竹河 その三十五

 四月九日に大君は冷泉院に輿入れした。


 夕霧の右大臣は車や前駆の人々を大勢遣わした。北の方雲居の雁も心中恨めしく思いながらもまたこれまでそう親しく姉妹付き合いもしていなかったのに、今回の蔵人の少将の件で何かと度々便りをしあっていたが、今になってふっつり絶えてしまうのも変なものなので、祝儀用の立派な女衣装などをたくさん贈った。



「どうしたことか、まるで魂の抜けたようになっている者の容体を看取るのに気をとられております間に、この度のお喜びを承っても降りませんでした。それにしてもお知らせくださらなかったのも随分よそよそしいお仕打ちですこと」



 と雲居の雁の手紙には書いてある。一見穏やかな文面ながら恨み言をそれとなくほのめかしているのを玉鬘の君は気の毒なと見ているのだった。

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