中のビジターへと肉薄する。


「ちょっと!邪魔しないでくれる?」


 突然の乱入者に紫音が苛立ちを見せる。


「"より多く倒した方が勝ち"。横取りしちゃいけないなんてルールはないよ紫音!」


「その通りだ。ルールくらいしっかり覚えておけよ」


 が、ミナーシャと寺義は不敵な笑みを返す。そんな二人に紫音の表情が歪む。


「……よく分かったわ」


 そう呟いた瞬間、紫音の姿がその場から消える。そして疑問に思う間もなく─


「うぐっ!」


 寺義の腹部に衝撃が走る。体をくの字の曲げて一気に吹き飛ぶ。4メートルほど飛び、地面に叩き付けられたところで、紫音に蹴り飛ばされたことに気付く。


「ちょっと紫音!?」


「別に"相手を攻撃しちゃいけない"なんてルールも無かったわよね?」


 驚くミナーシャを無視し、紫音は仁王立ちでお返しとばかりに笑みを見せる。そんな紫音を睨みながら、寺義は腹部を押さえて立ち上がる。


「くそ…やってくれたな…」


「遅すぎ」


 しかし、再び転移した紫音の拳が顔面に直撃し、寺義は顔を抑えてその場に崩れる。


「ほら、早く起きなさいよ」


 そんな寺義を、紫音は目の前で見下ろす。挑発された寺義は拳を握りしめる。この時まで、紫音に本気で殴りかかったことは一度もなかった。


 寺義はいつも紫音に対し適当に相手をしていたため、殴り合うまでの問題には発展したことはなかったためだ。しかし、今回は違った。



コイツ…何度も何度も殴りやがって!!いつもいつもなめやがって!!こっちが我慢してやってるってのによ!!ふざけんなっ!!



「この野郎っ!!」


 ついに拳を振るう寺義。しかし、その場所にはすでに紫音はいない。


「だから遅いって言ってんの!」


 今度は背後から強烈な蹴りが命中し、最初とは逆方向に吹っ飛ぶ。さらに追撃しようとする紫音。そこに─


「紫音、やりすぎだよ」


 と、ミナーシャが腕を掴んで制止させる。紫音は乱暴に腕を振りほどき、ミナーシャに怒りの表情を向ける。


「はぁ?アンタには関係ないでしょ?これはウチの問題。弱いくせにいきがる犬は躾けてやんないとダメなのよ」


 ミナーシャにも喧嘩腰に迫る紫音。その姿を見た瞬間、寺義の中で何かが外れた。


「お前…」


 寺義は自分でも驚くほどに低い声を出して立ち上がる。ゆらゆらと立ち上がるその姿は不気味で、激しい怒りで歪んだ瞳が紫音に向けられている。



もういい

もう許さない

今までは散々我慢してきた

何度も何度も何度も何度も

でも本気でやり返したことはなかった

キレそうになるのを何度も我慢してこらえてきた

だけどもういい



 爆発する怒りを抑えられなくなった寺義は、無意識のうちにセーフティレバーごと黒いナイフを握る。その瞬間、ディヴァインが起動し刃から赤い光が放たれる。


 それは余りにも醜悪な色で、血のようなどす黒い赤だった。それを見た瞬間、ミナーシャとアルが驚愕の表情になる。


「寺義くん!やめて!」


「寺義さん!それはダメですよ!」


 しかしそんな二人の制止の声も、最早届いてはいないようだった。


「へぇ?そんなもの出してどうする気?」


 対する紫音は態度を変えず、見下したように言い放つ。ただ、その表情はなぜか少し和らいだようにも見えた。この時の寺義には、その理由はわからなかった。


 そして睨み合う二人。一歩間違えれば本当に切りかかりそうな寺義。そんな二人の間に、突如として煉が割って入る。


「……」


 無言のまま、寺義に視線を向ける。それは獣のように野性的で、冷たい視線だった。


「煉さん?」


「ちょっと煉!邪魔しないで!」


 そんな煉に疑問の声を上げたアルと、突然の乱入者に不快感を示す紫音。しかし、煉は全く動きを見せない。黙って寺義を見つめ続ける。


「…何ですか?そこをどいてください」


 視線を受けた寺義は苛立った口調で煉に声をかけるが、煉に動きは無い。代わりに一言、煉の口から短い言葉が発せられる。


「お前は弱い」


「っ!!」


 それは決して侮辱するような口調では無く、淡々と事実を述べるようなものだった。だが、今の寺義には強烈なほど胸に突き刺さる言葉だった。寺義は言葉を失ったように固まる。


弱い?コイツは今、俺を弱いって言ったのか?俺は弱い……?


「そのナイフは飾りか?」


「煉さん!挑発してどうするんですか!それはディヴァインナイフですよ!」


 鬼気迫る表情で声を荒げるアル。そんなアルを、暁彦が片手で制する。


「まぁアル君。私たちは手出ししないでおきましょう」


「でもリーダー!!」


「大丈夫ですよ。ここは煉くんに任せましょう」


 そう言って暁彦は穏やかな笑みを見せる。その顔を見て、アルは渋々引き下がる。


 争いを好まないアルの性格であれば直ぐにでも止めに入るはずであるが、今回は暁彦の一言で傍観を選んだ。それは暁彦に対する信頼の厚さを物語っていた。


「ガキだな」


「…何だと?」


 挑発する煉の言葉に、寺義は顔を歪める。



コイツも俺を馬鹿にするのか…?

コイツも敵か…?

コイツも敵だ。

紫音もコイツも、みんな俺を馬鹿にする敵だ。



 寺義の怒りに呼応したように、握るナイフからさらに強い光が発せられる。それは周囲の真っ白な床を、まるで血だまりのように赤く照らし出す。


「攻撃する度胸もないのか?」


「……」


 必要以上に挑発を続ける煉。彼の真意は不明だが、寺義は黙って睨み返すだけだった。動かない寺義を見て、煉は背中を見せる。


「話にならない」


 そう言い捨てると、煉は出口へ向かう。その後ろ姿を見て、寺義の中で何かが蠢く。



コイツは敵だ。

俺を馬鹿にする奴だ。

だったらどうする?

敵は倒さないと。



 寺義の周囲を照らす赤い光。その光を見ていると、寺義の中で何かが語りかけてくる。



紫音も、コイツも、みんな倒さないと。

倒すってどういうことだ?

倒すってのは、簡単なことだ。

これを刺せばいいだけだ。

刺す?

そうだ。

刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。刺せ。



いや!!ダメだ!!



「コレは使ったらダメだ…」


 その言葉と共に、寺義は自分の中で湧き上がる感情を消し去るようにナイフを手放す。床に落ちたナイフは先ほどまでの赤い光を失い沈黙する。


 その様子を見た暁彦が感心したような表情を見せ、ミナーシャはホッと胸を撫で下ろす。


「ほぉ、感情に呑まれなかったみたいですね」


「寺義くん…良かった」


 しかしそんな二人の呟きは届いておらず、寺義は煉の背中に声をかける。


「待てよ」


 振り返った煉が見たのは、こちらに向かって拳を構える寺義。その姿をみた煉は、


「…来い」


 とだけ言葉を発した。その瞬間、寺義は煉に向かって走り出す。地面を蹴り、一方通行の弾丸のように頭から突っ込む。対する煉は構えは見せずに、力んだ様子もなく体だけ寺義へと向ける。


 その姿は一見無防備に見えるが、なぜか寺義には恐ろしく感じられた。



この感じはなんだ?隙しかないように見えるけど、攻撃するのが怖い。まるで誘導されているみたいに、どこに攻撃しても反撃を受ける気がしてしまう……。

ただ立っているだけなのに、勝てる気がしない。いやダメだ!気持ちで負けるな!やってみなきゃわからないじゃないか!!



「はああああ!!」


 勢いそのままに、拳を放つ寺義。それは決して速いとは言えない拳。煉にとっては避けることなど容易なものだった。しかし煉は避けず、己の手でそれを受け止める。乾いた音が響き、煉が寺義の拳を握る。



受け止められた?いつ?手を動かした様子なんて無かったはず!それに、くそっ!!なんだこの握力は?めちゃくちゃ痛い!!

くそっ!!全然振り解けない!!くそっ!!



「く…!」


 煉の力は凄まじく、寺義は拳が握り潰されるのではないかという錯覚を覚えた。振り解こうともがく間に、煉の空いた方の拳が放たれる。その一撃は素早く、殴られたことすら気づかない程だった。


 遅れて、強烈な痛みが沸き上がる。さほど強い拳には見えなかったが、奇妙なほど的確に体の中心を捉えおり、全身に痺れのような痛みが走った。


「あが…」


 鳩尾を強打された寺義はその場で糸の切れた人形のように崩れ落ち、ヒンヤリとした床の冷たさが頬に伝わる。


「くそ……くそ……」


 立ち上がろうと手足に力を込めるも、ダメージが体の芯まで通っているため再度床に崩れる。



なんだ……これ?体に全然力が入らない……!!ダメだ……痛すぎて立てない……。くそっ!!動けよ!!くそ!!



「寺義くん!!大丈夫?」


「大丈夫ですか寺義さん!!」


 ミナーシャとアルが駆け寄る。立ち上がることさえできない寺義は悔しさに歯を食いしばる。



なんだよこれ……紫音にやり返すどころか一方的にやられてるだけじゃないか。紫音にもアイツにも全然歯が立たない……。全く相手になってない。

アイツの言った通りだ……俺は弱い。誰にも勝てない……。あんだけ言われておきながら、こうして床に倒れていることしかできない……くそ……くそ……。



「ちくしょう……」


 うずくまる寺義の視界には、去っていく煉の背中が映っていた。






















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る