第9話

俺とスピリは、そのまま家へ向かった。


「ただいまぁ」


俺は、そのまま自分の部屋に向かう。


部屋に入り、ベッドの上に横になる。


暇だ...


(ねえ、スピリ。暇。)

(ボクに言われてもねぇ...)


なんせこの世界には娯楽が少ない。(俺が知らないだけかも知れないけど)


そんなことを考えていると、スピリが出てきた。


「どうした」

俺は聞いた。

「いや、暇なんでしょ?ボクが話し相手になってあげよう、と思って」

「あんがと」

「うん」


そう言って、スピリは俺の横になっているベッドの上に座った。


「ところで、スピリって俺の事けっこう詳しいんだよな?」


自分の過去を他人(まあ、妖精だけど)に知られてるのはあまりいい気持ちではないけど。


「まあ、全てとはいかなくとも大体はね」

「じゃあ、他の世界から来たことも...?」

「うん」

「そっか。でも、その事は内緒にしてくれよな」

「不思議な事に今まで契約してきた人、皆異世界から来てるから、こういう事には慣れてるんだ」

「まじかよ。なんか、そういうのがあるんかな?」

「かもね〜」

スピリは気楽そうに言った。


スピリがいい奴でよかった。ホント。マジで。


「ところで、スピリってどれ位の力が使えるんだ?」

「殆ど使えないよ?」

「でも、って事はちょっとは使えるんでしょ?」

「まあ、うん。ケイに力を譲渡する事は出来ないけど、自分自身で使うなら人の過去を見たり、こっちの世界に来たりは出来るよ?あ、あと、100倍までなら重力を増やしたり減らしたりできる」

「強くね!?」

「ただ、ケイ弱いからなぁ」

「ごめんなさい。」


どうやら、スピリによると、俺の魔力だと人の過去を見るのが精一杯らしい。


スピリさん、ごめんなさい。


スピリさん曰く、あのスピリの家の中ならマナがあるから力を使う事が出来るらしい。

スピリの家に浮遊してた謎の灰色のヤツはマナだったのだ。


俺はスピリの家から、ユグルドの方に魔法を使えば色々できるんじゃないか、と思ったが、精霊郷からユグルドに魔法で干渉する事は出来ないらしい。


「もし、俺が死んだらスピリはどうなるんだ?」

「自動的に契約解除になるよ」

「ふーん。それであの汚い家に戻っちゃうって感じか」

「汚いって言うなあああ」


俺は毎度の如く無視します。


その後、スピリと少し話しているとレイが帰ってきたので、スピリには引っ込んでてもらった。


俺は、部屋を出る。レイに会いに行く。


「レイおかえり。お疲れ様」

「おう、ありがとな」

「どんなクエストやってきたの?」

「まあ、ちょっとドラゴンの退治をな」


ドラゴンの退治を「ちょっと」と言ってしまうあたりやっぱりすごい。

ドラゴンはやはり、この世界でも強い部類に入っている。



その後、俺はレイと別れ自分の部屋でスピリと時間を潰した。


俺がスピリをいじって遊んでたら、レイが呼びに来てくれた。

急いでスピリに引っ込んでもらう。


「夜ご飯の時間だが、どうする?」

「そりゃ、食べるよ!!」

「そうか、じゃあ行こう」

「うん」


俺とレイは広間へ向かう。


「さっき、誰か女の子の声が聞こえたが、誰かいるのか?」

ギクッ!!


「い、いやぁ...気のせいだよ、気のせい!!誰も居なかったし!うん!誰も居なかったよ!」

「そ、そうか」

「うんうん!」


危ねぇ...バレるとこだった。



食卓につく。そこには、また豪勢なお食事があった。


それじゃあ、早速...

「頂きます」


うん。やっぱり美味しい。

因みに、今日のメニューは、パン(丸いヤツ)、シチュー、サラダ、鳥の丸焼きである。


(良いなぁ...ボクも食べたいぃ)

(またか。まあ、良いよ)


俺は、こっそりスピリの分を皿に取り分ける。


(もっと、お肉!)

(はいはい)

(サラダやだぁ)

(お前......やっぱ子供だよな...)

(子供じゃないし!)


「レイ、明日もクエストとか行くの?」

「明日も行くぞ」

「俺も連れていってもらっても良いか?いつまでも、居候でいる訳にい行かないし。俺もいつかはクエストやってみたいし、弱いけど」

「言っておくが、かなり危険だぞ?」

「承知の上だ」

「わかった」

「ありがとう!」


こうして、明日はレイのクエストについて行くことになった。


そして俺は、夕飯を平らげた。

「ごちそうさま。美味しかったよ!」

「そうか、それは良かった」


俺はスピリ用の皿を持ってバレないように部屋に戻る。


「ほれ、スピリ、飯だぞ〜」

(やったぁ!)

スピリが出てくる。


もぐもぐもぐ...


スピリは黙々と食べる。


「美味いか?」

「うん!すごい美味しい!」


いつの間にかスピリは飯を平らげていた。


「はぁ...美味しかったぁ...」

「そうかそうか」


その後、俺は風呂に入る。


この家は温泉並みの大浴場があり、それを1人で貸し切り状態なので凄い気持ちが良い。


俺は服を脱ぎ、浴場に入る。

(レイが先に入ってる的な、そういうラッキースケベは期待してません。断じて。絶対に。)


浴場には誰もいない。


そういえば、言うのを忘れていた(誰にだよ)けど、俺は新しい魔法をこっそり取得していたのだああああああ!


(えー!?なんだってー!?)

その魔法の名は。


「ジョ↑ウ↓カ(浄化)」


説明しよう。浄化とは、その名の通り自分の指定したものを浄化する魔法なのだ。


因みに俺の魔力量だと、自分の体を洗うのが精一杯です。



俺は、自分の体を浄化して湯船に入る。


「はふぅ〜」

やはり、どの世界でも風呂は気持ちが良い。


俺は体を温めて、浴場から出る。


寝巻きに着替え、脱衣場から出て、俺の部屋に向かう。


ボフッ


俺はベッドにダイブする。


ベッドの中に入ってる時間やっぱ幸せ。


(ねえねえ、ボクも入っていい?)

(おう、いいぞぉ)

(そ、そこは照れて断るところじゃないの!?)

(だって幼女じゃん)

(幼女って言うなぁ!!)

(んで、来るの?)

(い、行くよ!!)


俺のベッドにスピリが入ってくる。


2人でベッドに入ると、暖かくて気持ちいい。


「おやすみぃ」

「うん。おやすみ」


俺は、瞼を閉じた。

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