椎本 その三十三
大君は匂宮などを軽薄な世間並みな人のようには考えていない。何気なく走り書いた水茎の跡や言葉が風情にあふれ、優雅な匂宮の手紙の雰囲気をこれまで男の恋文などは多くも知らないままにこういうのこそ見事な手紙なのだろうと思う。
そうした品格と情味をかね備えた匂宮の手紙に返事を差し出したりするのも不似合いな身の上なのだから、いやなにただひたすらこういう山里に修行する行者のように暮らして行こうと考えるのだった。
薫の君への返事だけはあちらから生真面目な態度で手紙を寄越すので、こちらからもあまり素っ気なくはせず、手紙のやり取りをしている。
八の宮の御忌みが果ててからも薫の君は自身で見舞いに参上した。
姫君たちが東の廂の間の一段低い部屋に淋しい喪服姿でいると、薫の君はその側近くまで立ち寄って例の老女の弁を呼ぶのだった。
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