総角 その三十二

 大君はそれを聞いてとても憎らしく不愉快に思い、うつ伏してしまった。


 中の君も姉君を見かねるほど気の毒な様子を思い、いつのように一緒に眠った。大君はもしや弁などが何かするかもしれないと気がかりでならないものの、わざとらしく閉じこもったり身を隠したりできるような物陰もない手狭な住まいなので、柔らかな美しい着物を中の君にそっとかけてあげ、まだ暑さの残っているころなので自分はそこから少し離れたほうへ寝返りして眠った。


 弁は大君の言ったことを薫の君に言う。



「いったいどういうわけでそんなに出家をお望みなのだろう、聖のようなお暮しをしていらっしゃった父宮のお側でお育ちになったのでこの世を無常のものと自然にお悟りになられたのだろうか」



 と薫の君は考えるにつけてもますます自分の心に似ているように思い、賢ぶったいやな女だという気もしない。



「それならもう今は物越しにもお逢いすなどはもってのほかとお考えなのだろう。せめて今夜だけでも寝所のあたりに忍び込めるようにこっそり計らっておくれ」



 と言うので、弁は気を遣って他の女房たちを早めに眠らせたりして事情を知っている女房たちだけで手筈を整えるのだった。

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