匂宮 その十六
匂宮が年とともに心をくだして執心らしい冷泉院の姫宮とは薫中将は同じ冷泉院の御殿の中に明け暮れ暮らしているので、この姫宮のことを窺い、何かにつけて様子を見聞きするのだが、なるほど噂に違えず人並み優れて奥ゆかしく深みのある態度がこの上なくすぐれた人のようだ。同じことなら本当にこんな人と結婚したら生涯心楽しく暮らしていく頼りになるだろうとは思う。ところが冷泉院はたいていのことは分け隔てなく過ごしているのに、ただ姫宮の身辺からはこの上なく遠ざけるように躾けている。
薫中将はそれを当然ともわずらわしいとも思い、強いて姫宮に近づこうとは思わない。もし自分の意志に反して姫宮を恋する心などが生じた場合、自分も姫宮もとても困ったことになるだろうとよく自覚していて、馴れ馴れしく近づくこともないのだった。
自分がこんなふうに女に好かれるように生まれついた人なので、ほんのちょっとした軽い誘いの言葉を冗談半分にかけられた女も相手はたいした抵抗もなくすぐそれに応じてなびいてしまうので、どうしても本気でもない情人関係が多くなってきているのだった。
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