総角 その五

「お気持ちに背くまいと思えばこそこんなに世間から怪しまれるような状態で親しくお付き合いしているのでございます。それをおわかりいただけなかったとすればそちらのお気持ちに浅いところもおありだったのだと思われます。確かにこんなうらぶれた田舎住まいをつづけておりますともののわかる人なら身の振り方などすべてのことについて考えつくしていらっしゃるのでしょうけれど、私は何事によらず思慮が遅れていまして今おっしゃったような男女の付き合いについては父宮もこんなときにはこうせよああいうときにはどうしろなどと何一つご遺言してくださいませんでした。それは将来もこれまで通りの暮らしを続けて世間並みの結婚などあきらめるようにというお考えだったのだろうと納得されますので、こうしたお話に何とお返事してよいやらわからないのでございます。けれども妹は私よりも年は若くてこんな山奥に埋もれされておくのは可哀そうだと思われまして、本当にこのままこんなところに朽ちさせてしまいたくない何とかしなくてはと一人で気を揉んでいました。いったい今後どういう御縁に定まっていきますことやら」



 とため息をついて思い悩んでいるらしい大君の様子は本当にいたわしい感じだった。

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