匂宮 その二十一

 そっと几帳の陰から覗いている女房たちも、



「〈春の夜の闇はあやなし〉とか言うように、本当にこんな暗さでははっきり見えなくて気が揉めるけれど、やっぱり薫中将のいい香りだけはまぎれようもなくわかりますわね」



 と皆で褒め合っているのだった。


 夕霧の右大臣もいかにも素晴らしい人だと感じている。薫中将の容姿や態度がいつもにもまして立派に見え、威儀を正してとりすましているのを見て、



「右の中将も一緒にお歌いなさい。そんなに客ぶらずにどうですか」



 と言うので、宴会の興をそがない程度に、薫中将は、


〈立つや八乙女 神のますこの御社に〉


 などと歌うのだった。

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