第4話
惨劇が起きたのは旅人がこの町に来る10分程度前の事であった。
『奴』と呼ばれた元「賞金首」である殺人鬼は旅人が入った所とは別の酒場に居た。巷によく居る商人のような格好をした殺人鬼はカウンター席に座り酒を1杯注文した。店主は酒瓶から酒をグラスに注ぎ、殺人鬼の手元に置いた。その時であった。
「貴様がアルバンか!!」
そう言って店主の脇をナイフで刺した。
「ぐわっ!....ち...違う!私はアルバンではない!....」
「ならばアルバンは何処だ!....アルバンは何処だぁあっ!」
「知らねぇっ!...俺はアルバンとは関係ねえっ!...やめてくれ..!」
「ならばお前は用済みだな。必要ない。」
殺人鬼は息も絶え絶えになりながら必死で抵抗する店主の首を掴んだ。
「何をする!やめろぉォッ!...うわあああああぁぁぁ!!」
すると忽ち店主の首から炎が浮かび始め、店主は一瞬で火達磨と化した。店主はこの上ない轟音と悲鳴を上げて命共々燃え尽きてしまった。その惨状を見た客達は次々に悲鳴を上げ始めた。
「アルバンは何処にいる!アーノルドは何処にいる!」
獲物を狙う獅子の如く、睨み上げた恐ろしい目に客達は震え上がり、次々とその場から逃げ始めた。しかし逃げ回る客達を殺人鬼は決して逃さなかった。殺人鬼は客達に狙いを定めて手に持っていたナイフを次々に投げた。投げたナイフは綺麗な放物線を描いて客達の脳天に直撃した。客達からは見事な血の噴水が吹き上がった。しかしこれだけは殺人鬼には足らなかった。
殺人鬼が掌を上に挙げると、詠唱もなしに忽ち周りに火の嵐が巻き起こり、酒場全体を炎で包み込んだ。
酒場に生き残っていた客達もまた店主と同じようにして体全体を業火に苛まれ黒い炭と化した。
殺人鬼はまさに暴虐の限りを尽くしていた。
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