竹河 その五十七

 数年たって、御息所はまた男の子を生んだ。院の側にたくさん仕えている妃にはこうしたおめでたが長年なかったのに、大君の並々でない冷泉院との縁の深さは何ということだろうと世間の人々は驚いている。


 冷泉院はましてこの上もなく珍しいとこの新しい若宮を可愛がり大切にする。もし在位のときであったらどんなに生まれ甲斐があったことだろう。今は何事も張り合いのない立場にいるから可哀そうにととても残念がっている。院はこれまで女一の宮をこの上なく可愛く思っていたのに、こうして二人もそれぞれお可愛らしい人が次々と生まれたので、あまりにも珍しくうれしく思い、御息所への寵愛もますます格別なものになった。


 弘徽殿の女御もこうまで度が過ぎた寵愛はあんまりだと嫉妬心を起こす。


 何か事あるごとに穏やかでない意地の悪い出来事が持ち上がったりして次第に二人の仲も疎ましくなっていくようだった。

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