第10話

翌日、俺とレイは馬車に乗り、ドラゴン討伐のクエストに向かう。


因みにレイが朝起こしに来る事を知っていたのか、スピリは俺が起きた時刻にはもう消えていた。


ドラゴンはゲミニー火山という場所に住み着いており、厄介なことに二匹いるらしい。


名を、ヒュドラという。ヒュドラは倒されたらすぐ、害のない子供の状態で復活する。しかし、成長すると火山活動が活発になり周囲の村に火砕流や火山灰などの被害を被るため、成長しきるまでに倒さなくてはならない。


そのため定期的に討伐隊を派遣しているが、今回討伐隊が他のモンスター討伐に向かっている為、急遽レイが討伐する事になったのである。


ヒュドラは一匹の強さはそこまでではない(と言っても俺にとっては十分過ぎるぐらい強いが…)が、[二匹がユグルドの世界に存在している]という条件下においては、全てのステータスが二倍になる。


「自分の身が危なくなったら、一人でも逃げるんだぞ」

レイが念を押すように言う。

「わかってるって」


俺はレイの強さを信じているからな(キリッ


(かっこいい感じにまとめてるけど、結局逃げてるだけじゃん)

スピリが呆れたように言う。


(う、うっせえ!)



馬車に乗っていて、さっきから思っている事があります‼︎


ケツが物凄く痛い。


ただでさえ、馬車の車輪は木で出来ているためお尻に振動が伝わるのに、それに加え舗装されていない悪路である。石とかがゴロゴロ転がってたり、道の所々がデコボコしている。

それはもう...俺のプリティでナイーブでもっちりとしたお尻に大ダメージです。


(ねえ、ケイ...今、ただでさえ少ない読者様が、完璧に離れていったよ...)


読者様?何を言っているんだコイツは?



更に進む。

樹木がだんだん少なくなってきたと思い、少し外に顔を覗かせてみると目の前に火山が見えてきた。


赤い土で出来ていて、草木が生えているような様子は伺えない。



「着きましたよ」

御者さんが言う。


俺たちは馬車を降りる。


「私はここで待っていますので、お気をつけて。健闘を祈っております」

「ああ、ありがとう」



「よしっ!」

俺は気を引き締める。

ここからは、戦場だ。命を落とす可能性が十分にある。


ここは火山だがレイの風属性魔法により、全く暑くない。

魔法って便利やなぁ。


俺たちは、火山にある道を進む。


レイが、突然歩みを止めた。

「どうした?」

「いや、ちょっと道が...」


俺がレイに足元を見ると今で続いていた道が途絶えていた。


「ちょっと待ってろ」

レイがそう言うと、魔法の詠唱を始めた。



土を司る精霊よ、我進むべき道を示し給え


詠唱を終えると同時に、レイの右手が光り始める。レイがその右手を翳すと目の前に石で造られた道が現れる。


すげぇ...

こういうのを見せられると魔法を使ってみたい衝動に駆られる。


「さあ、いくぞ」


俺たちは、更に上に進む。


登り始めて、1時間くらい経っただろうか...


日頃から鍛錬しているレイはすいすい登っていくが、体力のない俺にとてつもなく辛い。


「はぁ...はぁ...ちょっと、休憩していい?」

「そうだな、少し休憩しよう」



ちょうど小さな空間があった為、そこで休む。


「はぁ...疲れたぁ...」


ギュウウウウウ


レイがいる方向から音が聞こえた。


音が鳴っていたレイの方向を見ると、顔を真っ赤にしたレイがいた。


「ち、違うんだ‼︎これは、お腹が空いたとかではなくてだなっ!」

「へー、お腹が空いたんだぁ」

「ち、違う‼︎」


なんかイジるの楽しい。俺って案外ドSなのかな...


よし、続けよ。


「あー、なんか俺お腹が空いてきたなー(棒)」

「ほ、ホントか⁉︎」

レイが嬉しそうに言う。


「そういえば、カリンさんからお弁当貰ってたなー」

俺は見せびらかすように開ける。


中には、トマト、レタス、鶏肉が挟んでありとても美味しそうだ。


最初はあまりお腹の空いていなかった俺も、サンドイッチを見ると自然とお腹が空いてくる。


「いっただっきまーす!!」

さっぱりとした野菜に、肉の味が絡まってとても美味しい。


「美味しいぃいいい!!!」

敢えて、大きな声で言う。


レイが物凄く物欲しげな目で見てくる。


「レイも食べる?」

「い、いや、わ、私はお腹が空いている訳ではないからな、別にいらないぞ...」


そう言いつつも、レイの手は俺の持っているお弁当箱の方に伸びている。

言動と行動が矛盾してます。


俺がお弁当箱のフタを閉じると、いまにも泣きそうな顔をした。


「ごめんごめん、ほら、残りあげるよ」

「べ、別にお腹が空いてる訳では無いんだからな」


と言いつつも、サンドイッチを両手に取り貪っている。


「ゆっくり食えよ...」

と言ったにも関わらず、直ぐに平らげてしまった。



「よしっ!そろそろ出発しようか!」

腹が満たされたレイは元気に言った。


俺たちは荷物をまとめ、火山の中を進む。


「着いたぞ」


一時間ほど進んだだろうか。巣はドーム状で1km四方くらいの広さがある。


その中には二頭の大きなドラゴンがいた。


「さあ、いくぞ」


俺たちは、巨大な闘技場に足を踏み入れた。










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