御法 その十三
この三の宮と女一の宮はとりわけ手塩にかけて育てたので、二人の成人を見届けないまま死んでしまうことを紫の上は名残惜しくも悲しくも思うのだった。
ようやく待っていた秋が訪れ、病床の周りもいくらか涼しくなってきたので、紫の上の気分も少しはさわやかになったようだが、やはりどうかするとすぐまた容態は後戻りする。それでもまだ〈身にしむばかり〉と古歌に詠まれたほどのしみじみとした冷たい秋風でもないのだが、紫の上はとかく露に濡れたように涙で袖も湿りがちな日々を送っている。
明石の中宮が宮中に帰ろうとするのを紫の上は、
「もうしばらくはいらして私の様子を見ていてください」
と引き留めたい気持ちなのだが、それも出すぎているように思えて帝からの使いがひっきりなしに催促に来るので、気兼ねしてそうも願いしかねているのだった。
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