総角 その二十一

 昨夜の名残で気分はひどく悪いので、中の君が寝ている奥のほうに入って一緒に休んだ。


 中の君はいつになく女房たちがひそひそ話をしているのがおかしいと思いながら寝ていたところへ大君がこうして来たのでうれしくて着物を大君にかけてやると、あたり一面に立ち上る強い移り香が薫の君以外の人とは紛れようもない。その香気が顔にけぶりかかるような気がするので、以前宿直の侍が同じ移り香を持てあましていたことと思い合わせて女房たちのひそひそ話に浮体のことがささやかれていたのはやはり本当なのだろうと姉君がいたわしくて、眠ったふりをして何も言わない。


 客の薫の君は弁の君を呼びだしてこまごまと今後のことを相談して、大君への挨拶は人目を憚ってわざと生真面目らしい伝言を言って帰っていったのだった。

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