竹河 その二十六
蔵人の少将はわけはよくわからないまま面白くて、口出しもしたいところだが、くつろいでいる時に心ない振舞いは控えようと思い、そのまま立ち去った。その後もまたもう一度こんなよい折はないものかと物陰に隠れてはこっそり様子を窺い、うろうろしているのだった。
姫君たちはその後も花争いをしては明かし暮らしていたが、風が荒々しく吹いた夕暮方、桜の花が乱れ散っていくのが惜しくてならないので、負けた大君が、
桜ゆゑ風に心のさわぐかな
思ひぐまなき花と見る見る
と詠む。大君づきの女房の宰相の君が、
咲くと見てかつは散りぬる花なれば
負くるを深き恨みともせず
と声援すると、勝った中の君が、
風に散ことは背の常枝ながら
うつろふ花をただにしも見じ
と詠む。
それを聞いて、こちらの中の君の女房の大輔の君が、
心ありて池のみぎはに落つる花
あわとなりてもわが方に寄れ
と言う。
勝ち方は女童が庭に下りて、桜の木の下をあちこちして散った花びらをたくさん拾い集めてきた。
大空の風に散れども桜花
おのがものとぞかきつめて見る
と詠む。それを見て負け方のなれきというおんな童は、
桜花にほひあまたに散らさじと
おほふばかりの袖はありやは
「お心が狭そうに見えますわ」
などとけなすのだった。
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