総角 その三十三

 夜が少し更けていく頃、風の音が荒々しく吹きつけ、立て付けの悪い蔀戸はきしきしと鳴っている。この音に紛れて薫の君が忍びやかに入れば大君はその気配に気づかないだろうと思い、弁はこっそり薫の君を寝所に案内する。姫君たちが一緒に寝ているのがちょっと気がかりだったが、これはいつものことなので今更今夜だけ別々に寝てくださいともどうして言えようか。それに薫の君は大君の姿をはっきり見ているはずなので、まさか姉妹を取り違えることもあるまいと弁は思う。


 大君はまんじりともせずにいるので、すぐ人の気配に気づきそっと起きだして素早く這うようにして隠れてしまった。中の君が無心にすやすやと眠っているのが本当に可哀そうで、女房たちはいったい中の君をどうするつもりなのかと胸もつぶれた。中の君と一緒に逃げ隠れたいと思っても今更引き返すわけのもいかず、わななき震えながら見ていると、灯火のほのかな光に袿姿の男がとても馴れ馴れしい態度で几帳の帷子を引き上げて中に入った。中の君がとても可愛そうで、どんな気持ちだろうと思いながら粗末な壁の前にたてかけてある屏風のうしろに窮屈に忍んでいるのだった。

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