総角 その二十五

 大君は女房たちのそんなたくらみは深くは知らないが、



「こんなふうに弁の君を特別扱いして目をかけて手なずけていらっしゃるところを見ると、ひょっとしたら薫の君のほうについてこちらに何か不都合なことを企むかもしれない。昔の物語を見ても、姫君の考えで進んでなびき、あれこれことが起こるということがあろうか、いつも女房が何かと手引きするからではないか。だから女房は気を許してはならないものらしい」



 と気づき、



「薫の君がどうしてもあきらめきれず深くお恨みになるようなら中の君をおすすめしよう。たとえ見劣りのする相手でもそうしていったん契りを交わされたからには薄情な態度を囮になれそうもないお人柄のようだ。まして中の君をちらとでもお見初めになればきっと気に召すに違いない。とはいってもあからさまにそんなことを申し出るとすぐ渡りに舟と喜んで乗り換える人があろうか。中の君ではお目当てと違うと渋っていらっしゃるというのは一方では妹に気を移したなら薄情だととられはしないかと他の人の思惑を気にして遠慮していらっしゃるのだろう」



 と考え、薫の君と中の君の結婚を計画するのを、中の君にはちらりとも知らせないのは罪作りなことになるだろうし、わが身につまされて中の君が可愛そうなので、あれこれと話すのだった。

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