高校二年生編


夜中の2時に目覚めてから一睡も出来ず、そのまま健康診断の為、病院へ。


不健康診断やな。と思いながら、採血の順番を待つ。


看護師さんの声が聞こえる「次のかたどうぞー!」

「はーい。」と言いながら向かう。


ちなみに俺は痛いのが大嫌いで、注射にいたっては最強に苦手だった。


「はーい!じゃ、どっちでもいいから腕出してな~」と慣れた手つきだこと。


俺は、あかん。言うとこ!と思い「ちょっとまって!あーーー俺、めっちゃ注射嫌いなんすよ!」と訴える。


「え?そうなん?血い抜いたら倒れるとかないでな!?」と俺の身なりを下から上から見る。

どうみても見た目は注射とか平気そうな奴に見えたと思う。


「それはまぁ、うん、そう、いけるとおもう!」とイケなさそうに返事する。


「んじゃまぁ、みらんように横向いといて!」と言われ

真横を向き、目をぎゅっとつぶり

「優しくしてなぁー頼むでー!」と言うと

後ろにいた看護師さん「優しくしてっ!」と全員爆笑。


「優しくは無理やな!」「マジか!頼む!」

「ほらいくで!ぐーして!」ブスッ!


いた!やっぱいた!


「ほんなら力抜いてー!いける?いたい?」


「もう全然いたい!」



と終わっていき、心電図などをすませ、

学校に向かうため駅でツレをまっていると



「今日休みやて!」と連絡がくる。



【定時制の体育祭】



体育祭があった。

全員参加の大縄跳びだけ、しゃーなしで参加。

そのあとはサボってボケーッと眺めてた。


それでも別に怒られへんし、誰もなにもおもわない。


体育祭だからって、かなり前から練習するわけでもないし、本気のやつもいない。

ドンキホーテで売ってるようなピカチュウの着ぐるみ擬き来て参加してるヤンキーや、流されるままに参加してるオタク。

あげくに男の割合の多さ。さすが工業。


観客なんか誰もいないし、雨が降ってる今回は狭い体育館で行われてる。

体育館で出来るぐらいに、しょーもないことしかしてない。

体育祭ってこんなんやっけ?


熱い戦いや、夜まで練習とか

かわいい子の体操服姿や、みんなで昼飯とかさ。

漫画やドラマとえらい違いや。


定時制ってほんまテキトー。そんでもって、現実ってすげーつまらんのな。


まぁ、俺が行ってきた結果がこれなんやろな。


ぼーっとしてて体育祭は終わっていった。



【このハメられてる感じなに?】



母親が近所のレンタル、ビデオ、本、など扱ってる店にたまたま寄ったそうだ。


そこの店先で、ガラガラ(片手で回して白い玉でたらハズレとかのやつ)がやっていた。


それを回して、金の玉が出る。

「おめでとーございます!」カランカランと金をならし、白地らしく喜ぶ定員。


何が当たったのか。


それは


「大当たりですよ奥さん!有線(店でよく契約してる、音楽チャンネル)を繋げる権利があたりました!」

「え?なに?よくわからんねんけど、当たったん!ラッキー!」と喜んだそうだ。


いやいや、まて。

繋げる権利ってなんな?


「月額、○○○○円でお繋ぎできます!」


いやいや、当たりでも何でもないやん。

ただの契約やんけ。

当たったと言うことにして、喜びで麻痺した状態で契約させてるだけやんけ。

そもそもおかしないか?なぁ?

と、おかんにあーだこーだと説明しても納得してくれず、そのまま契約した。


詐欺ではないんやろうけど、この手の結構みる。

なんか引っ掛かるんやけどおかしくないか?




【毛嫌いしていた子】


だいぶクラスメートは減り(辞めていった)


嫌な奴は消え、仲良かった奴も大半目の前から消えた。


そんな蒸し暑いある梅雨時、俺は遊びに誘われる。


ほんと久々な地元のツレ等。サワのグループだ。


ウキウキ気分で集合場所である地元の総合体育館前へ。

しかし、その時なんでか毛嫌いしてた女の子が居た。



でも喋ってみれば素直に良い子で、なんか雰囲気も変わってた。

なんで嫌ってたんやろか?それが頭の中を駆け巡る。


この誘いがきっかけで、このグループと頻繁に遊ぶようになる。




このグループとも仲良くなってきた。

そんな時。


サトシが俺が毛嫌いしてた女の子【アシモト】に恋をした。


俺は相談うけた。来る日も来る日も。


相談を受けると、アシモトを観なければならなくなったり、考えなければならなかったり


そのお陰で、アシモトの良い所ばかり発見してしまった俺は恋心を抱いてしまった。


しかし、サトシのためだ!と、自分に言い聞かし、極力考えないようにする日が続いた。




まだまだ夏の日。


俺らはなぜかグループ名を付けることになる。

いろんな案が出て


その当時、皆の口癖になりつつあった、すこぶる(もの凄い)と言う死語を由来に


スコーピオンブルーと言うグループ名が決まり、ホムペも作った。


このホムペで気軽に交流が図れるようになり、更に俺らの絆が強く、深くなったような気がした。


皆で泊まりに行かないか?と、誰が言ったのかも知らない案に皆が乗る。


とある山にいよやかの里と言う宿泊の出来る 温泉がある。


それに泊まりに行くか?な案がどこからか沸いて出てくる。


ほんまに行くんかな?と半信半疑やったが、内心楽しみにしてた。




【トレンタ】


いつも集まる場所。

総合体育館の近所にに喫茶店がある。


誰が行き始めたか知らんが俺らの溜まり場と化す。


マスターも奥さんも良い人で、若いから話も合わせてくれるし最高。


店名はトレンタ。30と言う意味だそうな。


俺らは頻繁に行ってた。




【いよやかの里宿泊】


宿泊計画もまとまってきてた青春の夏。


ついに


ついにその日が来た。

俺はほんまにウキウキやった!


いよやかへ行く当日。


泊まりに来てたサトシと早起きして、全て用意をこなし、いざ集合場所へ。


俺らが一番乗りかと思いきや、座ってる女の子がいた。

あだ名は【ハッサン】が目に映る。


とりあえず3人で時間を潰していた。


次々に集まるツレ等、バスを手配していた俺らはバスが来たので荷物を載せ、バス内で残りのツレを待つ。


残りのツレもあっという間に集まり、総勢十何名で、いよやかへ向かった。

なんでやろうか。

ツレ等と泊まりに行くって事が凄い楽しい。


いよやかの里に着いて、チェックインした俺らは部屋に向かう。


101号室と書かれた扉を開け、部屋を見渡した。


全畳張りで案外広い。


右に一部屋

真ん中に一部屋

左に一部屋


すぐ外には川が流れていて、家族達が賑わっている。


物凄い平和やなぁ。そう思いながら上の子ら男軍団と煙草を吸っていた。


可愛らしい花柄や渋い浴衣をレンタルしてる場所がいよやかの里にはあるらしく、女たちは浴衣を借りに行って戻ってくる。


右の部屋と真ん中の部屋を使い、俺たちはのんびり。


左の部屋はふすまを閉めて、女の子たちが賑やかに浴衣を着替えていた。

素晴らしい。心のなかでニヤニヤしていた。


「【テリー】可愛い~。」


テリーとは【テルイ】の事だ。

まぁこんなこと言うたら悪いかもせんが…

テルイは俺らと同い年には見られんくらいに小柄で可愛らしい女の子だ。

性格は…子供っぽい。

思わず頭を撫でてあげたくなるときもあるが

案外、口キツいからせぇへんけど…。

俺からすると、なんか妹みたいな存在だった。


俺の頭でテルイの浴衣姿が浮かぶ。

(うん。可愛らしいやろうな。)


スーッとふすまが開かれる。


色とりどりな浴衣姿の女の子たちが目に映るが、何となく直視することはできなかった。


アシモトがチラチラと目に映る。

(黒の浴衣か…似合うな。バリ可愛いし…。)

そう思うが、あかんあかんと思いながらタバコを吸っていた。



サトシと俺は風呂に行きたくなり、着替えのパンツと浴衣を持ち、風呂へ向かった。

頭、体を手際よく洗い、風呂に浸かる。


「景色良いよなぁ。」

そう俺らは言いながら窓の外を眺める。


「夏の景色も良いけど、冬の景色も観たいでなぁ。」

サトシはそう良いながら外を眺めていた。


ある程度浸かった俺らは風呂から上がり、浴衣に着替え、部屋に向かった。



風呂の前に、汗をかいている美味そうなコーヒー牛乳があったが、この頃はまだ働いていなく、金を惜しんで部屋に向かう。


101号室の扉を開くと、なんだかさっきより賑やかだった。


畳に座ってるみんなの手を見て俺は

「あぁ~。先に飲んでるやんかぁ。」

みんな酒を飲んでいた。


まだまだ外は眩しい時間だった。



そうなぁ…

知らん間に 結構飲んでたか…


みんなテンション上がる上がる。

たぶん隣の部屋や上の部屋には迷惑かかってたやろうな。


だって、部屋の外の廊下に丸聞こえ…。


「あっ!そうや!」

テリーは立ち上がり鞄を覗きに行く。


戻ってきたテリーの両手には大量の箸が。


それが意味するものは…


「王様ゲームするぞ。」


やはりか…やはりやるのか!?というか、やるやんけテリー!

ちょっと期待はしてたがいざツレ等でやるとなると緊張するもんだ。


箸に数字と王様を書き、始まる。

最初は軽く…軽く…腕立て…腹筋。



やがて時間は経ち、誰かがピンクな事を言い出すタイミングを見計らっている。


そろそろ来そうやな…。


「何番が何番にキス!」


キター!!



本当の王様ゲームが始まった。



もう…やばかったよ。

正直 このツレ等でこんな激しくなるのは予想してなかった…。


飲み物口移しや…ディープ


あかん…理性が。


キス

それは日常ならツレ等ですることはまず無いやろう。


そんな事さえ平気で命令して、その命令を受けて


人間って不思議…。


賑やかに…そして…危なく終わっていった。



ゲームの最後らへんで数珠が切れる…


霊?を見るようになってから着けてた数珠と

新たに着けてた数珠。新たに着けてた数珠が切れる。


場の空気が一瞬静かになってた。




みんなが布団に入り始めた時。


俺はサトシに心にもないことを言う

「アシモトの横に行って寝てこいよ。」


たぶん、諦めたかった。

いや、逃げたかった。


サトシがアシモトと寝てるとこを離れた場所から見て凹んでたの思い出す。


ちょっと時間は戻るがマイコに相談された。

まいこはサトシが好きだった。


サトシはアシモトが好き…

マイコはサトシが好き。


マイコは諦めるみたいな事を言っていた。

「諦めるなら、そこまで好きじゃなかったって事やで…せめて告白してみたら?」

サトシもマイコも応援する俺。

八方美人で軽く罪悪感を覚えてた。


そして逃げようとしてる俺。

俺には言える資格はなかった。



なんか寝れなくて、起きてる連中と喋ってた。


寝るときには結構あかるくなっていた。

誰かが朝風呂入ったけな…。


なんか…賑やかだ。数名の声が聞こえる。


堅く閉じられていたまぶたを開けて、眩しい日差しに対してメンチを切り起きあがる。

それは楽しかった時間の終わりを意味してる。


1日だけの宿泊だったから。



行きは賑やかだったバスも、帰りはまるで修学旅行の帰りのように地味に賑やかで、地味に静かだった。KY(空気読めない)が流行り始めそうな時期で、ボケで使ってわらかせてた。


地元に帰ってきた俺らは、解散かと思いきや遊びに行くことになったのだった。


某15分百円の所に行ったり、公園に行ったり…


帰ってきた頃には辺りは暗く、地味に涼しかった。



次の日に慣れたいつも通りの時間が流れても、楽しかった時間を迎えてしまうと、慣れた時間はなんか寂しいもんや。



もう夏も終わりだ。



【15分100円って施設あったよな】


某15分百円の店にいつものグループで行った。

個室かりて映画観てた。


徐々に人数へっていって、残るはテリーとアシモトと俺。


個室に一瞬にいるだけで、心臓は爆発しそうなぐらい鼓動を増す。


映画観てたけど存在を気にしてばっかりやった。


ある意味それが楽しかったのではないかと今は思える。


映画観終わった後、バク天と言う番組みて、頭使う問題とかを3人で答え考えてたりした。



気がつくと辺りはすっかり暗くなり、俺らは帰ることにした。


この帰り道はよくよく考えれば告白するチャンスやった。


しかし、頭にはサトシが引っかかってたんやろうか。いや、怖かったんだ。


普通に楽しく帰っていた。


ポリにチャリをパクってないかと調べられたりしたが、もう慣れたことだったので。


「今からどこ行くん?」

「帰りやで。」

「あっ、そうなん?〇$☆〆番。」

ポリは時折無線に番号(チャリの盗難防録)言っていた。

まぁ当然三台とも異常なし。

「…はい、OK!ごめんやで!んじゃ気ぃつけて!」

「はいよぉ。ご苦労様でーす。」

いつもこんな感じだった。


俺らは普通に帰り普通に終わっていった。



でも、心は何か寂しくて。

夏の終わりの夕暮れって、なんとも言えん寂しさない?



【全日制の文化祭】



他校の全日制の文化祭に誘われて向かった。


同い年やのに、金髪やし私服やし。俺はかなり浮いてた。


すごい活気に溢れ、みんな楽しそうだし、真剣に取り組んでる人もいて

これが学校で、これが文化祭で、これが青春やでなと寂しい気持ちになる。


中学の時の同級生や、小学生からの同級生らが何人かいて、スレ違ったが特に会話もなく。

小学生からの同級生は、お互いの家が目と鼻の先にあって、子供のころよく遊んでてすごい仲良しやったのにな。


中学行かんかったし、あんな噂まかれてたら誰も寄ってこんわな。

と、落ち込みながらもイラついてくる。



特にすることもなくなって、廊下の隅でうんこ座りしてたら

さっき素通りした中学の時の同級生に「お前、こんなとこで座ってたらアカンで」と言われ


「あ?お前て誰に言うてんじゃこら?」とにらみ聞かせながらたちがると、無言で見つめてくる。

「なんなしょーもない」と俺は吐き捨てさっていく。



ほんと俺も人生もつまらない。



【バイトってこうなん?】


時間は流れ、トレーナーは着らなあかんぐらいになってた。


サトシのバイト先に誘われる。

サトシのお父さんが店長してるため、直で俺に連絡がくる。


今までいろんな所に手伝い行ってたけど、バイトは初めてだった。


お父さんと話して、即採用。


その時は嬉しかったし、サトシの顔もあるし頑張ろう!と思ってた。



バイトの日。


サトシは泊まりにきていた。

なかなか寝付けんくて、朝方にサトシは寝る。

俺は愛犬【リュウタ】と散歩してから寝た。


10時頃に起きて、サトシと電車に乗り込み

バイト先へ。


案外遠い。



「十二時から入ってほしいんやけど、じき来る人おるから、その人来たら入って来て。」

とお父さんに言われ、着替えて大人しく二階の休憩室で待っていた。


時計を見ると十二時を回っていたが(待っとけって言うたよな?大人しく待っとこ。)

そう思いながら待ってると、パートのおばちゃんが階段をかけ上がってくる。


「何やってんよ!?早よ入ってや!!!」と急に怒鳴られる。


「え?」


(なんで怒られらなあかんねん。)

イライラしながら帽子を被り降りようとすると、お父さんが言っていた人であろう方が急いで上がってきて

急いで着替えていた。

その慌てっぷりからみて


遅刻だった。


(こいつ遅刻したから怒られたんか俺。お父さん、ちゃんと言うといてよな。)


最初はいろいろと教えられる。


しかし、寝不足がたたり特技の貧血が…

うずくまってしまい怒られる。


忙しい昼時を越え、休憩時間に入る。


まかないをサトシに作ってもらい、食べて休憩室でゴロゴロ。



その日を終えた頃にはバイトをなめてた俺を知る。



二日目


朝から入った俺は、パートのおばちゃんにいろいろと教えられる。


そのおばちゃんは優しくて楽しかった。



三日目


パートのおばちゃんに教えられたとおりの

並べ方のチラシ(チラシ寿司の上に乗ってる具の並べ方)を作る。


それを出そうとすると怒られる。


「なんや?この並べ方。違うって。」


いやいやいや!教えてもらった通りにやったし!短気な俺は、もうキレたかった。

サトシの顔潰さんようにしてたけど限界きそうやった。


次は作ったご飯とかをホールの女の子に渡すときに怒られる。

「なぁ!渡すときはお願いします言うてや!」

はぁ?そんなん教えてもらってないしよ。


次は上の子に


上の子が水だしっぱで、でかいご飯の釜?に水を入れていた。


それを放置して違う作業をしだした。


(あぁ…水溜めてんかなぁ)

そう思っていた。


すると、上の子が戻ってきて怒られる。


「こんなに水ためたあかんやろ!!」


いやいやいやいやいやいや!おかしいおかしい!あんたなんも言うてへんし、自分でやったやんけ。



もうひたすらそんなん。

いじめられてんのか俺?

言い返せないし、連続で問題ありすぎて、帰りの電車で泣きながら帰って部屋で凹んでいると

店長から電話。


「悪い!明日も入ってくれへん!?」と言われたが


「もう、無理です…。すんません…バイト先いくの…恐いんです…。」



サトシには悪いがやめたった。



【元々だが】


情緒不安定。

喜怒哀楽の切り替わりかたがさらに酷くなってる。

皆でいて楽しい!ってなってるのに急に機嫌悪くなったり

家で一人でいると凄く寂しくなって、心がソワソワする。


俺の存在に気づかないまま、みんなが俺の悪口、陰口を言っている夢を見て飛び起きたりする。


助けてくれ誰が。



【マスターキークン】



学校帰りにキークンと馴染みのゲーセンへ遊びにいく。


スリルドライブというレースゲームで対戦して、ゴール目前で重大事故を起こし、負ける。


そのあと、キークンはユーホーキャッチャーをやりまくってた。


この頃から、こった仕掛けをしてるユーホーキャッチャーが出だして、配置してあるのを取ると、次の景品は再配置してもらわないと取れなくなってた。


キークンは取っては定員をよび、配置してもらい、また取る。

と、ひたすら繰り返し、ケースにある景品を根こそぎ取ってた。



絶対いらんものばかり。



【誰も覚えのない懸賞】



懸賞があたりました!おめでとうございます!

と封筒が届く。


なんやろ??とりあえず開けてみると


ドラゴンボールの悟空がデカデカとプリントされたTシャツと

ガンダムのハロが刺繍されたリストバンドが入っていた。


ドラゴンボールもガンダムも興味ない俺は「?」と首をかしげる。

絶対応募してない。ってか、ドラゴンボールとガンダムを何故合わせた?


まじまじと見ると、まさかの値札つき。


Tシャツ2900円、リストバンド1000円



高っ!!


と思いながら、まぁ黙ってもらっとくかと、引き出しにナイナイした。



【年相応に私はなりたい】



学校がある駅前に着いたとき、何かの署名を集めているようで、おばちゃんとねぇちゃんに呼び止められる。


まぁ時間あるし、何かだけ聞いてみるかと思うや否や、食いぎみ早口で説明をかましてくる。


「えっとですねー子供のことでうんたらからんたらなんたらかんたら」

んん?なんて?ん?


聞き返そうとすると

「ご結婚はされていますよね?お子さんは何人ほどいらっしゃいますか?」と聞かれる。



「ちょっとまって!俺、17才!髭生やしてるし私服やけど、俺こー見えて今から学校!」


と言うと凄い驚いた!って顔でこちらをガン見しながら「ご、ご、ごめんなさい!」と謝り去っていった。



昔からポリに声かけられるときにお父さんと言われたり

コンビニで酒タバコは止められたことないし


初対面の年上に37才と言われるし。



俺どんなけ老けとんねん。




【5年は働いた工場】


【マツノ】と言う先生がいる。

一年の時、板金の授業を担当していた先生だ。

元ボディビルだけあって、ガタイがかなり良い。

メガネ、ボウズ、ツナギ、渋い喋り、時に笑かしてくる…印象的な先生だ。


そのマツノに俺は呼び出される。


「なんか用?」

「キッツンさ、バイトする気ない?」

ちなみに学校の先生は皆、俺をあだ名で呼んでくる。

「なんのバイト?」


それは工場でのバイト。内容は簡単。

人はおやじばっか。三十~六十歳。


だから、仕事帰りとかに拉致られることはないという。

若い年の子が働いてると、遊びに行くのついてかされたりとか。


まぁ 拉致られることがないなら、出会いもなくなるわけだが…。ましてや工場だ。


女なんていない。



次に、マツノは社長や社員等の話をしてくる。



社長はやる気満々。


ってか社長が率先して仕事を行っているという。

社員はやる気がイマイチ無いらしい。なんつーか、適当って感じ。


まぁ仕事ってそんなもんかな?それが当たり前か。


社長は優しく…ってか口調がのんびりで仕事も そんなに急かされることがないとマツノは言う。

それは信じてはなかった。

後々、信じてなくてよかったと思う日が来る。



とりあえず今度見学させてと俺は言った。

俺でもいけるかどうか、ちゃんと調べらな前のようになりかねん。


それだけは避けて通りたかったから。




約束の日


朝10時半ぐらいに電車に乗り込み、いつもなら降りる理由がまったくない駅に降りる。


バイト先に行くために乗り返らなあかんから。


貝塚。その駅に降りてその駅内にある水間鉄道。名付けて水鉄に乗り継ぐ。


280円を切符券売機に入れて最高尾にあるボタンを押す。


水間って駅に降りるんだが、そこは終点駅。


(これはめんどいな…。)そう思いながら狭くて古くさいホームで電車を待つ。




……


待てど暮らせど、なかなか電車が来ない。

屋根にぶら下げてある時刻表を見上げると、1時間に3、4本の電車しか来ないことが発覚。


(だるっ…。)仕方なくタバコを吸って時間を潰していた。




やがて、日頃は待ちわびることもない電車が来て乗り込むと、南海電車と違い車両は2両しかなかった。

イスもちっちゃくて、手すりも田舎臭い作りだった。


さすがに昼時なだけあって、あんまり乗客がいなく、イスが空いているため座ってボーっとしていた。


何個か駅を過ぎると車掌さんがうろちょろしだす。


カチャカチャと何かを鳴らしながら


すると1人のおばちゃんが呼び止める。何やらお金を払っている。


車掌は紙切れをカチャカチャ!っと軽快に挟む。


そう、切符だった。


マジか。

俺は昔にタイムスリップでもしたか?そう思ったが

水鉄ではこれが当たり前らしく、年老いた方は車掌から切符を買っている。

若い人は俺と同じで券売機で買っているみたいだった。


やがて10個目の駅。終点の水間駅に着く。

時間は11時半だった。



水間駅に着いた俺は松野に電話。


前に電話番号を交換していた。

アドレス帳にはゴージャスマツノと記載している。

「なんて入れとこか?」

って言うたら、ゴージャスマツノでいいと本人が言っていたので。



「え?もう着いたん?早いなぁ。まぁ今から行くわ。」

多分、家にいたんだろうか。電話からは数名の声が聞こえていた。



駅前で待ちぼうけをし、10分ぐらいたったころ旧型のマーチが現れる。


なぜかナビシート側のフロントガラスが割れていた。


そのマーチに乗り込み、まだ時間が早いので工場近くのコンビニへ。


暖かいコーヒーをおごって貰い2人でちびちび飲んでいた。



12時頃


みんなの昼飯時を狙い工場へ。

まだ作業をしていたが工場内をうろつかせて貰う。


社長につれられ工場を一周。なんか簡単そうに見えた。


昼飯の時間になり、事務所へ。


社長と喋ることに。

あらためて社長を観ると、かなりみすぼらしい…。

トレーナーとズボン靴までもボロボロのドロドロ。

メガネをかけていて、寝癖だろうか…髪の毛はボサボサだった。


社長は足を組みながら喋り出す。給料は時給750円。時間は朝8時から夕方5時頃まで。


などなど。


しかし、俺は社長に言わなくてはならないことがあった。


母子家庭の事だ。

それがからみ、普通に働くわけにはいかない。わかる人にはわかるのだが。


一通り話し合って、俺は土日にバイト入ることにした。


この土日って選択が、のちのちミスっていたなと思う。




朝6時に携帯のアラームが俺を呼ぶ。


さぁ…初出勤の日です。


飯を食って、着替えて、6時55分…


出発。

チャリンコをこぎ出すが、寒い!体が拒絶するかのようにガタガタブルブルと震えがとまらん。

ドカジャン着てんのにアホみたいに寒い。


まぁ今は十二月。

夜、学校行くときも寒い。


地元の駅で電車を待ち、乗り込んで貝塚へ。

水鉄に乗り換えバイト先へ

水間の駅から歩いて10分弱かかることが発覚。

工場に着いた頃には8時15分


15分の遅刻。


(…いや、大丈夫。電車が悪いんやし。うん。)

自分に言い聞かし事務所へ。


社長と奥さんがコーヒーを飲みながら座っていた。

別に怒られることもなく、普通に仕事を教え込まれた。


結構覚えてくのは簡単だった。



力を入れて、商品に加工するクソでかい木の板やシートを持ち上げようとしてもピクリとも動かんかった…。


(ここまで力いるとはなぁ…。やられた…。)

社長等は見た目普通やけど、少々力んでいるが慣れた手つきで板やシートを持っていく。

とうぜん奥さんも。それに唖然としていた。



その次の日

まだまだ仕事を教え込まれる俺。


日曜日だけあって社員等はいない。第2土曜も休みらしいが。



休憩時間も、昼飯休憩も1人。


なんか良かった。


まだ社員等と仲良くないし、気軽にやれて良かった。


バイトから帰ってきた俺は風呂入って飯食って寝たが…

次の日、筋肉痛に苦しみながら


生活した。




【サンタ兄貴】


もうじきクリスマスか…。


そんな時、兄貴に拉致られ、車で靴屋や服屋いろいろ連れ回される。

おかんとばっちゃんのクリスマスプレゼントを探しに。

でも、それだけじゃなかった。


俺に長財布と、靴を買ってくれた。

素直に嬉しかった。


「俺もお返しになんか買うで。」そう俺が言うと

「…んじゃ、コーヒーおごってくれ。」

「…。」俺は固まる。

だって、長財布と靴で 一万は越えてる。俺からしたらすごい大金だ。


「マ、マジで!?」

そう言うと兄貴は笑顔で頷いた。


自販機に向かった俺と兄貴。

「なんのコーヒーがいい?」120円を入れて押してくれ合図を送る。


兄貴はボタンをポチッと押し、軽快に出てきたコーヒーを取り出し一言。

「…弟からコーヒーおごってもらえて、幸せやな俺は。」



俺は母親や親父は嫌いだが、兄貴だけは大好きで尊敬している。




【仲間外れ?】


冬休みに入っていた。俺の記憶じゃバイトやった。冬休みやから土日関係なしに。


別にそれは良かった。バイトならバイトで。

どうせすることないし、彼女いてるわけでも、ツレに誘われたわけでもないさ。

だから良かったんだ。


わざわざ俺が調べたことで、こんなにも凹むこともなかったはずなんだ。


どこから沸いてくるんだ。この悔しさ…。

どこに向ければいいんだ。この腹立たしさ…。


その日は仕事して帰ってきたよ。

夕方五時に帰ってきたよ。


いつものことで普通だった。

疲れたなぁ。することないし眠いから寝よってさ。


こんなにトチ狂ったのは


後の話。




正直、場を盛り上げれる訳じゃない。

俺が居たって、人数が増えた。

ただそれだけだと思ってる。


でも、みんなは友達やと思ってるし、一緒に楽しみたいし、一緒に時間を過ごしたいと思ってる。


遊ぶ約束をしたらその日まで頑張って生きてる。

口べたやし楽しいんやけど、より一層楽しくしようと思ってる。


みんなが好きやから。大切やから。


アシモトのサイトがある。それは前に教えてもらったところだ。

何となく……。いや、正直にいうと好きやから気になって観てみた。


日記を。

12月24日の日記を。


読んだ瞬間、気持ち悪くなり目眩がした。


それは体調が悪くなった訳じゃなく思考回路が停止したがってる合図。


自分にとって不利なこと、自分にとって愉快じゃないことが起きると一瞬、目眩がする。

『もう、考えるな。もう、観るな。』

現実から夢へ送るために全機能を停止させようとする。


それと同時に冷や汗が流れ手が動かなくなり


無数の水滴が重力に逆らわず、携帯と堅く握った手にポタポタと。


涙が流れていた。


悲しいと思うよりも先に、声を出すわけでもなくただ涙が溢れる。俺は泣いてる。


そう気づくと声にならない声が出てくる。

俺は悲しい。悔しい。寂しい。


携帯を壁に投げつけ俺はうずくまった。内容は簡単なものだ。


すこぶるの皆でクリスマスを過ごしてたんだ。トレンタ貸切で。



別にそれは良かった。

でも、せめて誘ってほしかった。


俺、バイトやけど五時に終わるし、充分間に合ったはず。


なんで?

なんで連絡も何もなかった?


俺はハブられた?嫌われてる?



こんなにもなるぐらいみんなが好きなのに。




あの日から、ずっと悩んでた。

俺の部屋はただたんに物が散らかってるとは言いがたいほどグチャグチャになっていた。


俺が荒らした。あたる物がそれしかない。


そんな中、もう12月31日、とりあえず部屋を片づけて気持ちも一緒に整理する。


いつもの事だ。


気持ちが落ち着き、紅白を観ながら髪の毛を切っていた。

自分で切るのは抵抗があったが、伸びきった髪の毛も切ってスッキリしたかったんだろう。女の子の失恋のようにじゃないけど。


だいぶスッキリした。スッキリした気持ちで

十二時を回り、新たな年が幕を開けた。




【運転練習】


新たな年を迎えて数日後の夜。


兄貴が家に来た。

「今日暇か?」と飯をガッツキながら俺に言う。


別に予定は何もないので頷いてみせると、ゴミ捨てるの手伝ってくれと笑顔で言われる。


まぁゴミぐらいならと思い、兄貴に拉致られる事にした。



兄貴の家に行きゴミを捨て、ついでにいらんらしいジーパンを貰う。

んで、軽トラ(仕事用)で海の近くまで連れて行かれる。


何すんやろうか…そう思っていた。



兄貴は軽トラから降りて助手席に。

俺は運転席に。


前もそうだった。

洗車するからと、よく拉致られたことがあった。

その時はキューブでバックの練習させられたもんだ。

バックしてる最中に他人が洗車しに来て慌てたのを思い出す。


とりあえず今回はミッションの発進、停止の練習をさせられることになった。

いつだってそう。兄貴は唐突に行動する。

典型的なB型だ。

俺が嫌がってもひたすら引かない。


ウチの家は俺も皆も頑固者だ。一度決めたら突き進むタイプ。


人通りもないし、車も数台しか通ってないけど怖かった。


でも、運転せざるおえない状況。発進の仕方や停止の仕方を教えられ、いざ発進。


クラッチを踏み込み1速に入れアクセルをち気持ち踏み込み

クラッチをゆるめていく。半分ぐらいゆるめていくと、グンッ!と前に進み出すのが分かる。

そこで左足は止めておく。これが半クラと言われるものだ。


これを一気に離してしまうとエンストするので、なかなか緊張する。

でも、エンストする理由と構造を覚えると分かりやすい。


発進して、アクセルを離しクラッチを踏み込み2速へシフトチェンジ。


次はウィンカーだして曲がっていこうとすると、左側にハザードを出して止まってるトラックが

「よし。あのトラックのケツに止めよか。」

兄貴がそう言うので、トラックのケツにいき

アクセルを離しエンジンブレーキして、クラッチを踏んでブレーキをじわじわと。


そんな感じで終わっていったが、エンストをまだ経験してなかったのを後々後悔する。





【一人で舞い上がるキモい年頃】



次の日バイトやし、疲れたから、その日は夜十一時過ぎに寝た。


朝三時になぜか目覚める。

「しくった…目ぇ覚めて寝れん…。」

まぁいいやというノリで起きてた。



朝の五時過ぎ。

ばっちゃんが毎日兄貴を電話で起こす時間だ。仕事いく時間やから。


俺の部屋にかすかに声が入ってくる。

どうやら兄貴は電話に出ないらしい。


たぶん爆睡しているのだろう。


部屋から出た俺はばっちゃんに一言。

「直接行って起こしてくるわ。」


ばっちゃんの慌てっぷりからみて、たぶん兄貴は遅刻しそうなので。

チャリに乗り爆走。


はぁはぁ言いながら兄貴の家のインターホンをピンピピンピピピンポーン!と連打。

ガチャガチャと力なくドアが開く。

見るからに寝起きな兄貴が見えた。


「仕事やろ?頑張れよ!」そう俺が言うと

「お前、仕事やのに起こしに来てくれたんか?」と言われる。

俺は作業着を着ていたからか。


「まぁ早起きしたからさ。」

「ありがとう。」

「んじゃ頑張って!」

「お前もな。」


そして俺は帰る。

まだ時間があったのでリュウタと散歩してからバイト先へ


鉄板を500枚流すはめに。

(だ、誰な!こんなに注目したやつは!?)


昼間の休憩時間に

(む、むちゃするんじゃなかった…)

と思いながら寝ていた。


バイトあがってから、めっちゃしんどい……と思ったが

じきにアシモトの誕生日やから稼いどかな。と1人で意気込んでいた。



その日もバイトしていた。

正直、風邪気味やったけど頭の中は結構パラダイス。

今日はアシモトの誕生日だ。


ちゃんと事前に誘ってあるし、金もある。

風邪気味を除いては完璧だ。


5時過ぎにバイトあがって、いつもより1分でも早くて良いからと言う気持ちで急ぎながら帰った。


6時過ぎ地元に着いて連絡して、アシモトのおる場所へ。

アシモトとツレが2人いた。

ほんまは2人で行きたいが、約束するときに「誰か呼びたいんなら呼んでいいよ」と俺は言っていた。

本心ではないが、俺は"優しい奴"を気取っていたのだろう。


俺をあわせ4人で岸和田のカンカンベイサイドモールへ。

うろちょろしながら、どのチャンスでプレゼントを買うか考えていた。


金には余裕がある。2ヶ月分の給料が手元にはある。ケチケチしたかいはある…。


あとはアシモトが目を付けたものをさり気なく買えば…と思っていた。


服見たり、鞄見たり。そのアシモトの行動をみる。自分でキモイなぁと思いながら…。

アシモトがカバンを観ていて、ツレに背中を押されカバンを取りレジへ。


なんか勝手な行動にしか見えへんやろうけど、俺にはそれが限界の行動だった。


1,000円。

そのカバンの値段だ。感づいてたのかツレに言われたか。遠慮してくれたみたいだ。

まぁ…それはそれでと思いカバンを渡し、終わっていった。


帰り道、送っていこうか迷った。

やましいことや何かあると思われると思い、送るのはやめた。


ただ逃げたのだ。


結局、気の気いた事が出来ずに、後悔が残り終わっていった。



まだ風邪気味でバイトへ。

筋肉がパンパンになりつつ仕事をこなしてた。

三時の15分休憩が終わり仕事再開。

ちょっと板にもたれ掛かっていた。

(あたま痛い…)


すると奥さんが来た。

「どうしたん?眠たいん?」

「いや、ちと風邪気味なんすよ。」

そう俺が言うと事務所へ連れて行かれる。


風邪薬と栄養剤をもらい両方飲んで仕事再開。


6時過ぎに地元に戻ってきて、おかんとばっちゃんが好きな飴が売っていたので買って帰り2人にあげて


ホッと胸をなで下ろすと同時に鼻血がダラーっと

「あ、あらら!?」





【ぐにゃ】


土日にバイトしてたら休みがないことが発覚。平日は学校やから当たり前。


ってなわけで木、金にバイトの日にち換えてもらった。


とある木曜日。

オガ(木クズ)を手でかき集めゴミ袋に入れて掃除してた。


あー楽~と思って掃除してた。


袋に入れるためオガを握ると、ぐにゃっとした感じがした。

オガなのにぐにゃっとはおかしい…。


パッ!と手を開くと鳥の死骸が。


「うわっ!?」と声を上げて、奥さんにその事を言って近場に埋めさせてもらうことにした。


スコップを持って工場から抜けて土のあるとこに埋めて仕事を再会した。





【吐くまで飲んで】


桜が咲き、満開に近かった頃。

花見をしようかとなりツレ等総出で花見へ。


皆、お酒や菓子を持ってきている。


上の子が神の湖(酒)を持ってきていて、俺の紙コップに注がれる注がれる…。


どんなけ時間がたったのか忘れた。


場所移動してから人数も増している。


その中さっきの酒が効いていて吐き気が…


トイレにチャリで行き指突っ込んで吐く。


吐きながら思い出したことが…。

酒のんで吐くようになったのはあの日からだった。



高校一年のある夏。

キークンに誘われた俺は岬へ。

キークンの家に泊まりにきた。


夏…のはずだ。間違いなく。みんなも半袖だし…。

しかし、岬は……寒かった…。

夜って事もあるやろうけど。普通に寒い。


キークン家の前の駐車場でサッカーをしようとなり、ツレらとサッカーをしていた。


「ほーい!キッツン!パス!」

キークンから放たれたボールは俺に…向かうはずが、俺の横を抜けていく。

「あ、あら!?」

暗くて見にくいが、ボールが消えた…。

ボチャン!という音がして、消えたのではなく落ちたのだと気づく。


「うーわ。キッツンが捕ってくれへんからや。」

「な、なんでやねん!?パスミスったん誰やねん!」

とりあえずボールを拾おうとしたが、やけに深い…。さすが田舎の側溝。


俺は、両手で体を支え、足を宙ぶらりんにして拾おうと試みた。



パキン!とケツの方で何かが折れた。え?と思う間もなく…

ブシャー!!!!と軽快に天めがけて水が噴き出す。

それは田んぼに水引く為のパイプみたいなんだった。


一瞬で、俺はビチョビチョになった。さっきも言ったが寒い。

キークンは早くボールを取って帰ろうとしている。

焦って手を伸ばしたその時にまた ボチャン!と言う音がした。

キークンの胸ポケットに入っていた携帯が落ちたみたいだ。


キークンはさらに焦り何を血迷ったか、飛び降りる。


深いが、深いだけで水はそんなに無い。


でも天めがけ吹き出している水が、キークンにもツレにも俺にもかかり続ける。


キークンの携帯は辺りも水の底も暗すぎて見つけられず、ボールだけ回収してきーくんの家に戻った。


キークンの家の前が駐車場だ。

間に道路を挟んでいるが、窓からよく見える。


何時まで経っても勢いは収まらず、ずっと吹き出していた。


ツレは帰っていき。

ビチョビチョになった俺とキークン。


キークンは風呂に入った。

風呂入って着替えるか?と言われたが何となく遠慮していた俺は、ある程度絞ってはいたがビチョビチョのまま。


朝方。

辺りは明るくなりキークンは知らんまに寝てた。

朝…なおさら寒い。

布団もないし服は生乾きやし…。


そこいらにあった座布団を布団代わりに使ってみたが…。


寒い…とガタガタ震えていると、キークンのおかんが部屋に来る。


「大丈夫?布団だそか?」


初めて見た。優しそうな顔してる。案外見た目が若々しい。


「え?あっ!大丈夫ですよ!ってか、おはようございます。」

おばちゃんは、そう?って感じに首を斜めにして部屋を出ていき、家を出ていく。こんな早くから仕事なんだろうか。


そう思っているやいなや俺は知らぬ間に寝ていた。



夕方頃に俺は目覚める。辺りは真っ暗だった。

部屋から部屋へと電気の光が射し込んでいる。


どうやらおばちゃんは帰宅しているようで、キークンも起きているみただった。


キークンとゲームしたりいろいろしていた。


今日中に帰るつもりなんだが、晩飯を食って行けと言われ、晩飯待ちをしている。

晩飯が出来たらしく、呼ばれてキークンの部屋のふすまを開け隣の部屋へ。


すげぇ…

かなり豪勢。色とりどりに机に並べられている。

俺の家では一生ないな。


好き嫌いが案外多い俺だが全部平らげた。

料理上手いんやなぁと思い、泊まらせてもらったことや晩飯など全てを含めて感謝して

帰っていった。



その日からだいぶ月日が流れたある日。


俺らはいつも通り学校へ。キークンは来ていなかった。

担任にキークンと連んでる奴らは呼ばれる。


「キタウラのおばちゃんが亡くなったそうや。」

絶句だった。


一度しか会ってないけど有り難みがあった。

「キタウラが帰ってきたときには もう亡くなってたそうや。」

「原因は頭に血がたまって…」

何を言ってんのかが分からないぐらい頭が回らなかった。

キークンが帰ってきたとき、おばちゃんは寝ころんでいたそうだ。


なんかおかしいと思って、よく調べたら息をしていなかったらしい。

寝てる間に息を引き取ったそうだ。


俺らは葬式に出ることにした。葬式の日は学校も休んで。




葬式の日。


俺ら定時制は制服がないからスーツに着替え、それぞれキークンの地元に集まることにした。


葬式場に向かって、キークンにも挨拶をして

おばちゃんにも挨拶をした。おばちゃん自身 俺のことを覚えていてくれたかは分からなかったが、俺はおばちゃんを覚えているし世話にもなった。

感謝の気持ちと、ゆっくりしてくださいと頭の中で考えながら手を合わせた。


ヒサシと言う俺のツレがいる。高校で知り合った心優しいヤンキーだ。

最初は五輪に金髪という俺からしたら意味分からん髪型をしたりしてたから印象的。

今ではロン毛だが、なかなか似合っている。

性格もいいし、ノリもいい。いつの間に仲良くなってたのかは分からないが…。


【スズキ】と言う一個上のブラジルと日本のハーフのツレがいる。

学校入った当初は、髪の毛で目が見えないくらいボサボサで、真面目そう…ってか根暗そうに見えて喋りかけることがなかった。

しかし、きーくん等と連んでいくうちにファッションするようになり、ハーフの底力を見せつけるかなりイケてるキャラになった。


その日の夜にスズキくんと俺は、ヒサシの家に泊まることになった。

葬式場からヒサシの家まで恐らく1時間以上歩いた気がする。


ヒサシの部屋でおばちゃんが作った飯を食っていた。

ウナギ丼とワカメスープ。

ウナギは苦手なんだが残したら悪いし、イヤとも言えんので頑張って食った。



後は3人分敷かれていた布団の上で喋ったり、絵描いたりして賑わっていた。

そこに連絡がくる。キークンからだった。


どうやら話の内容は、今から飲むからおまえ等も来いよ。と言うことらしい。


ヨシダさんという二個上の女の子がいる。

かなりテンションが高く明るすぎる性格だが

バリヤンキーで、何気に危ない雰囲気を漂わせている。

噂で聞いたのだが、免許取り立てで嬉しくて山をドライブしてる時に目の前にカーブがあり、落ちれば死ぬようなところで

「…今やったらウチ飛べるかも…。」と真顔で言って、かなりビビったと聞く。

そんなヨシダさんが車で迎えにくる。大丈夫か?


再度、葬式場へ俺らは向かう。もうすでに飲み始めていた。そこへ俺らも参戦。

今まで吐いたことないから平気やと思ってた。


だから、すすめられれば飲み、かってに飲み

何かつまみ飲み。飲み飲み……。


まぁキークンに楽しんでもらいたいってのもヒサシと話していたのもあった。

暗い雰囲気でチビチビ飲むよりも、明るく楽しく飲んだ方がこの場には合ってると思った。


今まで飲んではいたがこんなに飲んだのは初めてだった。


だんだん気分悪くなってくる。限界が近づいてる証拠だった。

そこへ追い打ちがかかる。

「イッキ!イッキイッキ!」

マジでか?おれにイッキしろと?…。


目の前にあるビールを手に取り、いざイッキ!


そして撃沈。


マジで気分悪い。吐きたいのに吐かない…

一番だるい…。これが酔うってことなのか?


俺は寝ころびながら唸っていた。

(あかん…マジで吐くて…)


親戚のおばちゃんがキャベジンをくれる。

飲んだんやけど…これが追い打ちに。


気持ちは速く歩いてるつもりやけど、よたよたとトイレに。


和式の近くに倒れ込み嘔吐。


ウナギ…ワカメ。

(うっ…)さらに嘔吐。


もう、駄目だーと思いながら、汚いとか関係なしに、和式の縁にデコをつき土下座みたいなポーズで倒れていた。


そんな俺の後ろから、誰かがトントンと肩を叩いてくる。

ヒサシだった。


「いける?水持ってきたろか?」

「お、おぅ ごめん…頼む…。」


ヒサシが水を取りに行って、帰ってくるまで 俺は寝てたのだろうか?記憶がない。


気がつけば目の前にヒサシが、水の入ったコップを持ちウンコ座りしていた。

俺は和式から離れ壁にもたれて座っていた。


水を渡され一気に飲み、皆の居る場所に戻ることにした。


皆の場所に戻っても俺は唸りながら倒れ込んでいた。



そんな状態で、だいぶ時間が流れたらしくキークンの家へ。


静まり返った大きな一軒家。

これからキークンはこの大きな家で1人で暮らしていくんかな。維持できるんかな……。


と思うとなぜか俺が悲しくなってくる。

キークンの部屋の床で俺は眠りについた。



たった何時間しか寝れていない…起こされ、栄養剤か何かを飲まされ葬式場へ。


同じクラスの上の子が来ていた。

「誰かぁ。ネクタイ絞めれるやつ居てっかぁ!?」

唯一ネクタイ絞めれるのは俺だけだった。


そんなに仲良く無い人やし、俺は二日酔い…

(…緊張)そう思いながらネクタイを締めてあげた。


車に乗せられおばちゃんが火葬場へ向かっていった。


俺らは海へ行ったりキークンのツレの家行ったりしていた。


夕方頃、俺は帰ることにして駅へ向かい帰っていった。





「…っつん…きっつん!」


休んでいた俺の耳が働き出す。

俺は洋式の鍵を閉めて壁にもたれて居た。


さっきまで吐いていた事を思い出す。


タツヤさんが扉の向こうから俺を呼んでいる。

タツヤさんら神の湖をくれた人だ。

「…は、は~い。」

「大丈夫?」

「何とか…。」

そうかぁっと言ったように聞こえた後、足音が聞こえる。

タツヤさんは戻っていったようだ。


(俺も戻るか…)

俺は花見が繰り広げられている場所へふらふらと戻っていった。




【難波】


だいぶ前からスズキくんが祖国ブラジルへ帰ると言っていた。


だから、友達になれた記念に何かプレゼントを渡そう。


そう考えたキークンと俺は難波へ向かった。


難波へ来たのは久々だった。たぶん中学以来。


アクセサリー系にしようかと言ったのがきっかけで、アクセサリーが置いてる店を探していろんな店へ出向いた。


商店街の中の十字路で、金髪ロン毛の若いニィチャンに声かけられる。

「すぐそこに店あるから寄っていってよ。」


まぁいいかと俺たちは着いていく。

二階まで上がらされた俺ら

そこには服やアクセサリーがいろいろ置いてあったが値段が異常に高い割に良い物はなかった。


(ふーん…やられたかぁ)

と思いながら変なニィチャン定員が

「こんな服とかに合いそうやねんけどなぁ」

と俺に言ってくるのを笑いをこらえて聞いていた。


だって必死やもん。ダッサイ服やし。値段高いし。


呆れた俺らは一通り見て出ていこうとすると

違うニィチャンがお客を捕まえて戻ってきて、スタッフルームあたりに連れ込まれていくたところだった。


見るからに真面目そうな子たちが連れてこられていて、店から出た俺とキークンは

「あの子等は絶対買うまで帰られへんでなぁ」と言いながら違う店へ向かった。



商店街の中にポツンと店があった。


観た感じ入りにくーい薄暗くてコジンマリした店。

あえてそこへ入ってみた。

店主のお爺さんは見た目若々しくて、えらい気さくで話しやすかった。


ガラスで覆われたテーブルの中にアクセサリーがいっぱい。


それをあーだこーだと話し合いプレゼントが決まった。

俺は腕につけるシルバーアクセサリーを買った。


キークンはスズキくんに連絡をして難波まで遠征してくるように言う。


俺らはカフェ行ったり食いもん買って食ったりしてスズキくんを待っていた。




スズキくんが現れ、俺たちはカラオケでも行くか!と、なりカラオケ屋へ。


個室に入った俺らはプレゼントを渡す。

相当喜んでくれた。趣味に合ってるかは知らんが…。


そこでスズキくんが喋り出す。

それを聞いた俺らは驚きと嬉しさを味わった。


「プレゼントもらっといて、あれなんやけど…もしかしたら引っ越しせんかも。」


良かったのか悪かったのかは分からないが…


俺は嬉しかったし、良かったと思った。




【好きなんだよな】


今日は前々から約束をしていた。飲み会の日だ。

キークンとカザマ(旧姓ミナミ)とスズキくんと俺で居酒屋へ。


俺は初めて来る店だった。


店長は良い人…ってか、見た目とか雰囲気がバイト先の社長にソックリ…。


俺たちは座敷に座り込み、さぁー!飲み会スタートです。


最初は生とかを飲みながら飯を食って喋りまくる。


次にショットガン。コップに布巾をかぶせ

テーブルにゴンッ!!っと勢いよく底を叩きつける。

ラムネみたいにシュワー!となってそれをクイッと一気に飲む。

これが案外きつい…。かなり飲まされたさ…。

みんなも飲みまくってた。(よぅ平気やなぁ)と思いながら生などを飲み続けた。


だいぶキテたね。酒は回るし目も回る。

酔った勢い…とは言いがたいが俺はスズキくんに聞く。


アシモトの事だ。



ちょっと時間をさかのぼる。


その時は俺の地元ですこぶるメンバーとスズキくんとその他モロモロが集まった。トレンタで飲み会だった。


ひとつのテーブルに俺、スズキくん

そして、アシモトが居た。


やけにアシモトがスズキくんをホめる。

「カッコよくなったなぁ。」

「カッコえぇわぁ。」

スズキくんが家族と電話してポルトガル語を喋ってるのを聞いて

「凄い!初めて聞いた!」とかな…。


またとある日。

学校に来ていた俺とスズキくん。


そこで俺が喋り出す。

「なんかアシモトさ、スズキくんに興味ありそうやでな。」

小学生か俺は…。



そんな感じで流れに流れて…今、アシモトの事を喋っている。


「スズキくん、最近どぅよ?」

「え?何が?」

「アシモトよ?」

「あー。別に、今度映画行くぐらいちゃう?」


……


俺の中からこみ上げてくる悲しさ。

マジかよ。俺とは二人ではデートしてくれへんし、なんかさ。なんかよ!


別に俺の彼女でもないし、何でもないことなのに涙が出てくる。


酒入ってるせいか蛇口が緩い。

閉めても閉めても水は流れ続けた。


スズキくんに

「俺…去年の夏から…アシモトの事、好きやってん…。」とついに言った。


みんなは「きっつん!どないしたんや!?」と言ってくる。


「何でもない!大丈夫!」

ただそれしか俺には言えなかった。


スズキくんは気を使ってくれた。優しくしてくれた。

その優しさや自分で自分を追い込んだ事で涙は止まらなかった。




すっかり俺が落ち着いた頃、皆でカラオケへ。


電車に乗って、人目気にせず騒ぎながら向かう。


とあるホーム着いた俺らは降りて、我先にと俺ときーくんは歩いてく。


スズキくんとカザマが着いてこないことに気づき、後ろを振り向くとカザマがうずくまっていた。

乗り物に弱いカザマ。しかも大量の酒を飲んでいる。

そう。電車がトドメで吐いていたのだった。


それを他人の奴らはマジマジと観てるだけ。


スズキくんは「大丈夫か?」と問いかけながらようすをみている。背中をさすられると逆に気持ち悪いとスズキくんは思っているため。


カザマが落ち着いた頃に、近くのコンビニへ向かう。

カラオケのフリータイムが始まるまで時間を潰す。


そこで何回かカザマは吐き続けたが、だいぶ落ち着き時間も来てカラオケへ。


歌いたいもん歌ってた。しまいには採点勝負。

しかもその採点はかなり厳しい。


音とか外した瞬間に即強制終了。

これに自分の持ち歌で挑み、最後まで歌えた奴が勝ち。


結果…。

俺は歌いきった。


次は罰ゲーム付きの普通の得点勝負。

最下位は免れた。


カザマが最下位で罰ゲーム決定。


朝の五時。

カラオケ屋が閉まるため、ついでやからってきーくんの家に泊まりに行く。

シャワーを借りて話し込んで、気づいたら寝てて夕方に起きて学校行く時間。


さきほどの罰ゲーム開始。

ウォッカをデカいコップに入れハイパーショットガン!!


カザマイッキ!

そしてそのままの勢いで学校へ。だいぶ苦しそうにしてた。




学校も終わって、俺は家に帰ってきた。

次の日のバイトその次の日のバイトが辛かった…。





そして…そんなこんなで高2の時間は終わっていった。


後、一年だけ。誰が何と言おうと俺は学生だ。

この気楽な間に全てに決着をつける。


最後の学生生活。


悔いの無いように。後に残らないようにラストスパートだ。


そう思っていた。



次の学年へ


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