総角 その六

 こんな場合、若い姫君が大人ぶってどうしてそう利口そうにことを決めることができるだろう、無理もないことと薫の君は重い、例の老女の弁を呼び出して相談する。



「これまでの長い年月、ただ来世のことを八の宮に教えていただきたくて進んでこちらにお伺いしていたのですが、八の宮が何かお心弱くなられた晩年には姫君たちの身の上について私の思うようにお世話申し上げよとのご依頼があって、それを私もお約束したのです。それなのに八の宮のかねてご思案なさったあれこれのお考えとは違ってお二人の姫君の御気持がまったくもってどうしようもないほど頑固でいらっしゃるのはいったいどうしたことなのでしょう。何か八の宮には私がお伺いしたのとは別なお方にお心づもりがおありだったのかと疑わしくもなってきます。あなたも自然聞いておいででしょうが、私は妙な性分の人間で、これまで女に執着するような心はなかったのにこちらの姫君たちとこんなにまで始終親しくお付き合いさせていただくようになったのはこれも前世からの因縁なのでしょうか。世間でもようやく私たちのことが人の噂になってきたようですから、同じことなら亡き宮のご遺志にも違わず私も姫君も世間の夫婦のように打ち解けて愛し合いたいと思うのです。身分不相応な望みかもしれないけれど、そんな例がまったくないわけでもないでしょう」



 などと話し続けるのだった。

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