橋姫 その十七

 いかにも宇治の邸は聞きしに勝る寂しい感じで、住まいの様子などもほんの仮の草の庵で、気のせいかいかにもすべて簡素な暮らしぶりだ。


 同じ山里だと言ってもそれなりに好ましく、のどかなところもあるのに、この山荘はひどく荒々しい川音や波の響きに昼は心の憂さを忘れるときもなく、夜などは心安らかに夢を見ることもできそうにないほど風がすさまじく吹き荒れる。



「大方聖のようなご心境の八の宮にとってはこうした環境がかえって俗世の執着を断つよすがにもなるかもしれないが、姫君たちはどんなお気持ちで過ごしていらっしゃることか。こんな暮らしをしているのでは、世間の女のようにもの柔らかな女らしさなどには縁が遠いのではないのではないだろうか」



 と推量されるような住まいのありさまだ。


 仏間との間は襖だけで仕切られている部屋に姫君たちは住んでいるようだ。多情な男なら興味を抱いて色っぽく持ち掛けて近づき、姫君たちの心を惹いてみたくなりそうなところだ。さすがに薫の君でさえ、どんな人かと気持ちをそそられる様子だった。

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