総角 その二十七

 いったい姉君は何を考えているのかと中の君は情けなくて、



「父宮は姉上お一人にそのまま独身で一生終わりなさいとおっしゃったでしょうか。姉上より頼りない私へのご心配は姉上に対してよりずっと多かったことと思います。姉上の淋しい山住まいのお慰めにはこうして朝夕ご一緒に暮らすことよりほかにどんなすべがありましょう」



 となんとなく恨めしく思う様子だ。大君はもっともなことといじらしくて、



「女房たちの誰彼が私のことをあんまりひねくれものの変人のように思って何のかのと噂しているようなので、やはりついあれこれ悩んでしまうのです」



 と言いかけてやめた。


 日も暮れてゆくのに客の薫の君は帰らない。大君は本当に困っている。弁の君が来て薫の君の言葉を伝えてこれでは薫の君が恨むのも無理はないとくどくどと言うが、大君は返事もしないでほっと溜息をつくのだった。

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