第3話

「賞金首か....」 


店主は唸った。


「いないのか」


旅人は焦った。もう既に旅の資金は尽きかけており、周りにはここ以外に町は存在しない為、この町で稼ぐしか方法は無かった。いわばここが命綱でもあり、ここを通過しての旅の続行は不可能であった。だからこそ旅人は非常に焦った。そんな中店主はこう切り出し始めた。


「ならず者はいることにはいるが....もう正直に言って私はどうすればいいのか分からん。あいにく奴は賞金首になってねェ。」


「それはどういうことだ?」


思わず旅人がそう聞く。


「お前さん、この町に入る前に焼け爛れた家々を見てきただろう?」


「そうだが...それが一体....ん!?...まさか!」


「そうだ。長すぎた周辺の戦乱でこの国も繁栄してきた過去がわからねぇ位にボロボロになっちまった。日が変われば国もめぐるめく変わって最早町長でさえもこの町がどこの国の管轄かわからねえ状況だ。その上、地方の役人は国の統制に逆らって略奪やら賄賂やら課税やらで好き放題にやる始末さ。おかげで警察昨日なんてありもしねえ。『治安維持』なんて文言も身勝手な拘束のための大義名分でしかねぇしよ。だから『賞金首』なんて制度も崩壊したも同然さ。」


「そんな...そんなことがあっていいのか..!!」


旅人は思わず激情に駆られた。


「まあ流石にこのまま泣き寝入りするだけじゃこんな町はすぐに潰れちまう。だからワシらは役人やならず者に対抗する為に自警団を作ったのさ。そして実はお前さんに自警団として頼みがある。」


「何だ?」


「さっきこの町にはならず者がいることにはいると言ってただろう?お前さんは言動や風格からして賞金獲りに見える。背中や腰に差してある剣もよくできた優れものだな。」


「分かるのか?」


「なぁに、酒場の勘ってモンよ。ここで10年20年も商人に絡んでりゃ勝手にそんなことぐらいは分かるもんさ。さあて話を戻すが先ほど言った通り、この町には非常に困ったならず者ちゃんが一人いる。そいつを血の跡残さず殺してもらいたい。奴はこの町の住人をもう35人も殺した厄介モンだ。女・子供も兵器で殺しちまうからお前さんも気をつけな。」


「ん!?何故!?」


「これも酒場の勘ってヤツさ。さて、ならず者についてなんだが奴を殺ろうともう既に5人は挑んだが全員八つ裂きにされて死んじまった。正直に言って奴は手強いし非常に危険だ。ワシにはお前さんの腕はよく分からないが、ある程度の覚悟は必要だ。賞金は出せるだけ出すが五万が限界だ。」


「五万だと!?それはあまりにも低すぎるのではないか。前に来た町の半分だぞ。」


「すまねえ事だが役人が絡まねえ『自警団』って存在である以上慢性的な資金不足は憑き物なんだ。でもお前さんはここぐらいでしか稼げるところはねぇだろ?辺りに潰れてない町なんてここしかねえしお前さんは相当金に困ってるように見える。」


「また何故....」


「これも酒場の勘ってヤツさ。どうだ?宿舎や食事はこっちで無理行って用意してやろう。やろうとはおもわんか?」


旅人は非常に迷ったのと同時に旅人自身を酒場の店主の掌中で転がされてるような気分になり、気味を悪く感じていた。しかし背に腹は代えられない。


「その依頼、受けてやろう」


旅人はとうとう依頼を引き受けた。


「よおし、それでこそ賞金獲りだ。じゃあ早速だが」


店主が話を始めようとした瞬間であった。


「襲撃だぁぁぁァァァァアアアアア」


見知らぬ男が店に入り込んできた。


「何だ!?何が起こった!?」


旅人は少々うろたえながらも男に聞く。


「襲撃だ!奴が襲撃してきた!また酒場だ!」


男は焦りながらそう言った。服には返り血であろうものが付着している。


「おぉっとこりゃ旅人さんのお早めの出番だな。早速だが行ってくるといい。健闘を祈る。」


「おう。ではさらば、だな。情報提供には感謝する。酒場のおっちゃん。」


「お?ワシの事はアルバンと呼べ!」


「そうか、ではさらばだアルバンさん!」


そう言って旅人は『 奴』の襲撃場所へと向かった。

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