紅梅

紅梅 その一

 そのころ、按察使の大納言と言われていた人は、前太政大臣の次男だった。若くして亡くなった柏木のすぐ下の弟君だった。子供のころから利発で明るく派手な気性だったが、官位の昇進につれて、年月とともにますます権勢も人望も見について、生きがいのある結構な暮らしぶりだ。帝にも並々ならず信任されていた。


 北の方は二人いたが、前からの人は亡くなり、今いる人は黒ひげの太政大臣の長女で、あの住み慣れた邸の真木柱に別れて家を出ていくのを立ち去りがたく悲しんだ姫君だった。祖父の式部卿の宮のもとで、蛍兵部卿の宮と結婚したが、その兵部卿の宮は亡くなってしまった。


 そのあとにこの按察使の大納言が人目を忍んで通った。そのうち年月も経ち、そういつまでも世間に気兼ねばかりもしていられないので、北の方になったのだった。

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