第8話

「それじゃあ、精霊の間に連れてってくれる?」

「うん、良いよ!」


スピリが空中に両手を翳すと、扉が現れた。


「さあ、行こう」

「おう」


俺とスピリは、扉の向こうへと進んだ。


扉の奥には、レイとアンダインさんが話をしながら待っていた。


「ただいま」

「おかえり。どうやら無事に精霊と契約できたようだな」

「うん、案外簡単だったよ」

レイが出迎えてくれた。


「レイったら、『今頃ケイは何してるんだろうか』、『契約は無事に終わっただろうか』、なんてケイさんの事を凄い心配していたんですよ?」

アンダインさんが、からかう様に言う。


「い、言うなと言っただろう!?」

レイが顔を真っ赤にして言った。


「レイ、ありがとな(笑)」

「な、なな、なんで笑うのだ?!」


レイがこほん、こほんと咳払いをする。


「それで、この子が君の契約した精霊か?なんだか、幼いように見えるが」

「そうだよ。幼女だもん」

「よ、幼女って言うなぁ!!!」

何か幼女が叫んでいるが、無視しよう。


「まあ、取り敢えずユグルドに戻ろうぜ」

俺が提案する。

「そうだな。アンダイン、お願い出来るか?」

「いつでも大丈夫ですよ」

レイの問にアンダインさんが答える。


「んじゃあ、俺は、幼zy...じゃなくてスピリ、お願い出来るか?」

「今、絶対にボクのこと幼女って言おうとしたよね!?」

「アーナンノコトダカサッパリダナー」

「も、もぅ!!」

「んで、お願い出来るか?」

「しょうがないなぁ...良いよ。じゃあ、ボクの手を握って、深呼吸、その後目を瞑って」

「りょーかい」

俺はスピリの手を握る。

「すーはー、すーはー、すーはー」

三回深呼吸する。

そして目を瞑る。


「いくよ?」

「おう」


スッと体が浮くような感じがした。


「着いたよ」

という、スピリの声が聞こえた。


目を開けると、ユグルドの街の風景が広がっていた。


そして、俺が右手で握っていたはずのスピリの手はなくなっていた。


「因みに精霊郷で経過した時間はユグルドで経過する時間の10万倍だからな、逆に言えばユグルドで経過した時間は精霊郷で経過した時間の10万分の1だ。つまり、ユグルドでは殆ど時間が経っていないぞ」


まじかよ。流石異世界、なんでもありだな。


「私はこのあと、クエストに向かわなければいけないから、何か買って先に帰ってくれ」


そう言ってレイは、俺に金貨を渡した。

「それじゃあ、また後でな」

「お、おう。頑張って!」


レイは行ってしまった。



ここで、硬貨のは説明をしようと思う

(`・ω・´)キリッ


この世界では基本的に12進法が用いられている。


硬貨も同じだ。

硬貨には、大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨の6種類がある。


そして、それぞれの貨幣の価値は、

銅貨12枚で大銅貨1枚


大銅貨12枚で銀貨1枚


銀貨12枚で大銀貨1枚


大銀貨12枚で金貨1枚


金貨12枚で大金貨1枚


という具合である。


つまり、大金貨1枚で、銅貨12の5乗枚

すなわち、248832枚分の価値がある。


恐ろしくややこしい。



「いらっしゃい、いらっしゃい、今ならイノシシ肉の串焼き1本銀貨1枚で安いよ!!」

そんな声が聞こえてきた。


屋台からは、お肉のいい匂いが漂ってきている。


ちょうど、お腹空いたし買おう。


そう思い、屋台の方へと足を運ぶ。


「いらっしゃい!」

頭に白い手ぬぐいを巻いたおっさんが言う。

「あ、あの、串焼き1本下さい」

「あいよ!!」


「ところで、あまり見かけない顔だね?」

おっさんが肉を焼きながら言う。

「この街に来たばっかりなので」

「冒険者とか目指して都会に来たって感じかい?」

「ま、まあ、そんな感じです」

「これから、色んな事があるだろうが、めげずに頑張れよ?」

「は、はい!」

「お代は銀貨1枚ね」

「はい」

俺は金貨を渡す。

「はいお釣り」

そう言って、おっさんが大銀貨11枚と銀貨11枚を渡してくる。

「おじさんからの応援の気持ちで、1本おまけでつけとくからね」

「ありがとうございます!」

俺は紙に包まれた2本の串焼きを受け取る。

「また来ますね」

「おう!」

そう言って屋台から離れる


屋台のこういう感じ結構好きである。


串焼きを1本取り出し、食べる。


イノシシ肉は臭みが全くなく、とても柔らかくて、噛む度に肉汁が口のいっぱいに広がる。

甘辛いタレともよく合いとても美味しい。


あっという間に1本食べてしまった。


(いいなぁ、ボクも食べたいなぁ...)

スピリの声が聞こえてくる。


「こっちの世界に来れたら食わせてやるぞ。まあ無理だろうけどな」


なんせ、精霊はこっちの世界に来る事が出来ないのである。

レイに教わった。


「来たよ」

スピリの声が聞こえる。

「またまた、ご冗談を」

「だから本当に来たんだってばぁ!!」

声のする方へ向くと、確かにスピリがいた。


「な、なんでいるんだよ?!」

「だって、来ればお肉食べれるんでしょ?」

「い、いや、だって精霊ってこっちの世界に来る事ができないんだろ?」

「ボクの場合は特別だからね、基本的に君がいる場所にはどこにでも行ける」

「そ、そうなんだ」

「ささ、そんな事より早くお肉ちょうだいよ!冷めて硬くなったら美味しくなくなっちゃう!」

「はいはい」

俺はスピリに、串焼きを渡す。

スピリは受け取り、早速食らいついた。


「どうだ?美味いか?」

「うん!美味しい!」


それは良かった。


口の周りにタレをたくさんつけながらも、串焼きに食らいつくスピリの姿は、本当に子供のようだった。


こうして、串焼きを食べた俺達は、レイの家へと向かったのだった。

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