総角 その三十六
「でもきっと何かわけがあるのでしょうよ」
などと話し合っている。
「それにしても薫の君はいつ見ても私たちなどは老いの皴ものびるような気持ちがしてつくづく見惚れていたいような器量や姿でいらっしゃるのに、どうして大君はあんなにひどく素っ気なくされるのでしょうね。これには何か世間でよく言う恐ろしい魔物でもついていらっしゃるのでしょうよ」
と歯の抜けたふがふがした口元でいかにも不愛想な言い方をする女がいる。また一方では、
「まあ、縁起でもない。どんな魔物がつくものですか。ただ世間の人ともほとんどお付き合いもなくお育ちですから、男女の関係についてもふさわしいとりなしを教えてさしあげるお方もいらっしゃいませんので、はにかんでいらっしゃるだけなのですよ。そううち男君とおなじみが深くなれば自然に情愛もお湧きになることでしょう」
などと話し合って、
「早くしっくり仲良くなさって申し分のない身の上になっていただきたいものですよ」
といいながらいぎたなく寝込んで臆面もなくみっともないいびきをかいているものもいるのだった。
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