高校三年生編

立て続けにバイトが続いていて、やっとこさの休みの日なのについついつ朝6時に起床。


(暇だ…。)


そう思った俺はTSUTAYAに行き、mihimaru GTのCDを買って帰ってきてコンポで聴きながら暇をもてあそんでいた。


特になにもないままに12時間もたち、夜7時過ぎ。

暇すぎて眠たくなって寝てしまう。



パッ!と急に目覚めて、部屋の電気つけて携帯を覗く。


11時過ぎ…メールが一件来ていた。

ミナミからだった。


メールを返信すると待ってましたと言わんばかりに即電話がかかってくる。


「なんや?」

「もしもし?キッツン寝てた?」

「おー。」

「今なぁ、【リョウヤ】来てんねん。一緒に遊べへん?」

リョウヤは一個下のツレだ。見るからにヤンチャな子。

キークンの知り合いの弟なので仲良くなった。

「え?リョウヤ来てん?珍しいなぁ。まぁ行くわ。」


寝ぼけ眼でチャリを漕ぎミナミの家へ。



ミナミの部屋に入ると、先に酒が目に付く。

「なんや?飲んでんかお前等。」


そう言いながら俺も混ぜてもらう。


なんかミナミが熱く語っとる。

「…大丈夫やって。なんかあったら俺が出てったるから。こっちが悪いんやったら、一緒に頭下げたるし、シバかれたるから。」


(何を物騒なこと言ってんや?)


「なんの話なん?」と俺が言うと

ミナミが説明しだす。


「リョウヤの彼女と元彼とリョウヤがゴタゴタやねん。」

「なんで?」

「元彼からリョウヤが彼女とった形になってるんやって。」

「へぇ。それでモメテんのな。」

「だからなぁ。呼び出し来てんねんってさ。せやから俺も行ったるで!って言うてたんやし。」

「(なんでお前がでるねん。)あっそぅ。俺も着いていったろか?シバかれんのはゴメンやけど。」


「なんか懐かしぃよなぁ。」

「何が?」

「ほら、中学ん時モリモトと喧嘩したやん?」

「(なぜその話がでる?)まぁ、俺は殴られっぱなしやったけどなぁ。笑」

「あん時、もうちょっとやったのになぁ。」

「いや、先生止めに来んかったら、俺は負けてたと思うな。パンチも足も速いし。」

「うん。まぁ懐かしいよなぁ。」

「(もしかしてリョウヤにカッコつけたいんか?ミナミは。)」


微妙なとこで話は終わり、3人でゲームをしだした。

みんGOLやらなんやら…


リョウヤは寝て

俺とミナミは相談しあったり話し合っていた。


朝7時過ぎ。完全にシラフに戻り、リョウヤも起きて満場一致でマクドへ行くことになった。


リョウヤとミナミは金が無かったが、俺は金があった。

「しゃーないなぁ。スマイル一つ!って言えたら奢ったるわ。」

と、端から奢るつもりやったがネタで言ってみた。


マクドへついた俺らは注文しだす。

「んだらねぇ~。コレとコレで…コーラで。」全員の注文が終わりかけたときミナミが口を開く。


「あ、それと後ねぇ。スマイル一つ。」


スムーズに頼むな。間髪入れずにツッコんでしまいそうなぐらいに。


「あ、ありがとうございま~す!」

と女の店員さんが苦笑いで笑ってくれる。


思わず吹き出し笑う俺。


リョウヤも「あ、俺も!」

「あ、ありがとうございま~す!」


さらに吹き出す俺。

息ぴったりやなお前ら。


とりあえず注文したものを食ってタバコを吸っていた。



マクドからミナミの家に戻ってきた俺らは寝る。



そして夕方4時過ぎにミナミに起こされる。


どうやらスズキくんから電話が来て、みんなでドライブ行こうって誘われたらしい。


スズキくんがおっちゃんの車セフィーロで迎えに来る。


あれ?

初心者マークが着いていない…。


聞いてた話では免許取って七日しか経っていない。


やる気か…。


とある山に行きたいとスズキくんが言う。


原付の走り屋ミナミのチームのホームコースらしくミナミがナビをする。


山に着いてスリルドライブがはじまる。


免許取り立てとは思えないぐらいのハンドルさばき。

安全確認も怠らない。

初心者マークを着けないだけある。


第三者から観ても完璧な運転だった。


しかし相手は山。

いくら安全に運転してても、右に曲がれば次は左、左に曲がれば右。振られまくりなかなかハードだった。


ハンドル振ってチョケテきたり、ブレーキをポンポンふんでチョケテきたり

そんな中、ずっと頭ん中で考えてた事がある。


車あれば気軽に誘えるし、遠くにだっていける。

チャリじゃ誘うのも抵抗あるなぁ。と

アシモトを誘うには?どうする?と考えていた。


ミナミに言うたら

「逆にチャリやから良いんちゃう?2ヶやったら密着度高いし。笑」

密着度関係なしにどうなんやろうか?


そんなたわいもないことで悩む俺が昔から嫌いだった。



【きよしこの夜】



昼辺りに目覚めた俺はサトシと遊ぶ。


俺らはトレンタに向かう。

トレンタでのんびりコーヒー等を飲んでいた。


ミナミを呼び出し、トレンタがある公園(元は競輪場と噂されるデカすぎる公園)で遊んでいた。


チャリ二台で俺とミナミが一台ずつ乗り

サトシが仁王立ちでチャリの荷台に乗る。

右足はミナミのチャリに。左足は俺のチャリに。


これで発進。案外楽しい。

ふざけまくってて、はたから見ればアホらしさ満載だったに違いない。


それでも楽しんだモンの勝ちやと言わんばかりに俺たちははしゃいでいた。



夕方頃。

俺とミナミは学校に向かう。高校中退のサトシはトレンタで待っていると言っていた。


学校はすぐに終わり、ミナミは用事らしく学校に残り、俺は急いでトレンタへ向かった。


トレンタの前のベンチにサトシの姿があった。

「おぅ!お待ちぃ…。」

と元気よく行くつもりが、目の前の光景にビックリして言葉が詰まる。

サトシの横には制服姿のハッサンがいた。

「よぅ!何してんの!?」


どうやら、高校のツレに呼ばれたんやけど、誘われた時間まで暇を弄んでいるらしい。

ってな訳で3人でだべっていた。


トレンタのカウンターに3人で座って居た。

もうじきツレに会いに行く時間らしく、会話がそればっかりになる。


「あぁ…一人で行くのツマンナイわぁ。」

ハッサンが遠回しなことを言う。

要するに俺らに着いてきて欲しいわけだ。


仕方ないから俺らは着いていくことにして

3人で駅前へ向かった。

電車でちと距離と時間と金をかけ集合場所へ。

しかし、浜のツレはまだバイト中らしく

俺らはスーパーの中に入り、ドデカいテレビが置いてある休憩場みたいな所のベンチに座り「きよしとこの夜」と言う番組をみていた。

ハッサンは氷川きよしが好きらしい。


何時間たったのだろうか…もうじき閉店ですよ。

そんな時、ハッサンのツレが来る。

簡単に挨拶をして俺らは外にでた。


裏口に向かい俺らはだべる。

ハッサンのツレはどこかへ行きハッサンも着いていった。

俺とサトシはタバコを吸いながら暇を持て余していた。


また何時間が過ぎていた。

ハッサンも用事が済んだらしく俺らは何事もなく帰っていった。




【好きです】


最近、体の調子が思わしくなかった。

たぶん気持ちから来てるんだろうと薄々分かってた。


飯がろくに食えんかった。どれだけ寝ようが疲れが抜けなかった。


モヤモヤしたものがひたすら付きまとってきてた。


「春だから…」と内なる自分が優しく言ってくる。

その日、バイトから帰ってきて学校行って帰ってきて、疲れたからソッコー寝た。


夢を見た。


アシモトが出てきた。たわいもないことで笑いあって。

楽しく過ごしてた。


アシモトの笑顔が好きだった。

でもその笑顔が痛かった。


眩しい。光が見えた。


「朝か…。」


携帯のアラームを6時にセットしていたんだがまだ鳴った形跡がない。


でも、もうすぐ6時だ。朝飯食って準備をしなければならない。今日もバイトだ。


寝覚めの悪い朝だ。

重い体を起こして準備をした。



バイト先について淡々と仕事をこなしてるのは分かったが、ひたすら頭でアシモトの笑顔が流れ続ける。

まぶたを閉じてないのに目の前にはアシモトの笑顔が。


バイトが終わる時間が来た。次は学校だ。

電車に揺られ学校へ向かった。


ツレ等が盛り上がってる。いつも通りだ。


しかし俺はシケテいた。

こんな態度じゃ悪いなと思ったが駄目だった。


家に帰ってきて寝るのが嫌だったが次の日もバイトに学校なので、音楽を聴きながら眠りについた。



俺は

それだけアシモトを想ってる事に気づいた。

それが逆に痛かった。




【記憶?夢?】


前に誘われてたのでサトシは俺の家に泊まっていた。


昼過ぎに俺らは起きて集合場所へ。


俺の記憶じゃ誘われたのは女2と男2で遊ぶと言う単純なものだった。

サトシが「誰か紹介して」と中学時代の女友達?にメールしたのがきっかけで、なぜか俺は巻き込まれた。


俺はただの付き添い。


軽く挨拶をして映画を見に行く。

ジムキャリーが出てる映画だったので俺はそれだけを楽しみにしていた。


4人で映画を観る。


なかなか面白かった。

女達は「イマイチよく分からんかった」と言っていたが…。


俺とサトシはタバコを吸ったり、本屋に行って時間を持て余していた。

なんか、女達は買い物に行ったらしかったので。


日が沈み始めてた頃。

俺らはカレー屋CoCo壱番屋に向かった。

俺は腹減って無く、3人がガッツリ食べてるのを観ていた。


すっかり食い終わった頃。

「この後、どうする?」と誰かが言ったのがキッカケで、まだ春なのに花火をすることになる。


最近は便利なもんだ。

こんな時期でもコンビニには花火が置いてある。袋詰めになっている花火を皆で買い


公園でやり始めた。

チラホラと周りの他人も花火で盛り上がっていた。

やっぱ同じ事を考えてる奴もいるんだなと

実感した。


俺は火をつける役やったり、ネズミ花火や、トンボで遊んでいた。


花火はすぐになくなり最後まで取って置いた

ドラゴン系の縦に噴射する花火をやり始めた。


上へ上へと向かう花火を眺めて俺は、あの日の一部を思い出した。




何をやっても楽しかった時期だ。

毎日が楽しすぎて、記憶はバラバラになっている。

皿が落ちたときのように。粉々のバラバラに。

それを拾い集めようと俺はしなかった。


また次の日も、その次の日も


幸せな時間が待っていると思っていたからだ。

しかし明日が不安になり始めた頃。


バラバラになっている皿をそっと、拾い始めた。

でも、幸せが怖くて

その 一つの欠片を拾うのが精一杯だった。


それは岸和田の花火大会が行われている中学1、2年の時の欠片。


…何故?俺のママチャリの荷台にはアシモトが乗っている。

アシモトは浴衣を来ているため、またいでは乗っていない。

左に両足が出ている。

俺はその両足に物が当たらないように気を使っている。


でも、ガツンと当たった感覚がサドルから伝わった。

「あっ!?ゴメン!」

申し訳なさそうに俺は謝っている。


俺の周りには数台のチャリが。よく観れば全員ツレだった。

他に2人乗りできるチャリがあるじゃないか。何であえて俺の後ろなんだ?


しかし怖くて、欠片を拾えなく、そこで記憶は途切れた。



【ぶつぶつ】


右手にブツブツが出てきた。めっちゃかゆい。

でも、簡単に治るやろうと思ってた。


次の日。

バイトの為、6時に起きるが、両腕と顔面が腫れだした。かなりかゆすぎた。


バイト先に連絡を入れ、病院へ。

予約いれてる訳がないので、かなり待たされる。


何時間かたち、俺の番が回ってきて調べてもらう。

「あぁ~何かに かぶれてるなぁ。山かどっか行ったか?」

山などに行く理由がない。


とりあえず塗り薬と飲み薬をもらい、俺は家路につく。


飯食って風呂入って、薬を使用してバイト先へ。

電車の中とかでいつもより目線を感じていた。

(なんなんやろ?)


そう思いながらバイト先へ着いた。

バイト先のロッカーに付いている鏡を見てみると顔が真っ白だった。

(塗り薬のせいか…。)

だからみんな観ていたんだなと気づく。バイトをいつも通りこなしていた。


俺の後ろには機械がある。正方形の板を丸に切る機械。

その切るための特別な刃物をイカツイ社員の【イワガミ】くんがいじっていた。


「あっ!!」


と言う声が聞こえたが、俺は仕事に夢中になっていた。


顔を真っ赤にした岩下くんが俺の横を通り過ぎる。


(ん?)と思った。


右手で左手を押さえながら横切ったからだ。

なんとなく岩下くんが通った地面を見てみると


血が。


とっさに機械を見ると血だらけになっている。

俺は走って社長に言いに行く。


「社長!イワガミくんが!」こっちに歩いてきてる岩下くんを指さす。


社長は異変に気づき、走ってイワガミくんの方へ向かっていった。



イワガミくんと仲の良い社員さんは休憩室へ向かっていった。


俺は何も出来ないが休憩室へ走って行った。


イワガミくんは大量にマキロンを吹かれていた。

地面は真っ赤っか。

地面の下地が全然見えないくらいに。大量出血していた。


指からはミが出ていて、あらぬ方向を向いている。

休憩室は鼻に着く臭いが充満している。気が変になりそうだった。


俺がボーっとしているとイワガミくんは社長に車で近くの病院に連れて行かれた。


その後、俺は仕事再開。奥さんは涙ぐみながら血の処理。


今日は何から何まで悲惨な日だった。



【邪魔者】


明日は飲み会や……すげー楽しみにして生きてきた。

アシモトもいるし。


その日バイトをしていたが気分悪くなり昼過ぎに帰ってきた。

作業着のまま横になり、知らぬ間に眠りについた。


四時過ぎにアラームで目覚めて学校に向かった。


ぬるい風が体にまとわりつき俺はなにかを感じた。

この風は、あまりすきじゃない風だった。不安にさせる風。


今日は何かある。


そう思いながら授業を受け、10時過ぎに帰ってきた。

作業着を着替え集合場所へ。

もう、みんな集まってた。


そこにまじりみんなで飲みだした。


楽しかった。


このまま楽しく朝を迎えるはずだった。




あいつ等が来なければ。




飲みはじめてからそれなりに時間がたち、皆が皆が酔いもいい感じに回っていた。


ワイワイガヤガヤが、一瞬で静まり返る。


俺らの和の前を原チャリ2ケツが二台通りすぎる。

えらい近くをこっち向きながら通りすぎていくので、暗がりでも何となくわかった。


たぶんヤンキーグループやなと。


そして、戻ってきて「エルモだよ!」と裏声出してで通りすぎていく。

たぶん、おちょくっている。俺はそう思っていた。

関わったらめんどそうやな。と大人しくしていると

また戻ってきて「エルモだよ!」


イラッとしても我慢していた俺をよそに、ツレのひとりが真似をする「エルモだよ!」


やめろや。と言うまもなく、奴らはこちらへ向かってきた。


「こんばんわー!なにしてますん?」

「のんでんねん。」

「僕らも混ぜてよー!」


え?からんでくるんじゃないんや。


同い年ぐらいの男3人とギャル1人が輪に入ってくる。


こちらの女子達は避けて違う場所へいった。


皆でダベりながら飲み出すと、何故か奴らからの案で、罰ゲームつきじゃんけん大会がはじまった。

最悪や。女子達はなんか機嫌悪く離れて、あっちで喋りながらこっちを伺ってるし


こっちも同年代の男として引くに引けんくなってるし。


罰ゲームはなにか?

負けた奴が服を1枚脱ぐ罰になった。


言われるがままスタート。


相手の男が負け、1枚脱ぐ。

ツレが負け、脱ぐ。


そして、相手の女が負け1枚脱ぐ。

さらに続けざまに脱ぐ!

シャツとパンツ1枚になり、シャツをひっぱりパンツを隠しながら続行。


まてまてまて!見ても嬉しくないし、こっちの女子たちの視線がいたい!

そして、ここまでくるとさらに引けん!

んで、いつ終わるんなこれは!


と考えていると俺がまける。

くっそー!脱ぎたくねぇ!と思ってしぶっていると

「こっち、女も脱いでんのに恥ずかしくないん?」とギャルに言われる。

別にやりたくてやってへんし、お前のなんか見ても何もないんじゃカスが。


と思いながらも、男として悔しいから上を脱ぐ。

が、立て続けに負ける。


クソッタレが!「よっしゃー!どないじゃ!」と叫びながらパンツになる。


しーーーん。


みんなの冷めた目よ……。

俺はこんなんしにきたんちゃうぞ。アシモンらと飲みたいんじゃ。


結局、まばらに負けて奴らは満足したのか帰っていった。


しかし、長々と時間かかってしまい、女子たちには呆れられる。


「いや!別に楽しくないけど、引くに引けんからさ!」と説明したが、

「よっしゃー!とか盛り上がってたやん。楽しくないんやったら断って帰らせればいいのに。」と言われ


え?自分ら逃げたくせにえぐない?と思いながら、腹が立ち俺は帰った。



【老け顔】



学校がある駅前に着いたとき、何かの署名を集めているようで、おばちゃんとねぇちゃんに呼び止められる。


まぁ時間あるし、何かだけ聞いてみるかと思うや否や、食いぎみ早口で説明をかましてくる。


「えっとですねー子供のことでうんたらからんたらなんたらかんたら」

んん?なんて?ん?


聞き返そうとすると

「ご結婚はされていますよね?お子さんは何人ほどいらっしゃいますか?」と聞かれる。



「ちょっとまって!俺、17才!髭生やしてるし私服やけど、俺こー見えて今から学校!」


と言うと凄い驚いた!って顔でこちらをガン見しながら「ご、ご、ごめんなさい!」と謝り去っていった。



昔からポリに声かけられるときにお父さんと言われたり

コンビニで酒タバコは止められたことないし


初対面の年上に37才と言われるし。



俺どんなけ老けとんねん。




【キツイキツイ】



TSUTAYAにでもよって、学校いこうかなと外出の準備をしていた。

部屋を出て廊下から、リビングと母親がおる部屋の方を見ると、昼の3時も回っていると言うのにカーテンを閉めきっていて真っ暗だった。


これはやばいな……。


感覚でわかるぐらい慣れている事だったが、嫌なもんは嫌だった。



「……た…………けし…………たけ……し。」

消えかかりそうな微かに俺を呼ぶ声がする。


「…………どないした?」分かってはいるが確認しながら、襖がキッチリ閉めきられた、真っ暗な部屋へ入る。


「…………。おかん…………死んでほしいやろ……?」

「……そんなことないで……。」

「……おかんなんか……いらんやろ……?死ぬわ……。」

「…………そんなこと言いなや……。」

「……………………。」



あかん。出るに出られへん。



おかんは一人で俺らを育ててきた。

人に頼るの下手くそで、自分だけ追い詰めて。朝から朝まで仕事して。



いつころからか、精神的に壊れてしまっていた。

精神科に通いつめているが、一向によくはならない。

なんなら酷くなってる気がする。

俺は中2ぐらいで、俺の家は変なんやと気づいた。


シングルマザー、鍵っ子、生活保護、旅行にいったことない、食べに行くこともない、マンモス団地住み、躁鬱病、統合失調症。


普通の家庭からしたらおかしいことばっかだった。


でも、俺はおかんが大嫌いだった。


「俺は生んでほしいなんていうてもない!」

「自分勝手に計画性もなく生んだんやろうが!ちゃうんか!」

「育ててくれたかもしれん!でもな!それは生んだお前らの責任やろが!アホか!」

「言いたいことある前に、ほんなら生むなや!ボケ!」


反抗期のときにボロクソ言うたことを思い出す。


回りの人、大人の人に「何を言うても母親やろ?仕事頑張って育ててくれたんやんか。そんなんアカンで」

と似たようなこと何回も言われるが、経験もしてないのに偉そうな事いうな!お前らには一生この気持ちはわからん!と毎回おもってる。


別に俺が特別にしんどい環境なんて思ってない。

ろくな飯くってないけど、ガリガリやけど生きてるし、好きなこともしてる。

遊べてるし、恋愛もできる余裕がある。


もっともっと辛くてしんどい人なんかこの世界中にいっぱいおる。

それを分かってるから我慢してる。


グルグルグルグルと考えているとインターホンが鳴り、ビクッと体がうごく。


玄関を開けてみると、おかんが仲良くしてるおっさんが焦った顔で立っていた。

「睡眠薬の入ってる袋5袋のんだらしいな!?」とまくりながら聞いてくるが知らんがな。

そう思ってる俺をスルーして部屋に入っていく。


なんか話し声が聞こえる中、自室でテレビを見ていた。

すると救急車があらわれ、おかんを連れていく。


俺は嫌な気持ちでいっぱいで、遅刻して学校へ向かった。




次の日



学校へ向かうため駅へ行く途中、ミナミと鉢合わせした。

そのまま向かおうとすると、中学の時付き合ってた加藤とスレ違う。お互いに気づいているはずだが、無視される。


くそったれが。昨日の今日でイライラする。

お前の浮気で別れたんちゃうんか。なんで被害者の俺がお前の噂でみんなからハブられて、中学いかれへんなるんじゃ。

くそが!くそが!!くぞが!!!!


なんやねん!俺の人生!

なんでやねん!おい!


学校で溶接してたが心は上の空で、誰もいない家に帰ってきて酒を浴びるように飲み、明日のバイト大丈夫かなと思いながら、知らぬ間に寝ていた。



また次の日


寝ぼけながら、落ち込みながらバイトへ向かった。

かなりハードに働いたが、たりない。

死ぬぐらい、殺してくれるぐらい働かせてほしかった。


そして学校へ向かい、友達が学校近くのコンビニ横でビールを飲んでいたので混ざって一緒にのむ。

相談せずとも、笑い合って飲んでるだけで嫌なことも忘れらせそうだった。


授業をうけ、晩飯休憩の時にもビールを飲んでいた。


もうどうにでもなれ。と思えたらいいのにな。





誰か助けてくれ……。




【さよならトレンタ】



創立記念日で学校は休みだった。


その夜の10時頃。


すっかり行かなくなっていたトレンタへ集合命令がかかる。



よくたまっていたときに、若い俺らが店で普通にタバコ吸ってるのおかしいとお客様からクレームがあり、

店先でタバコを吸うことになったが、結果は一緒だし

出たり入ったりを繰り返しているのは迷惑では?と思って、みんなに行くの控えようと話した結果

あんなに集まっていたトレンタには全く行くことがなくなっていた。



そのトレンタは本日をもって閉店に。


それで召集された。



ワイワイガヤガヤと過ごし、名残惜しくトレンタを後にした。

そのままの俺たちは15分100円の施設へ。


テルイ以外の女子たちはカラオケをしにいき、俺ら男どもはハシャギ回ってた。


そして、俺はバイトなのでみんなと別れ、そのままの足でバイト先へ。


寝てないし、アルコール抜けてないし、ふらふらで向かった。

しんどい。それが心地よかった。このまま倒れてほしいなと思った。


残念ながら倒れることなく、ハードにこなし、学校へ向かう。

授業をうけ、無免許で来ていた友達の車で帰る。


途中免許持ちの年上の女の子と交代して帰っていった。

その女の子は男勝りだか結構かわいい。

でも、お兄ちゃんは、森くんをボコボコにしたあの人なので、深入りはしないようにしていた。




【夏はすぐそこに】



夜、また皆で泊まりにいくかー!といつもの面子で集まって話し合っていた。

学校終わって途中から参加したからか、なんか思ったように輪に馴染めんくて、寂しい気分になった。


俺ってかまってちゃんで、寂しがりなんやろな……。改めて思う。


そして朝からバイトへ。


板をコンベアーに流していく作業をするときに

「板いっぱい流してきてくれていいけど、タケシは流れてきたらアカンで~」

とボケられ「あれやったら全然流れていきましょか?」と笑いあったり


「タケシ!お前は信号かっ!」と突っ込まれて

「なんでなんっすか」と半笑いできくと、全身のコーディネートを指差してカラフルすぎるやろと突っ込まれて、笑いあって


「タケシ!なんでこんなくそ暑いのにドカジャンきてんねん!」といわれ

「作業服かこれしかないんっすよー」と言うと「俺の服余ってるから使えよー!」と長袖頂いたり



次の日のバイトも


「この板よー滑るなぁ!」「そーっすねー。」

自分のハゲ頭を指差しながら、「これ擦り付けといたからかなぁ!?」と自虐され爆笑したり


休憩中に「みてみこれ!うちの子やねん!」と折り畳み携帯を見せられ、孫かな?ちょっと大袈裟に褒めとくかと、覗きこむと

「犬っすか!?かわいい!」と機転をきかし



作業中、カッターを忘れた俺は「カッターかりていいっすか?」ときくと

「ええよ!はい、俺の銘刀~♪」と渡される。

俺は苦笑いしながら受け取り、返すときに

「はい、銘刀~お返しします」と渡すと


「銘刀ちゃうねん!甘党~」と受け取られ苦笑い。



なんか、平和な日が続いて、いい気分だった。




半袖になった町中の人みて

花火が売ってるのをみて

うちわや扇風機をみて


夏がやって来ることを感じていた。




【なんちゃない日々】



学校へ向かう。

最近よくツルむようになった【イノウエ】に「今日あそぼうよ」と言われ

なにしよかー言うてたら釣りいくことになる。


学校帰り、イノウエの家に行き他のツレを待ってる間、イノウエは飯を食べ、俺は漫画読んでた。


そのあとイノウエにギター教わってると、ツレがやっとやって来て、夜中の一時過ぎ、釣り場へ向かう。



かなりの距離を自転車で走り、釣り場へ。

のんきに暗闇の中、防波堤で釣りをする。


当たりが明るくなってきた頃、寝ていたツレを揺すって起こし、場所をかえる。


越えてはいけないフェンスを乗り越え、大量の蚊に刺されながら釣りを続行する。



朝の8時ぐらいに俺は帰ってきて、イノウエからの電話を無視して眠りについた。


そして学校へむかい、1、2時間の授業は爆睡して

3、4時間目のプールの授業は水着がないし、めんどいからサボってプールサイドで遊んでた。


すると、上の子に次々とイノウエ達が落とされる。みんなも水着なく、私服だった。

それを爆笑しながら見てた。



そして帰ってきた俺はまた爆睡。



夜中の一時過ぎ。またイノウエと遊ぶことに。


オセロしたり、マリオをリアルに書いて色塗って二人で爆笑したり。


俺の貯めているプリクラを見て、好きな子どれよー?ユーいっちゃいな~とふざけあったりして


気がつけば昼過ぎまで寝ていた。

イノウエに起こされバイバイして、

タケダの誕生日を思い出して、タバコワンカートンかってバイト先へ持っていき


そのままの足で地元の教習所へ向かう。

前々から書いていたローン用紙を通し、ローンを組み、視力検査などをして、次回から通うことになった。

頭金だけで21000円もした。



そしてその足で学校へ向かう。


工業の授業の日だった。4時間授業を自由に工業っぽいことしていい日だったので

前々からバラして遊んでいる、モーターもエンジンもないゴーカートを二人で押し

一人は運転するって遊びを校内でしていた。



なんてない日々。


なんや言うても子供なんやな俺らは。




【せわしくなっていく】



バイトへ向かった。

社員の一人がなぜか急に帰り、バタバタした。


どうやら仕事を頼まれすぎて「んなにできるかー!」とぶちギレて帰ったらしい。

指切ったイワガミくんは復帰してた。


最近、仲良くしてくれてる【ヨシダ】さんに

「俺、元教官やから教習所に顔聞くで。メアドと番号教えといてよ」と言われ教える。



給料をもらって、ウキウキした反面、ローン代や携帯代など諸々計算して、落ち込みながら歩いて駅へ向かう。


その途中、黒い物体が先に転がってるのが見えた。

近くまで行くとカラスが引かれて死んでいた。

その上空をカーカーと2匹のカラスが回っていた。

悲しいのか?食べるのか?

命って呆気ないなと思いながらかえる。


イノウエが俺のユーホーキャッチャーで取った、リアルなバナナのスポンジ玩具に顔を落書きするだけして、ほったらかしていたので

それを片手に駅へむかう。


駅に友達が集まっていたが、そのなかに見知らぬヤツが一人いて、そのバナナの顔を向けて「こんにちわー(裏声)」といい笑わせながら学校へ。


そして授業を終え、同級生が買ったゼファーの音を聴かせてもらい、帰っていく。


明日から教習所だ。


人見知りで情緒不安定の俺は、一人でそういった場所へ行くのがスゴく苦手だった。




【重症】



教習に通いはじめて、毎日が慌ただしくて、しんどいながら第一学科が終わった頃。


イノウエと遊んでいた。


イノウエには夢がある。

洋楽のロックンロールが好きで、外国の人がカッコいいから憧れて、金をためて外国へ絶対にいく夢がある。

英語が出来なかろうが関係ない。

わざわざきつい仕事を探してきて、大金を稼ぐイノウエ。


夢があって、それを必死に追いかけるイノウエはかっこよくて

純粋にスゴいなって、俺ってしょぼいなと思った。


俺には夢がない。未来を見据えてもいない。


今をダラダラとただ生きているだけだった。




明くる日


今日は学校のボーリング大会だった。

近所のゲーセンで行われるので待ち時間の間

みんなでパンチングマシーンして遊んでいた。


飛び蹴りして、股間うって爆笑したり。


ボーリング勝負で負けた俺は飲み物おごらされたり。


教習所の辛さとか吹き飛ぶぐらい楽しかった。



明くる夜

スズキくんと遊んでいて、頭がグルグルグルグルしていた俺は全てを相談する。

頭の回転が早く賢いスズキくんは丁寧に全部こたえてくれて、かなり気が楽になった。


そして、朝

女友達から中学の同窓会が回ってきたんやけど、どうかな?とメールが回ってくる。


まったく呼ばれなかったこの俺に同窓会の誘いが!!

嬉しい!!!でも…………噂を流され嫌われものになり、不登校だった俺をいったい誰がまっている?

怖い。行くのが怖い。でも、すごく嬉しい。



行きたい。行ってみたい。




そして同窓会の日。


岸和田の樹里という名の、お好み焼きやへ。



俺は、隅っこで全く行くことがなくなっていた会話に入らずにいた。

声がでない。怖い。


俺は重症になっていた。

昔はふざけるようなキャラで人気者だった。

ちょっと悪くてモテたりもした。


それなのに…………。



見かねてか、昔仲のよかった子が話しかけてくれて、お好み焼きも注文してくれて

なんとか1日をやりすごした。


ありがとう。



【あれから1年】



またまたいよやかの里への宿泊の日。


卸売りに寄り、いつも通り酒などを買おうとすると、はじめて定員に止められる。

未成年のタバコ、酒が厳しくなり始めた頃だった。


仕切り直してコンビニへ行くと、すんなり買えた。


集合場所へ向かい、ダラダラと他のスコブルメンバーをまつ。


なれた手つきで迎えのバスに荷物を積み、ワイワイガヤガヤといよやかへ。


チェックインをし、またまた恒例の女友達らは可愛い浴衣をレンタルしにいく。


アシモンは部屋にある浴衣を着ていた。ちょっと残念。だが、まぁそれはそれで。



すぐ裏にある川へみんな裸足で飛び出していき年甲斐もなくはしゃいだ。


タツヤさんと先に戻ってきた俺は、誰よりも先に飲み始める。



ある程度落ち着き始めた頃、タツヤさんと風呂に入りにいく。

ただただゆっくり入って、疲れを癒していた。



そしていつしかビンゴゲームが始まり、担当していた子がわざわざ用意してくれた景品があたる。


指輪だった。


同じく景品の香水が当たったらアシモンは指輪が良かったらしく、交換する。


香水なんてつけるガラじゃないんだが、これを機会につけてみよう。


酒もだいぶ回りはじめて、去年来てなかったツレが、俺も王さまゲームやりたいと言い

今年もやることになった。



だいぶ下ネタが出始めた頃、神のいたずらか、褒美か

俺はアシモトとキスをすることになった。

みんながキスコールで盛り上がるなか、心臓が破裂しそうになりながらも

キザな俺を演じたい俺は、皆にはキスしてるように見える角度でほっぺにキスをする。


ホントに好きだから、遊びで出来なかったんだ。



男勝りのテルイと当たると、向こうからガッツリしてくれて、男の俺がなさけなくなったり。


そしてもちろん、アシモトと他のヤツが当たることもある。

でも、タケダは俺が好きな子を知っているために、理由を適当に考えてくれて土下座して無効にしてくれたり。


でも、他のヤツに美味しいとこ取られて、ドンドン気分が落ちていく俺は

一人で酒をあおりまくり、玄関に座り込んですねていた。


知らぬ間に王さまゲームは終わり、寝てるやつや、喋ってるやつなど、さまざまにバラけていた。

アシモトともまともに会話できてないし、映画に誘ったけど断られたし


すごい気分がどんよりしていた。



そんな中、夏っぽく怖い話がはじまり、部屋が真っ暗になる。


視覚が弱くなると声がよく聞こえる。


アシモトと男が同じ布団で寝ころび話ていて、そこばかりに意識と目線がいく。

何事もないことを願いたいが、そんなことあるだろうか……。


各々怖い話をしていると、徐々に眠たさで離脱していく。


残すは俺一人になった。

アシモトらを横目でみて、端っこの方で寝転び目を閉じた。

しかし、すぐに尿意で起きる。

トイレへ行き戻ってくると、バラバラに寝ていて

これはチャンス!と思ったが、嫌われられるのも避けられるも怖い俺はビビって、また端っこにいった。



寝てまもなく、バイギングが始まったので各々食べに行く。

俺は食欲がなくて留守番していた。


タバコ吸いながらダラダラしていると徐々ひ戻ってきた。

元気に戻ってきた女の子と布団でも畳むか!となり、全てチェックインの状態に戻す。

いい気晴らしだった。


そして、ダラダラと過ごしてチェックアウトの時間になる。


帰りのバスで、みんなの集金した宿泊費が余ってるから、地元もどったらどっかいくかーと誰かが言ってたのを俺は確かに聞いたのだが

目的地につくと、皆帰っていった。

その金はいったい……。


と思いながら、乗り物に弱いハッサンがずっと吐いていたので、その場で付き添っていた。


なんとか復活して、ツレと二人のりで帰っていく。


歩きの俺を、女友達が寂しいやろ?とチャリを押してワザワザ送ってくれる。


俺の家の下に着いたときに、ワザワザわるいし暑いから、なんか飲んでいくか?と声をかけると笑顔で頷きあがってもらう。


俺の小学生のアルバムなどをみて二人でケタケタ笑っていた。




そして、次の日。


13時間ぐらい寝てた俺は朝5時に飛び起きる。

やば!バイトやバイト!

急いで食事をすまし、腹を壊しながら向かう。


バイト先でシートを扱ったときに、深く指を切り血まみれになる。

その血をみて、生きてる実感がわいた。




あの時俺が死んでたらどうだったんだろう。

この楽しく辛い日々もなにもなく、それでよかったと思えるのだろうか。


辛いこともあるけど、生きてて良かったのかもしれない。

そう思えてきた。


【人生最後の夏休み】


サトシが、引き離された静岡の母親と兄弟のところへ引っ越していって数日がたったころ。



朝起きて体調が悪いことに気づく。

これはたぶん風邪やな。と思っていた。


そんなとき、兄貴が来てたわいもない話をしていた。

兄貴の彼女の名前がアシモトと同じ名前だったのを知り

アシモトを思い出して気分が落ちていった。



そして、日に日に体調は悪化し、トイレへ行くときに倒れてしまい救急車で運ばれる。


病院でいろんな検査してもらってるときに、また別で救急で運ばれてきた人がいた。


どうやら飲酒運転で事故をしたらしい。

俺の体調悪いのなんか屁でもないな。と思いながら点滴を打っていた。



完治するまもなく、バイトへ。


定時の5時を回っても終わらない。

最近やたらめった残業が多い。環境になれた俺はイライラするようになっていた。


6時ごろに奥さんに上がっていいよと声をかけられるが、全然作業は残っている。


「ええっすよ。最後までやりきりましょう。」と言いたくもない台詞を吐いて、結局7時過ぎまで作業して後悔しながら帰っていった。


地元の駅についたときに、見知った顔が自転車に乗って踏み切り待ちしているのが目に入ったので、八つ当たりにおもっきり蹴り飛ばしたら「び、び、びっくりした!びっくりした!」と連呼される。



無視してそのまま家に帰った。

タチが悪い。



そのあともバイトに風邪に台風にで、人生最後の夏休みが終わりを迎えてしまった。


とくに何かしたとかもなく、終わってしまった。



良かったのかこれで。



【不安定】



だんじり祭が行われていた。


地元の行事だが、俺は興味なく、いつも通りの2日間を過ごした。


だんじり祭の度に憂鬱になる。

同級生は必死にだんじり引いて青春してるだろうし

岸和田の女は、祭りに熱い男達が大好き。


ツレたちもグループで見に行ってるやろうし。

俺は興味ないより、嫉妬や妬み。

朝イチから盛り上がってる声を家から聞くと、独りぼっちの孤独が凄く押し寄せてきて

寂しくて、悲しくて、怖くて。


憂鬱な2日間になる。



小学生の頃は友達と一緒に引いていて楽しかったのにな。

夜なんか皆で掛け声で盛り上がって、女も男もみんなで楽しんでたのにな。


なんでこうなった。




だんじり祭が終わった次の日。


グループのホームページを覗くと、誰かしら一緒に遊んでいたであろう書き込み。


誘われなかった俺は寂しくてメールで確認。



確認してどないなる?大人になった今思えば気持ち悪いことこの上ない。

誰が誰と遊ぼうと、まったく関係ないと思うし、逆効果やと思う。



【すっかり寒くなった】


いつもどおりスコブルメンバーと遊んだり

しょーもない文化祭の手伝いを頻繁にしたり



そのしょーもない文化祭に初めて参加したり



そんな日常が続いていて、季節はすっかり冬。



その日、バイトにいっていた俺は、学校があるので3時上がりの予定だった。


もうすぐ上がれる。と時計をチラチラみていた。

すると奥さんから「タケシくんごめん!今日忙しいからさ、5時までお願いできる!?」


おーーい!!学校や学校!と思っていると

「車で直接送っていくからさ!」と畳み掛けられる。


「わ……わかりました。」と5時まで働いた。



すると奥さんにかわって、俺が送っていったるよとヨシダさんが乗せていってくれることに。



学校へ向かってる車中で「タケシ、日曜日に鈴鹿サーキットに仕事いくんやけど、一緒にどうや?」と聞かれる。


俺が自動車科で、車好きなのを知っているので良かれで誘ってくれたのだろう。

嬉しいっちゃ嬉しいんだが、バタバタした日々を送っていた俺は出来ればゆっくりしたいなと思っていた。


だけども、せっかくの誘いを断るのも悪いのでお願いすることにした。




そして鈴鹿の日。


サーキットで走行会が行われるので、それのオフィシャルとして参加する形だ。

日当が出るのでアルバイトやな。


朝8時に起床し、集合場所でヨシダさんに拾ってもらい出発。

バイトなだけあって、ヨシダさんと二人なわけなく、俺の知らんひとをそれぞれ拾っていき、クラウンに男5人で乗る。


鈴鹿に着いた頃には10時を回っていた。


開始まで時間があるので、ブラブラと改造車やゴーカートレースをみて回る。


そして、走行会に来た方たちをピットに案内して、昼飯をくらう。


コーナー先でスリップしたり事故したりしたら、後ろからハイスピードで攻めてくる車へ危ないですよー!と注意するための旗フリをすることになる。


ここのコーナーはスリップしやすく、コーナーの先の状況もわからないポイントだった。


なんなくとこなしていくと、オイルを撒き散らしてる車を発見。


すぐにレースをストップさせて、オガクズでオイルを掃除。

まさかいつものバイト以外でオガクズを触ることになるとわ。


その後もスリップ続出して、旗降りまくってて、バタバタしてる間に走行会は終了した。



最後にクラウンに乗り込み、コースを掃除して、2000円の格安日給をもらい帰ってきた。



その頃にはすっかり辺りは暗くなり、6時を回っていた。2000円はえぐい。



そして飯を食べながら、明日からまた学校やな……とため息をついて眠りについた。




【在日交流会】


朝の8時に起床。


今日はワイワイフェスタという在日の方たちと交流しましょう。

と言うイベントに行くことになる。


いろんな在日の年の近いことたちが集まるようだ。


ハーフのスズキくんと、ミナミと行くことになる。


10時過ぎ、スズキくんの車へ乗り込みいざ今宮高校へ。


在日のみなさんが作った郷土料理を頂き、和太鼓やダンスなどの演目を観覧しおわって



最初にもらった名札に書かれていた番号でグループわけされる。


俺一人だけ全く知らんグループにほりこまれる。


完全アウェーの俺は、自己紹介してからボーッとしていた。

内心、おもんない。他人やばい。どうしよ。


となっているなか、ハンカチ落としゲームが始まるが、なされるがまま状態。


大人数いるなか、一方的に俺ばかり狙われ

罰ゲームをやらされまくる。


ハードゲイの物真似させられたり、一番恥ずかしかったことはなんですか?など


この頃の俺は対人恐怖症がひどく、すごく怖かったのに、みんなの視線が集まるなか立たされてやらされて、すごく嫌な気分になってしまった。



そして4時すぎ、車で送ってもらい

ガソリン代渡してかえった。



いくんじゃなかった。




【ナイトクラブ】



スズキくんにクラブ行こーよと誘われ、スズキくんのネーちゃんと一緒に行くことになった。


足回りガチガチでマフラー穴あいて、耳にふたせんとヤバイぐらいのちょーぜつ爆音の軽四で迎えにくる。


梅田へ向かうが、二人とも始めていくクラブらしく、迷いに迷って爆音を響かせながら走り回る。


足回りが固すぎて、車体は跳ねまくり、むっちゃ古い軽四で車内が狭すぎて、天井で何回も頭を打っていた。


結局、ネーちゃんの彼氏を呼び出し送っていってもらう。

走り屋の彼氏さんは運転めっちゃ上手かった。



そして、到着し

彼氏さんは車で寝て待ってるというので3人でクラブへ。


この頃はそこまで厳しくなくて、すんなり入れた時代だった。



初のクラブで俺は驚愕した。


音楽が爆音を通り越して、音楽いがいなにも聞こえない。

そしてタバコの煙か人の湿気か……一帯ボヤけてるし

満員電車のごとく、ギュウギュウ詰めにされ

女の人のいい匂いがしたり、おっぱいに手が当たったり……。


ナンパしまくってる男に、まんざらでもない女。

踊りまくってる奴がいれば、酒を持ちふらふらしてるやつ。



酒のまなやってらんねぇ!酒を飲み、ダンスセンスの欠片もない俺は、昭和の歌謡曲の踊りのようにひたすら体を左右に揺らし、頷いていた。


するとナンパされまくりながらネーちゃんが「キッツン全然おもしろくなさそうやん!」

と言ってきたが、本心すげー楽しかった。


ただダンスセンスないだけ!それと、俺はエエからそのナンパ無視してあげないで!





そして朝の四時頃、外に出た俺ら。

ネーちゃんはベロベロによっていて、警察官に「おつかれさまでーーーす!アハハハハハ!」と絡みまくりながら帰っていった。




【思い返す】



12月に入った頃。


雨が続いていた、なんてない日のこと。


いつものように学校へ向かう。


明日はテストのようで、大掃除だけして帰れる日だった。

定時制の俺たちはとくに全体掃除するわけでもないし、全日の子たちが毎日綺麗にしているので、大掃除と言うほどのこともなく

さらっとして学校をあとにした。



上の子と二人で、暇やから久々にゲーセンでもいくかー。

となり、歩いてすぐそこにあるゲーセンに二人で向かった。


一通り遊びながら、俺は思い返していた。



高校に入学したときは敵だらけで、仲間なんか全然いなくて、ヤンキーだらけで毎日がスリルとサスペンスで。


恐い上の子がいたり、ボコボコにされてるの見たり

シンナー吸って体からシンナー臭だしてる八奴おったり

原付二人のりでメットインにペットボトルシンナーつんで、売りさばいてる女の子おったり

工業高校ってヤバイんやなと後々気づいたり


普通にバイバイした奴も、次の日には顔面ボコボコになってたり


タバコ、サケ、カツアゲ、窃盗、傷害……なんでもござれの学校。



友達できだしてからは学校サボってここのゲーセンでキーくんらと遊んだり

夜な夜な飲みにいったり、悪いことしたり。



子供できたやつもおれば学校やめたやつもいて

長期休みを挟む度にどんどん人数は減っていき

恐い奴やヤバイやつもいなくなると同時に友達も消えていき


2クラスあった学年が半分いかになり、人クラスになった。



学年へ向かう電車、帰る電車。

あんなに賑やかだったに、今は俺一人。



ゲーセンの帰り道、上の子と

「卒業したら、きっとみんなバラバラになるな。」と話していて


俺らはもうすぐ社会に出て、慌ただしい毎日を過ごして大人になっていくんやなと実感した。



キーーンとひんやりと、どこか寂しい空気を感じながら俺らは帰っていった。



【高校忘年会】


今日は高校の友達たちで忘年会の約束の日だった。


昼前に起きて準備をして、集合場所へ。


キーくんと合流して、スーパーへ買い出しへ。


鍋をする予定なので、具材をてきぱきと集めていき、買い物おわるころにスズキくんが車でくる。


スズキくんの車へ全部積み込み、酒の卸売りへ向かう。


酒を大量に買い漁り、スズキくんの家へ。


キッチンをお借りして、キーくんは食材を切っていくなか、俺はひたすらつくねを作っていた。


スズキくんは車で他のメンツを迎えに出掛けた。



準備が一段落した頃に、いいタイミングで帰ってくる。



さっそく鍋を始め、乾杯をとり、学生最後の忘年会が始まった。




だいぶ時間がたち、大盛り上がりのなか

明日は仕事があるミナミが飲むのためらってた。


キーくんがなみなみに注がれたグラスをミナミに無理矢理持たせ

「なーんでもってんの?なーんでもってんの?ハイッ!飲み足りなからもってるの!!ハイッ!ノーンデノーンデ!ノーンデノーンデ!」

とコールをし出したのだが、ミナミがためらっているのを見た俺は「俺がかわりまーす!」とグラスをかっさらい

「おー!イッキ!イッキ!イッキ!」との声を右から左へ流し、目をぎゅっとつぶり飲み干す。


どうしてもミナミに飲ませたいキーくんは、ミナミの飲んでる途中のカンカンを新品とすり替えたりするので


俺の空き缶とすり替えて、俺が犠牲になったりしていく。




そんなこんなでベロベロになった俺。

ミナミが帰っていったり、他の奴が送られていったりをボーッとやりすごしていて


始めて喋る年上の女の子とたわいもない話してみたりして時間がたっていく。



そして朝の4時、残ってるメンツでカラオケへ。

部屋のなかを暴れまくって、歌えや飲めやのどんちゃん騒ぎ。

いかにも10代のクソガキって感じで楽しんでいた。



借りパクされた俺の中卒のアルバムを、キーくんに頼んで回収してもらっていたので

家に帰った俺は久々に見ていた。


誰これ?という顔が多く、俺がどれだけ学校に行ってなかったのかがよくわかった。




【学生最後の忘年会】



今日も学校へ向かうため地元の駅へ。


改札を抜けると、猫が1ぴきこちらへすり寄ってくる。

よしよし。と相手してあげると喜んでいた。

人懐っこいのら猫やな。

猫は寄ってくるのに、女は寄ってこんな……なんて思いながら、そこへやってきた電車へ乗り込み学校へ。


短縮授業なので、二時間で終わり

ミナミの単車に乗せてもらい帰宅。




そして夜11時頃、電話がなる。


「もしもし?キッツン、鍋パ中止になったー。」と地元のツレに言われる。


俺の家で、地元の忘年会で鍋パしよーとはなしていたのだ。


ショックながら電話をきると、すぐにもう一度電話がかかってくる。


「鍋パはなくなったけど、飲み会はするー。」後ろで複数のヒソヒソ声が聞こえる。

気に何ながらも「どこで?」

「キッツンの家。」ヒソヒソ。



そして電話は終わり、一人考え込んでしまっていた。


鍋パ中止になるのは何となくわかる。

でも、電話きってすぐにかけ直してきて飲み会はする?しかも俺の家で?


なんで、さっき言わんかったんやろ。


俺だけハブるつもりやったけど、寒さをしのげる場所が欲しいから俺の家にくるのか?

ヒソヒソうらで話してるのはそれか?



など、思考回路がネガティブな方へ回り始め、どんどん気分が落ちていった。





そんな気分のなか、バイト先の忘年会に呼ばれる。

学校をサボり、バイトをラストまでこなし

そのまま焼肉屋へ。

普通に楽しかった。前のバイト先とえらい違いやな。


終電はなく、車で家まで送ってもらい、朝方に駐輪場に預けてる自転車を歩いて取りに行った。


そして今日は地元の忘年会。


昨日の今日で二日酔いだが、身だしなみを整えて、卸売りで酒をかって集まるのを待っていた。


最初にカップルがくる。ラブラブな空気に心がくじけそうになりながら他を待つ。


みんなが集まった頃。


俺は無愛想かもしれん、感情だすのへたかもしれん。

だけど、みんなと遊ぶときは凄く嬉しいし、楽しい。

約束したら、その日まで向かって生きてる。


そー思っていると、

前の電話の件でみんなから謝られ、手土産をいっぱい渡される。


やっぱ、ただたんに俺の思い込みやったんやな。

俺の悪いとこやな。と思わされた。




みんなでだらだらと飲んでいた。


もうじき学生生活もおわって、慌ただしくなり離ればなれになって行く前に

俺はアシモトに告白するつもりでこの日を迎えていた。


酒が入ってる俺は積極的にいける。


コンビニにもスッと着いていけるし、寒がったら上着も貸せる。



だけど……だけど……



根性のない俺は告白のコの字も口に出せないままに終わっていった。





もう今年もあと少しだ。



【置いていかれる】



何もないクリスマスを凄し、遊ぶ約束してたキーくんにドタキャンはされ


凄く暇な日々を過ごしていた。



なんとなく。ほんとなんとなく。

中学時代カトウらとたまってた駄菓子屋の高田屋へ。


おー!と大袈裟な顔をおばちゃんにされ

「ひさびさやなぁ。引きこもりの息子も叔母ちも元気してる?」と世間話していると


おばちゃんの口から、カトウやらいろいろな懐かしい名前が出てくる。


そして、皆が皆が就職先も決まってるそうだ。



暇をも手余したり、恋愛や友達関係で悩んで毎日生きている俺は……



いったい何をしているのだろう。



みんな大人になっているなか俺はいったい。




【出会い】



邪魔物はいないし、卒業は近いし、就活もないし

たわいもなきことで笑いあったり、悩んだり

平凡であって楽しくもあるそんな日々をおくっていて

気がつけば2月になっていた。



学校は休みやし、バイトにせいをだしていた。


3時休憩の時。

ちょっとジュースでも買いに行くかと休憩室を出ると

表でイワガミくんが制服を着ている女子高生と思われること話していた。


なんだー?と思いながら通りすぎようとするとイワガミくんに声をかけられる。

「おー!タケシ!これ、うちの娘やねん!」


と急に紹介される。


まじか!あの噂の俺と同い年か!と顔をよくみると、なかなか可愛いやんけ。

どうやったら、あのチンピラみたいな風貌からこの子が生まれてくるんや?と思いながら


「そうなんすか!?ちわーっ!」といいながら通りすぎる。

恥ずかしがりか俺は。



そして次の日。


10時の休憩にイワガミくんに話しかけられる。

「おいタケシよ!昨日おうた娘とメアド交換したってくれよ!」と言われ

「えっ!?なんでっすか!?ぜぜぜぜ全然いいっすけど!!」と焦る。


メアドをイワガミくんと交換していると

もう一人の社員が横からチャチャいれてくる。

「タケシ!変なことしてぶち殺されんようにな!あっ!タケシやったら10回はぶち殺されるかもな!アハハハハハ!」

やめろ!余計なこといいなさんな!と思いながら苦笑い。


ヨシダさんか素晴らしい笑顔で「ワクワクすんな!」と言ってくる。何がや!


イワガミくんが腕をくみ目をつぶり頷きながら「まぁ、付き合うのはお互いのことやからなぁ。」と


まてまてまて!話し進みすぎい!




そんなこんなで家に帰ってくるなりメールがきて

お互いのことを話し合った。




【卒業】


卒業式の日。


みんなスーツでぞろぞろと集まり出す。

彼女つれてきたりと和気あいあいとしていた。


ただ、キーくんは卒業できなく、いつも通り私服で着てベンチに座っていた。


自動車科、電気機械科、普通科など学科があるのだが、自動車科だけくそ賑やかだった。

毎年、自動車科はうるさいそうだ。


卒業証書を一人一人酉にいくのだか、そのたびに「ひゅーひゅー!いいよいいよー!」と煽ったり騒いだり。


湿っぽくならずに、俺らは卒業していった。



帰りの廊下で俺は普通科の子をナンパしてメアド交換して

ツレらでミスタードーナツによった。

ミスタードーナツでさんざんナンパの事をひやかされ


スズキくんと俺は電車に乗り帰りだした。



スズキくんは、もう卒業したわけやし、学生じゃないから話させてほしいと言ってきた。



「俺、先生に惚れてるねん。」

優しくて若く見えるし可愛いと。

年が年やしなぁとかいうが、別に関係ないと思う。

ちょっとしたレストランに誘ってあるらしく、今度いくねんと話してくれた。


頑張ってくれよ。スズキくん。




そして家についた俺は、母親から寿司を頂き眠りについた。





卒業生宛にクラスみんなで色紙に一言書くのがあって、カラフルな文字にかこまれてる俺がそこに書いた言葉。




「一生懸命歩け。」




おわり




社会人編へつづく

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